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2017.09.04
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カテゴリ: びしびし本格推理
東野圭吾のメタ・ミステリー連作短編集を読んだ。

○ストーリー

離島・凸凹島では,長いこと対立していた旧家が結ばれるための祝言が予定され,親族や島民たちが帰り,お祭り状態になっていた。そんな中,口に饅頭を詰められた死体が発見される。これは島の童謡になぞらえた〈見立て殺人〉だった。〈名探偵〉天下一と〈警部〉大河原の捜査をあざ笑うように,連続殺人が始まる。

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〈名探偵〉の天下一と〈警部〉の大河原のコンビが繰り広げる連作ミステリーだ。

通常のミステリーと異なるのは,彼らが自分たちがミステリー作品の登場人物であることを自覚しており,時々〈作者〉のことを心配しながら,ミステリー作品のお約束事を守りつつストーリーを進めるというところだ。

「また密室殺人かよ」といったセリフを,ミステリーの登場人物が語ってしまうのだからかなり画期的だ。学生の同人作品ではなくプロの作家がこれを雑誌に発表し,好評だったのでシリーズ化がされ,そして単行本まで刊行されてしまったから驚きだ。

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語り手の大河原〈警部〉は,さまざまな事件に次々と遭遇するが,なぜかその都度天下一〈名探偵〉もそれに首を突っ込んでくる。〈警部〉は的外れな捜査と推理を続け,事件は進み,そして〈名探偵〉が真相を暴く。



さらに天下一〈名探偵〉も,時々やる気をなくすので,大河原は彼にカツを入れるのも仕事だ。

勘違い〈名探偵〉に周りの人が振り回される,という作品は読んだことがあったが,〈名探偵〉も〈警部〉も〈作者〉の与えられた役回りを〈読者〉のために演じ続ける,というパターンは初めてだった。まさにメタフィクションだ。

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密室モノ,ダイイングメッセージ,時刻表トリック,見立て殺人,と次々とミステリーのお約束事の必然性に容赦なく斬り込んでいくので,ハラハラした。

連作短編集1冊であれば楽しめたのだけれど,続編もあるという。そちらはよほど工夫がないとキビシイのではないかな?

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各編について簡単に感想を述べる。

「プロローグ」・・・〈警部〉大河原のつらい役回りが語られる。

「密室宣言-トリックの王様」:雪深い奈落村の閉ざされた家で死体は見つかった。さらに家の周りの雪には足跡が無かったという。不可能殺人に挑むのは〈名探偵〉天下一だ。・・・最初から飛ばしてくれる。ミステリーと言えば密室モノという認識もあるくらいだけれど,それを痛烈に批判。森博嗣も似たようなこと書いていたなあ。

「意外な犯人-フーダニット」:資産家の画家・牛神貞治が殺害された。5人の容疑者の中から〈名探偵〉が真犯人としたのは?・・・〈名探偵〉がわざわざ意外な犯人を捜す,というのには笑ってしまった。

「屋敷を孤立させる理由-閉ざされた空間」:資産家・矢加田の屋敷でパーティーが開催された。彼に親しいものは屋敷に残り,さらに飲み続ける。手洗いのために中座したものが戻らず,彼は屋敷の裏の山頂で死体となって発見された。この不可能殺人の真相は?・・・孤立した山荘モノで,例によってそれへの批判も語られるのだが,短編が違う方向に行っている?



「アリバイ宣言-時刻表トリック」:容疑者・蟻場には完璧なアリバイがあった。天下一は鉄壁の守りを強力なロジックで打ち砕く。・・・ロジックじゃないか。時刻表ミステリーが人気なのは,ミステリー読者と鉄道ファンの層が重なるからだと思うけどなあ。

「『花のOL湯けむり温泉殺人事件』論-二時間ドラマ」:〈女子大生探偵〉天下一と〈警部〉大河原のコンビは,旅行先の旅館で殺人事件に遭遇する。・・・いきなり女子大生になってしまった天下一が,2時間サスペンスドラマのお約束事に苦労しながら短編を進める。今ではほとんどの作品が映像化されている人気作家も,この頃は〈2サス〉にアンビバレントな気持ちを抱いていたとは。

「切断の理由-バラバラ殺人」:登山者が山中で女性の死体を発見した。容疑者は絞り込めたのだが,彼が死体をバラバラに切断した理由は?・・・バラバラ殺人の理由がきちんと語られて感心したら,やはりあの伏線が襲ってきた。上手い!

「トリックの正体-???」:資産家の遺産相続を議論するために別荘に集められた一族と新たに現れた隠し子。その最中に隠し子が銃殺されるのだが,逃げた犯人は別荘の中で消えてしまう。・・・パロディにもなっていない脱力系だ。

「殺すなら今-童謡殺人」:離れ小島で起きた連続殺人事件は,島の童謡に沿って起きていた。〈名探偵〉天下一は最後に真犯人を止めたのだが?・・・僕も大好きな〈見立て殺人〉系作品のパロディだ。最後まで犯人を捕まえない〈名探偵〉など突っ込みもエグいが,ラストが良い。



「禁句-首なし死体」:タワーの展望台で首なし死体が発見される。だがタワーに上ったのは彼だけだった。・・・一見パロディのようだが,この手の謎解きって,メフィスト賞の作家には多い気がする。

「凶器の話-殺人手段」:資産家・町田の死体が建物の中庭で発見される。死体には3つの刺し傷があったが,凶器は発見されなかった。〈名探偵〉天下一が見抜いた真相とは?・・・謎解きの後の真相の方が気になる。そんなのあるんだろうか?

「エピローグ」:真犯人は?・・・これは以外だった。

「最後の選択-名探偵のその後」:別荘に集められたのは10人の〈名探偵〉だった。だが彼らは1人,また1人と命を落とす。最後に残ったのは?・・・〈名探偵〉の設定も面白かったが,短編も徐々に緊張感を見せてくれた。とは言え,なんだか疲れた。











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Last updated  2017.09.05 08:09:20
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