きっとどこかの物語

2007.11.22
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死を恐れるその者の結末


ひとつ命の終わりがありました。
それははかなく優しいものでした。

ただ生きていたとき、とても死ぬのが怖かった者がいました。
それはとても想像におよばないほどの恐怖で
その者は、そのほんの一瞬やってくる終末に、ただぶるぶると震えていました。
怖かったのです。
とても、怖かったのです。

だからその者は気付きました。

世界中どこかでこの恐怖に耐えようとしている者がどれだけいるか。
今この瞬間この刻に。
悲しく終わりを迎えようとしている者がどこかにいる。

だからその者は思ったのです。

今この瞬間この刻に

救わなければならない者がいる。

死の恐怖を知っていたからこそ
それ以上に悲しい終わりなどしてほしくないと。
あの者は世界中を回り、色々な人々の死を見取り
生きたいものには、必死で生命の延長の手を探ります。
あの者は、悲しいものを、どれほど救ったのでしょう。


いつでも世界をまわっていたから、彼の親類など、誰一人いません。
誰にも見取られず、それはとても悲しい死でした。

その者が灰になる日、
誰も葬儀をしないその者のもとに花束が届きました。
その花はまた一束、また一束と増えていきます。

一度しか言わなかったその言葉を
一度しか会わなかった者が覚えていたのでしょう。
1箱、2箱、3箱と、全て送りもとの違うところからみかん箱が届きました。
手紙もたくさん届きました。
その者が静かに眠っている部屋は、手紙に埋め尽くされました。
もう入らないほどの手紙とプレゼントが部屋に届いた頃
外から声がしました。
「ありがとう」
言う声は泣いていました。
そしてまた違う声が
「ありがとう」
泣き崩れ嗚咽を漏らす声が
誰かが大声で感謝を表しました。
そしてその声はだんだんと広まり
窓の外からも聞こえました。
いつでも世界を回っていた者は
いつでも世界を回っていたから親類はできませんでした。
しかし
いつでも世界を回っているその者を
いつでも世界を回って探し続けていた者たちがいたのでした。

あの者が灰になる日
ただの黒の小さい車で送られたとき
数え切れない手が、あの者を見送りました。

あの者は
とても、幸せでした。









めも→61.247.ほしほし。


■お知らせ■


ほんの一度の書き込みですが、荒らしを彷彿させるものがあったので、
日記へのコメント書き込みを制限させていただきました。
しばらく様子を見てから復帰させたいと思っています。
掲示板への方は、少々制限がかかっていますが、それ以外は書き込みいただけます。

もともと停滞したり復活したりしているサイトですが、
今後ともどうぞよろしくおねがいします。





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Last updated  2007.12.05 21:08:10


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