このところブラウザ関連の話題から目が離せない。前回紹介した次期Google Chromeものその1つだが、実はそれを上回る興味対象が出てきた。次期Internet Exploreである「IE9」だ。マイクロソフトでは、米国時間5月5日、開発者向けに最新のIE9プラットフォームプレビュー版(以下、IE9プレ ビュー版)を公開した。このIE9プレビュー版、「進む」「戻る」ボタン、お気に入り機能、フィッシング対策機能がないなど、正規版からはほど遠いのだ が、使ってみるとIE9が目指すブラウザの像が見えてくる。
なんだIEか……。なんて、頭ごなしに否定しないでほしい。FirefoxやGoogle Chrome、Safari、Opera、Lunascape。さまざまな新興ブラウザが登場しているが、いまだにIEのシェアはダントツだ。もちろん以 前に比べると、減少傾向にあるのだが、それでも7割近くを占めている。今後のブラウザ動向を考える意味でも、やはりIE動向は押さえておかなければならな いのだ。
IE9と聞いて、一番気になる点はブラウザとしての“快適さ”ではないだろうか。Windows 7標準のIE8によってだいぶ改善されたが、新興ブラウザがIE8を上回る速度でどんどん速くなっているので、IE8を高速ブラウザと呼ぶことははばかれ る。マイクロソフトでも、この点について十分承知しているようで、IE9では大幅なパフォーマンスアップが図られている。
では、IE8に対してどのくらい快適になったのか? 現行版のIE8や最速ブラウザのGoogle Chromeと比較しながら、IE9のプレビュー版を実力を探ってみたい。
まずは、最も気になる快適さを、Javascriptのベンチテスト「SunSpider 0.9.1」を使って計測してみる。注目したいのは、IE9から導入される新しいJavascriptエンジン「Chakra」だ。速度アップを目指して 開発されたとあって、テスト前から期待は高まるところ。なお、今回のテストは、Windows 7マシン(Let's note S8、2009年冬モデル)を使った。主な仕様は、CPUがCore 2 Duo P8800(2.66GHz)、メモリー4GB、SSD160GB、OSは64ビット版のWindows 7 Professionalとなる。これまでブラウザテストでは、XPマシン(Let's note T7)を使ってきたが、IE9はXPで動かない(非サポート)ため、テスト環境を変更している。
まずは、現行版IE8との比較から見ていこう。Javascriptのベンチテストを3回ずつ行い、平均値を算出した結果を下記のグラフに示した。 IE8が平均7613.1msなのに対し、IE9のプレビュー版はなんと平均808.7ms。実に6804.4msも速く、ベンチテストをこなしている。
IE8が登場した時に同様のテストをしたが、この時はIE7→IE8で約4倍も高速化した。今回をテスト結果を見る限り、IE8→IE9でも同じよう に、大幅なパフォーマンスアップが見込めるだろう。しかも、まだプレビュー版なので、正規版ではさらなる速度アップを期待できる。
もう1つの注目。Google Chromeと比較するとどうか? 同条件で、前回紹介した次期Google Chrome v5をテスト。IE9プレビュー版との差を調べている。結果は残念ながら、倍以上の差がついた。前向きに考えるなら、両者の差はかなり縮まったと言える。 何しろ458.2msの差しかないのだ。もちろんブラウザの快適さは、Javascriptの処理能力だけでは語れないが、ネックになっていた部分が改善 されたことで、ブラウザとしてのパフォーマンスは確実に上がりそうだ。
ベータ版が公開されている「Google Chrome v5」とIE9プレビュー版との比較がこちら。最速を誇るGoogle Chromeには及ばなかったが、これまでの状況と比較すると、かなり近づいていると言える
「向上したパフォーマンスは体感できるレベルなのか?」という疑問にも答えたい。IE8と比較しながら、何度もトレンディネットのページを読み込ませて みたが、体感速度はIE8とほぼ同じだった。一般的なWebページを見るくらいなら大差はないようだ。
両者の差を体感したいなら、IE9プレビュー版公式サイトにある、各種デモを試してみるといい。(仕様の問題もあるかもしれないが)IE8で試すと全く 動かない、あるいは極端に動作が遅いデモがIE9だとスムーズに動く。なるほど、これが新Javascriptエンジンの実力なのか! と実感するはずだ。
蛇足になるが、IE9プレビュー版で任意のWebサイトを見るにコツを紹介しておきたい。なにしろこのバージョンでは、お気に入りも、アドレス欄もな い。このため、サイトを見るのは「Page」メニューから「Open」を実行。現れたウインドーに直接URLアドレスを入力する……という手順を踏まない と、任意のWebサイトが開けない。この記事を読んでIE9プレビュー版を導入した方は、上記の手順で普段見ているWebサイトへアクセスしてみよう。

現れたウインドーにURLを直接入力する
IE9で注目したいのは、Javascriptの処理速度だけではない。Webの標準規格「HTML5」や「DOM」、「CSS3」のサポートだ。この ところ新興ブラウザ勢は、HTML5への対応に積極的な姿勢を見せているが、IE9でようやくマイクロソフトも本腰を入れるようだ。
Webの標準規格への対応。注目する理由は、どんなブラウザでも、同じHTMLやスクリプトが使えるようになるからにほかならない。このところWebの 流れは、クラウドを筆頭にした高度なWebアプリへ向かっている。従来は情報を探すことが中心だったWebが、いつの間にかメールやファイルなどをやり取 りできるWebアプリへと、その役割を変えてきた。今後、IE9がHTML5などに準拠することで、ブラウザの仕様にとらわれることなく開発がしやすくな る。結果、ユーザーとしても恩恵が受けられるのだ。
IE9のプレビュー版をテストしてみて、将来のブラウザ-やWebサイトの姿が垣間見られた気がする。クラウド型サービスとして広く利用されるように なった「Gmail」のように、ごく自然の流れとしてリッチなWebアプリやサイトが登場してくるはずだ。この流れを促進する上で、次期IE9が果たす役 割は大きい。
原 如宏(はら ゆきひろ)
パソコンから食べ物まで、ジャンルにこだわらず手がけるライター界のなんでも屋。メインの移動手段は“徒歩”というエコ生活を実践中。
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