まず、冷戦(資本主義 vs 共産主義の対立)の終結以降の国際紛争には「宗教的な対立」が大きな影を落としているように見えます。そもそも米国は17世紀に英国で国王ジェームズ1世から迫害を受けた清教徒たちが、それから逃れるために海を渡って作った国。大統領が就任式で聖書に手をかけて宣誓するところからもわかるように、米国はキリスト教を軸とした「宗教大国」でもあります。そのため、宗教を否定する共産主義には極めて不寛容で、1950年代には議会による共産主義者及びその同調者とみなされる人たちへの政治的な迫害(マッカーシズム、あるいは「赤狩り」)も行われました。
ギボンの視点は、「世俗的な公共空間をいかに宗教的熱狂(あるいは原理主義的なイデオロギー)から守るか」という課題を考える上で、今なお強力な「教訓」として機能します。しかし、現代の紛争を「宗教(暗黒) vs 理性(光)」という啓蒙主義的な二分法だけで捉えると、問題の背後にある経済的搾取やポストコロニアルな構造を見誤る危険があります。