東方見雲録

東方見雲録

2026.06.27
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カテゴリ: 政経



政府がフィジカルAI分野への巨額投資を決めた。複数の報道によると、2040年度までに10.5兆円を投じる方針だという。半導体で敗れ、家電で敗れ、スマートフォンで敗れた日本は再び、世界で勝てるのか。日本工業大学大学院技術経営研究科の田中道昭教授は「日本がデジタル敗戦から覇権国へと舵を切る、決定的な瞬間だ。フィジカルAIこそ、日本が世界の中心に戻れる最後のチャンスだ」という――。
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6月19日、政府がフィジカルAI分野に対し、2040年度までに10.5兆円を投じる方針を固めたというニュースが駆け巡った。日本経済新聞によると、成長戦略17分野のなかでも「目玉事業」として、米中に並ぶ第3極、世界シェア3割超、20兆円の市場獲得を目標に掲げた。

その前日の6月18日、日経平均株価は終値で初の7万円台に到達していた(7万1053円、前日比+1151円)。日経新聞が「日本版M7」と呼んだ、時価総額増加幅の半分超を占める7社――キオクシアHD、ソフトバンクグループ、東京エレクトロン、村田製作所、アドバンテスト、日立製作所、信越化学工業――が市場を牽引していた。

2日間で、市場と国家が同時に動いた。日本がデジタル敗戦から「フィジカル覇権」へと舵を切る、決定的な瞬間である。

ただし、ここで立ち止まる必要がある。「日本版M7」は祝祭でもあれば、警鐘でもある。時価総額増加幅の半分超が7社に集中する構造は、市場の偏りでもある。海外投資家は日本株を「安全な避難所」と評価する一方、「上昇続き割高感」も指摘している。だからこそ、この7社の先に来るものを読み解く必要がある。
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市場はすでに気づいている。フィジカルAI時代の真の主役は、「身体」を作る企業ではなく、その土壌を提供する「大地」と、現場を統合する「OS」を握る企業であることを。

キオクシア1社で、東証プライム3月期企業の増益幅(7兆円超)の6割を生み出す見通しだ。村田製作所は1日で18.3%上昇、上場来高値を更新した。これは投機ではない。産業構造の地殻変動を、市場が織り込み始めた動きである。


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市場が「大地」と「OS」を買っているなか、政府が10.5兆円を投じるのは、どの層か。

答えは明確だ。「身体」層である。

政府方針の政策パッケージを読み解くと、その意図が浮かび上がる。「多用途ロボットOEM(相手先ブランド名製造)の育成推進」「重要コンポーネント(アクチュエーター、モーター、減速機、蓄電池等)の設計・製造能力強化」――いずれも本書の「身体」層の核心への投資だ。

構造はこうだ。市場が「大地」と「OS」を買い、政府が「身体」層と「OS-身体結合」に資金を流し込む。市場と政策が、層ごとに分担して日本の産業地図を完成させようとしている。

これは偶然ではない。2040年に60兆円規模となるAIロボット世界市場で、最終的に価値を生み出すのは「身体」層である。「大地」と「OS」がいくら充実しても、「身体」が現実世界で動かなければ、フィジカルAIは絵に描いた餅で終わる。
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本書で論じた通り、「身体」層は4つの機能に分解される。「動かす(筋肉)」を担うファナックや安川電機。「見る(五感)」を担うキーエンス。「精密化する(関節)」を担う精密制御企業群。そして「人につなげる(身体の拡張・人機融合)」を担う医療・サイボーグ企業群。日本にはこの4機能すべてに世界トップクラスの企業がいる。
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政府方針には書かれていないが、日本の勝ち筋に決定的な領域がある。

政府の10.5兆円は、製造、物流、建設、介護、医療――「人手不足が深刻な分野の現場工程をAIとロボットで代替する」ことに主眼を置いている。これは正しい。しかし、フィジカルAIの真の到達点は、これらの先にある。



フィジカルAIは、最終的に「身体の外で動くロボット」から、「身体に組み込まれるテクノロジー」へと進化する。装着型サイボーグ、ロボット支援医療、再生医療と精密制御の融合、神経接続インターフェース、身体機能の補完・拡張――この領域こそ、日本が持つ精密制御技術、医療技術、安全性確保のノウハウが、すべて同時に活きる戦場である。
引用サイト: こちら





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Last updated  2026.06.27 08:00:06
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