ダニー・ハサウェイ'73年の作品にして最後のオリジナル・アルバムでもある『Extension Of A Man』(上ジャケット)は、ソウル史に残る名盤として知られる一枚だ。 だが、僕がアルバムの1曲目にあたる「I Love The Lord; He Heard My Cry, Pts. 1 & 2」を初めて聴いた時には 「…………何コレ?」 と思ってしまった。 45人編成のオーケストラによる、クラシックそのものといっていい演奏(しかもインスト)が延々と続くのだ。 おいおい、これのどこがソウルの名盤やねん、と。
しかし、二曲目の「Someday We'll All Be Free」へとつながる瞬間のスリルを体感した時、なんとなく納得してしまった。
だが、これほど素晴らしい作品を作りながらも、ダニーは以降、創作活動をストップしてしまう。これはソウル史における大きな損失だった。 その五年後にあたる'78年、ふたたびロバータ・フラックとデュエットした「The Closer I Get To You(愛は面影の中に)」が全米2位のヒットを記録する。 ようやくアーティストとして復帰したと思われたダニーだったが、なんとその矢先となる'79年1月、彼はニューヨークで飛び降り自殺してしまう。33年という短い生涯だった。 音楽的行き詰まりか、プライベートの悩みか。晩年の彼は、いつ自殺してもおかしくない状態に見えたという。