駄目人間は箱の中

駄目人間は箱の中

偏愛主義


大江千里は軽く明るい青春の歌が多いですが、他の人に書けないような
地味ながら良い詞も世に送り出しているので、彼の曲しか聴かない時期もありました。
CDで出ているオリジナルアルバムは全部持っています。
某SNSに参加して、再び千里熱にかかってしまいました。
たぶん、死ぬまでファンですね。

『塩屋』
「Olympic」収録。
私にとって、これからもたぶん一番好きな曲です。
別れた彼女も、そして自分もそれぞれ恋人がいる。まだ思い合って
いるのに、違う暮らしを生きていく。
端整なピアノの旋律と、優しさのある詞がとてもせつないです。
「自分で決めた道を戻りたくない 彼女のことを今は幸せにする
朝の光が包み込んだすべてに今日が始まる」
塩屋駅は神戸に実在します。行ってみると海と山に挟まれた間に家や店が点在する
さびれた街です。
2002年に単独で訪ねてみた時、駅近い「シーホース」のケーキが美味しかった
のと、「渚に近いあの街道のスタンド」と思われる跡地(潰れた様子)を歩いたのを
覚えています。

『いつかきっと』
「red monkey yellow fish」収録。
必要最低限の言葉で表現できる人を私は尊敬しています。
この曲は表現に必要なだけの言葉で、「別れ」を歌っているのが良いです。
不思議な事に、どの言葉も生きていて、この曲を聴くたびに手を止めて
耳をすましてしまいます。
「2000Joe」のオーケストラバージョンはさらに感動が増します。

『格好悪いふられ方』
「HOMME」収録。
大江千里といえばこの曲!と思っている人も多いのではないでしょうか。
ミュージックステーションで歌うのを見て、私が大江千里に熱中する
きっかけとなった思い出の曲です。
失恋の曲なのに、弾むピアノに明るいメロディーが心地よく、体を揺らして
歌ってしまいます。
ふられた男がやけになりつつも情熱を燃やす。好きな人ほど未練は強く残るもの
です。
「HOMME」自体が非常に聴きやすいので、この頃が「全盛期」と言われてしまう
のでしょう。明快なアレンジも90年代らしく聴こえます。

『APOLLO』
「APOLLO」収録。
60年生まれの大江千里。少年が大人になる背景で、めまぐるしく変わる時代が
頭の中でイメージとなって膨らみます。
「憧れていたいた未来 こんなにすぐ追い越して
 もう何が起こっても驚かない 夢中で錆びたペダルをこいだ」
この部分だけでビデオが作れそうな曲です。
私は80年代生まれで大江千里と時代が20年ずれていますが、この曲で見ても
いない60年代、70年代という時代を想像します。
浦沢直樹の「20世紀少年」の、あの子供時代と90年代のギャップにも似た感覚。
良い意味でも悪い意味でも時間に流されていくので、時々やるせない気分に
なるんですね。

『Rain』
「1234」収録。
何年か前に出た槇原敬之のアルバムで初めて聴きました。
恋人へのせつない気持ちを爽やかに綴った詞は、濡れたアスファルトや湿った
匂いや、その中の二人の様子まではっきりと見えるようです。
大江千里は恋愛の日常を歌うことがほとんどですが、この曲はその良い見本。
雨にまつわる歌は数多ありますが、これは隠れた名曲です。


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