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2009.10.05
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カテゴリ: びしびし本格推理
島田荘司のノンシリーズ中編を読んだ。

○ストーリー
15才の少年が誘拐された。犯人の指示は母親が身代金受け渡しに出向くことだった。彼女は犯人からの無線の指示に従い,新宿駅から山手線で東京を一周し,さらにある駅からタクシーに乗る。だが彼女も犯人も,警察が敷いた包囲網からこつぜんと消えてしまった。果たして犯人が用いたトリックとは?そして事件の背後に潜む謎は?

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「帝都衛星軌道(前編)」「ジャングルの虫たち」「帝都衛星軌道(後編)」で構成された中編集というイメージの作品だ。島田荘司は「御手洗潔シリーズ」と「吉敷刑事シリーズ」の2つを持っているが,どちらにも属さないという近年では珍しい作品となっている。

「帝都(前編)」で誘拐事件が発生し,大きな謎を残したまま事件は迷宮入りする。「ジャングルの虫たち」は驚くほど多くのサギのテクニックを紹介しながら,サギ師の転落を語る。そして「帝都(後編)」にて誘拐事件の裏に隠れた事情,そしてトリックが語られ,ようやく読者の前に全てが明らかになる。

「帝都衛星軌道」と「ジャングルの虫たち」の間には,物語としては一切の関連は無い。ひょっとして1人くらい登場人物が重なるかと思ったが,そういうことはなかったようだ。大都会にひっそりと生きる人々の悲哀とでもいうものが共通しているのだと思う。

島田荘司が言っているほど,この2つの中編がしっくりとマッチしているとは思えないが,中編ゆえのスケールの中途半端さを足し合わせることで補い合っているし,また「帝都衛星軌道」の謎解きをワンクッションおいてじらされることで,期待感が増幅する,という効果はあるように感じた。

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だが「(前編)」も中盤から語り手が代わり,それ以降は警察は登場しない。また物語ある展開を考えると,この作品の主人公に吉敷竹史を務めさせるのは難しいことが分かってきた。

だがかつての「吉敷刑事シリーズ」よりはるかに現代的なツールを利用した警察官たちのことを,島田荘司は巧みに描写していた。これができるならば,現代版「吉敷シリーズ」,つまり「吉敷警部シリーズ」だって書けるだろうに。

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「ジャングルの虫たち」は,救いの無い作品でありながら,サギ師のテクニックを惜しげもなく次々と披露する。こんなに具体的に書いていいのだろうか?とさえ思うほどだ。

作品としてはオチが無いのだが,密度は高かった「ジャングルの虫たち」に続いて,「帝都(後編)」が始まると,ある過去の事件が語られ,島田荘司ファンとしては,「またこのネタか」と思ってしまう。ここまで密度の差のある作品を並べてみせるのは,ほとんど自虐的とさ感じてしまう。

「帝都衛星軌道」の登場人物全てが,妙に枯れていて,達観していて不自然さばかりを感じてしまった。こんな人々が生まれてしまうのならば,過去をほじくり返さなくてもいいのではないか?そんな逆説的なことさえも思ってしまった。

作品の最後の最後に,タイトルを説明するためだけのように,ある情報が延々と語られる。この展開もなにやら唐突で驚いてしまった。

いろんな部分,いろんなレベルで意外性だらけの作品だった。








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Last updated  2009.10.06 23:37:55
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