昨日(日本時間5日)、イチローが試合前の打撃練習を終え、ライトの守備に就いて球拾いをしているとき、右翼席のファンから声をかけられていた。
いや、正確にはやじか?
そのファンはWBC(ワールドベースボールクラシック)のイチローのユニホームを着ており、熱狂的ファンかと思われたものの、一塁のベンチ前から見る限り、イチローはそのファンに「あっちに行け」と言っているようにも見えた。
やがてそのファンは自主的に消えたが、そのファンに象徴されるように、最近のオークランドのファンはおとなしくなったように思う。
依然だったら、イチローへのやじをエスカレートさせたのではないか。
客席から聞こえるやじも、かつてほど下品ではない。子供の「Let's go Oakland!」という健気(けなげ)な声が実に良く響く。
確か、2001年にイチローがデビューした年には、イチローに対して、物が飛んできたことがあったと記憶する。
それにはチームメートだったジェイ・ビューナーが、「おれたちのころは、よくお金が飛んできたよ。(センターの)ケン・グリフィーとどれだけ集まったかを競ったものだよ」と、答えていた。
ファンのやじが原因で、相手ブルペンの投手がスタンドのファンと乱闘騒ぎになったのも、そんなに昔のことではない。
ただ、そんなガラの悪さも今や鳴りを潜め、どこか違う球場にいるようでもある。
イチローはこの日も3安打。外野の一角には日本のファンが陣取ったが、ヒットの度に聞こえた拍手は、一部のものではない。8回、ケン・グリフィーが代打で出場したときも、大歓声が沸き起こった。
やはり、違う球場にいるようだった。
この日、ネット裏には桑田真澄の姿。イチローや城島健司のプレーを見ることに加え、大リーグの球場がどんな雰囲気なのかを勉強しにきたという。
彼にはオークランドのファンがどう映ったか。気になる部分である。
また雑談が過ぎたが、昨日の言葉通り、イチローは「一気に」マイルストーンを引き寄せた。
大リーグ通算2000本にはあと1本。最終回の猛攻が実を結んで同点となり、延長で打席に入れば、もう1本出そうな雰囲気だった。
復帰してからは、5試合で22打数10安打。
5試合で10本は、1試合平均2安打ペース。相手にしてみれば、これが故障明けの選手か、というところだが、気にならない部分がないわけではない。
復帰後、ライトへのヒットが1本しかないのだ。痛めたのは軸足。影響は想像しかねるが、強く引っ張る打撃には、無意識のうちに体が制御をかけているのか。
その割には左方向に強い打球が出ているので、杞憂(きゆう)に過ぎないのかもしれないが、ライトへのライナー性の打球が少ない。打撃練習ではもちろん、右翼席に相変わらず滞空時間の長い、美しいアーチをかけているものの、まだ何かが彼を縛りつけているのかもしれない。
さて、あと1本に迫ったものの、依然、イチローの2000安打に対する態度はつれない。今日もリーチをかけたことについて聞かれたが、答えは、「知ってるよ」とそのままだった。
ただ、それはなぜか? との問いにはこう答えている。
「僕、色んなことをクリアしてきているので、そのたびに二十歳の時みたいにナーバスになることもあるわけがないし、かといって、ないわけじゃないし。そうやってバランスを保つすべをいろんなことから経験、取得するわけですからね」
意訳を試みれば、記録を目前にしたときのプレーの仕方を知っている、か。プレッシャーとの付き合い方、ファンの期待、増えるメディアの視線の交わし方……。
2000安打はそもそも、日米通算ではすでに通過した場所。彼にとっては、特別なマイルストーンでもないのかもしれない。
明日の達成は、ほぼ間違いないだろう。
6安打で、200安打到達。この数字に関しては、ハードルが高いが、可能性としてゼロではない。
イチローはこれまで、1試合6安打はないが、1試合5安打を7度マークしている。2004年が4度で、2006年からは3年連続で各1回ずつ。今年はまだ5安打がないが、今日の流れを見ていれば、そろそろ出ても、何ら不思議ではない。
イチローの昨日の言葉通り、一気に決める?
イチローは昨日、高めのボール球を打ってヒットにしたとき、「(バットに)届くなら、ヒットの可能性は十分ある」とも口にした。それに倣うなら、
「打席が回れば、可能性は十分にある」
ちなみに、今季、6打席以上立った試合は5度である。
ひとまず、日本時間であす7日の朝9時ごろまでには、一つの結果が出ているかもしれない。
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