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2026.02.03
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カテゴリ: 発達障がい

発達障害当事者である漫画家・春野あめによる、『発達障害が理解されにくいワケを自分で考えてみた』は、「なぜこの人はこんな言動をしてしまうのか」「どうして周囲とこんなに噛み合わないのか」という違和感を、当事者本人の視点から徹底的に言語化していくコミックエッセイです。 バンブーエッセイセレクションとして刊行され、NHK「あさイチ」にも出演した臨床心理士・中島美鈴による監修とコラムが加わることで、「あるある」の失敗談に専門的な解説と対処のヒントが接続されているのが大きな特徴です。

本書の核にあるのは、「人間関係のつまずきは、当事者の『性格の悪さ』や『努力不足』ではなく、特性と環境のミスマッチから生じている」という視点です。 著者自身、「空気が読めない」「相手の意図がわからない」「つい余計な一言を言ってしまう」といった経験を、ただの反省や自己嫌悪として消費するのではなく、「なぜ自分はこう感じ、こう考え、こう行動したのか」を一つひとつ分析していきます。 この「自己分析」をコミカルな漫画形式で見せていく構成のため、読者は「失敗の再現 → その時の頭の中 → 特性とのつながり → 対策」という流れを、物語として追いかけるような感覚で読んでいけます。

構成面では、過去の人間関係トラブルをテーマごとに「CASE」として整理し、それぞれを「ASD傾向の特性」「ADHD傾向の特性」「ADHD+ASD傾向の特性」「二次障害の影響」「認知の歪みの影響」などに分類している点が非常にわかりやすいです。 たとえば、CASE01「話の意図を汲み取れない」やCASE02「失言する」はASD傾向の特性と結びつけて解説され、CASE03「後先考えない行動をとる」はADHD+ASD傾向、CASE04「ちょっとした言葉を攻撃と感じる」は二次障害から来る過敏さとして位置づけられています。 この分類によって、「同じようなトラブルでも、背景にある特性やメカニズムは違う」「だからアプローチや支え方も変わってくる」という点が自然と理解できる仕組みになっています。

また、本書では「認知の歪み」にも深く踏み込んでいます。 「連絡がこない=自分が何かやらかしたに違いない」と結びつけてしまう個人化、「怒られた=私はダメ人間だ」というラベリング、「ミスは絶対に許されない」「もっと努力すべき」といった「すべき」思考、「どうせいつも失敗する」といった過度な一般化、「あの人は自分を嫌っているに決まっている」という読心術思考など、認知行動療法で取り上げられる代表的なパターンが、著者の実体験とともにエピソード化されています。 抽象的になりがちな心理用語を、具体的な場面と感情の流れに落とし込んで見せてくれるため、「頭で知る」のではなく「感覚として腑に落ちる」形で理解できるのが魅力です。

印象的なのは、著者が自分を一切「免罪」していないことです。 失言や距離感の誤りを、単に「特性だから仕方ない」と開き直るのではなく、「どうすれば同じトラブルを減らせるか」「相手にどう伝えればすれ違いを少なくできるか」を真剣に考えています。 たとえば、「相手の話の意図がわからない」エピソードでは、相手の言葉を文字通りに受け取りすぎた結果、場の空気を壊してしまう場面が描かれますが、その後に「こういう時は、まず相手の意図を確認する」「自分の解釈だけで突っ走らない」といった、具体的なセルフマネジメントの工夫が示されます。 この「当事者の等身大の試行錯誤」が、読者にとっての実践的なヒントになっているのです。

同時に、周囲の人間がどこでつまずき、どう誤解してしまうのかも丁寧に描かれます。 著者の言動は、本人の内側から見ると「必死の適応」や「精一杯の善意」であるにもかかわらず、外側からは「空気が読めない」「わがまま」「不誠実」と受け取られてしまうことが多い。 そのギャップを、巻末の専門家コラムは「特性」「二次障害」「認知の歪み」などの観点から解説し、「ここは環境調整や支援が必要な部分」「ここは本人が気づくと楽になる部分」といった整理を加えています。 結果として、「誰が悪いか」を指弾する本ではなく、「どこに摩擦が生じているのか」を可視化し、当事者と周囲の両方に具体的な足場を提供する一冊になっています。

全体を通して感じられるのは、「発達障害が『理解されにくい』のは、当事者の努力不足ではなく、見えにくい内面のプロセスが、周囲と共有されないまま結果だけが問題視されるから」というテーマです。 本書は、その「内面のプロセス」を漫画として外在化し、「あの時、自分の頭の中ではこういうことが起きていた」という説明を、当事者自身の言葉で差し出します。 その意味で、発達障害の当事者にとっては「自分の失敗を整理し直す手がかり」となり、家族や支援者にとっては「なぜこの人はこうしてしまうのか」を理解するための解説書となるでしょう。 発達障害やグレーゾーン、対人関係に悩みを抱える読者に、自己理解と他者理解の双方の入口を開いてくれる、実用性と共感性を兼ね備えたコミックエッセイです。







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最終更新日  2026.02.03 11:58:43
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