西門で待ってる

西門で待ってる

2005年10月08日
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「いらっしゃいませー!店内でお召し上がりになりますか?」
「あい。チーズとテリヤキ単品で一つずつ」

金曜の4限、スポーツの授業の終了後。
俺は空腹を満たすために運動場からの帰り道にあるマックで優雅に一人マックと洒落込もうとしていた。

今日のスポーツはソフトボール。友達が一人もいない中での連続登板は精神的にも肉体的にもかなり参るものがある。

(それにしても今日のチームは大アタリだったぜ…。この授業の中でも4人しかいないBランク以上の女が全てウチのチームだったからな。うへへっ、こいつぁウハウハの予感だぜ…!)

そうのたまわるこの男、実は1打席ノーヒット。

(ま、まあ活躍出来なかったにしてもそれなりにチームの人と打ち解けたし、出だしとしては上々かな)

「ではチーズバーガーとテリヤキバーガー単品一つずつで300円になります」



そう思い、金を支払おうとした矢先に開いた入り口のドアにふと目がいった。入ってきたのは同じチームの女子二人。

(お、おいおい、これ何てゲーム…!?)

一人はランクB。戦闘力は74といったところか…。そしてもう一人は…

(ら、ランクA!!戦闘力は73、75、77、バカな…まだ上昇していくだとぉっ!?せ、戦闘力82っ!!しかもパンツが浮き出るほどの尻のライン補正がついてふぇろもんというオーラが出現している…!!)

風がまっすぐふーいてくー…。

(こいつぁ、嵐の予感だぜ…)

確実に歩みを進めてくる二人。まるで時が止まったかのような錯覚を覚えた。さっきから俺の中にいるもう一人の俺は必死に警笛を鳴らし続けている(何故?)

そう感じた瞬間、俺は自分の口が無意識に開いていくのを感じていた。

「ぁ…、お持ち帰りでお願いします」

ヲイ!!!!
哀れなり俺…あぁ憐れなるかな俺…!


「ぃよっ♪」
「おつかれ~☆」

俺の肩をつつきながら隣のレジへ並ぶオナゴ2人。無情にもこの俺、ハンサム桐和(二十歳)に輝かしいスマイルで微笑みかける。

俺は、土壇場での弱さに定評があった。

「よぉ」



「店内でお召し上がりになりますか?」
「はーぃ!」
「えっ、食べてくのぉ?」
「えぇ?ぅーん…」

しかし、隣ではそんな俺の健闘をよそに会話が進行していた。

「ふふっ、ほら、彼も笑ってんじゃん」

俺でぃすかっ!!

「あはっ、食べてくの?」
「ぁー、うん。食べてきます。ね?」

「ぅん☆(笑」


(さっきの一言が悔やまれた…。ネタハンターたるべき者、ここでアクションを起こさなくてどうするっ!?あぁ…超ぶっちゃけこいつらとマックってのはネタ的にも俺的にも悪くねぇ…いやそれどころかむしろ魅力的っ!!いや、いやしかしまだ勝負は終わってない筈!冷静になれ桐原和博。あいつらがトレイを受け取ったときに「俺もやっぱ食ってくわ(笑」とさり気なく切り出せばまだネタを取り戻す事が出来る…筈!いや今の俺なら出来る筈じゃないか!!)

では後ろでお待ち下さい、と店員に言われた後、バカ正直に注文している二人の背中を眺めながら手持ち無沙汰に突っ立っているクールが売りの男桐原和博(※ソワソワしている斑目を御想像下さい)

そして、運命の瞬間が訪れた。

俺「あ」(※あの、と続けようとした)
A「じゃーねぇ~♪」
B「バイバーイ☆」
俺「あ、あぁ…じゃーねぇ~!」


一人で歩き食いしたチーズバーガーは、いつもと同じで変わらぬおいしさでした…。



その後、更衣室で先に着替えを済ませていたチームメイトを見送った後、俺はロッカーの上に忘れ去られた財布を見つけた。中を改めると、それはさっきまで着替えていたチームメイトの物。走って追いかけてももういないだろう。定期が祖師谷からだったので、どうせ取りに帰ってくるだろうと思い体育館の前で煙草を吸いながら俺はそいつを待つことにした。

(しかし俺はまだまだヘタレやな…。あー、自己嫌悪…。そういやさっきの二人、そろそろ帰ってくるかもな…)

3本目のタバコに火を付けても財布の主は戻ってこない。さっさと学生課に預けて帰っちまおうかと思案していた時に、入り口から件の少女たちが帰ってきたのが目に入った。

煙草をくわえたまま取り敢えず会釈。向こうも微笑みながら会釈を返してくる。(これは苦笑いですか?)

「杉ナンタラ太陽に似てますよね☆」

靴を履きかえている最中にそう言われた。周知の通り、芸能ネタはからっきしな俺だ。

「え、誰よそれ(笑)ごめんわかんないよ」
「ほら、あのウルトラマンの人!」
「ウルトラマン(笑」
「えぇー?いつのウルトラマンよ?(笑」
「えっと、多分2こくらい前のヤツかなぁ…(照れりこ」
「ははっ、わかんねぇよ(笑」

…文字にしてみると薄々微妙だと感じていたこのやり取りが確信に変わる。うむっ、実に微妙だっっ…!!

(いや、まてまて落ち付けよ桐原和博。考えようによっちゃあこれはチャンスだぜ?商学部の連中は殆どが祖師谷を使う。だったらこの財布を持っていくついでに話しゃいいじゃん!うわやべ、今日の俺微妙に姑息だよ!いやいや頭いいよ!!)

彼女たちが着替えている間に隙のない綿密な計画を練り続ける俺。いける…!これならばイケルッ!!!


そして、運命の時間が訪れた…。

俺「…!」(一言目を言おうと顔を上げた)
男「遅ぇよ(笑」
A「ゴメンゴメン~マック寄ってた♪」
B「やっほ~☆」

目の前には男の姿。
そして俺に一瞥もくれずに去っていくオナゴ二人。


……_| ̄|○




ふと気が付けば、曇天の下、夜の多摩川の堤防で霧雨に打たれながらメールを打っているへたれの姿ただ一つだけが残されていた…。







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最終更新日  2005年10月08日 09時46分56秒
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