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2021.07.08
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パナソニックも下請けに
 ここまで見てきたような鉄鋼業界、自動車業界が直面する困難には、共通した「根本的な原因」がある。それは、「他のどの国にも作れないと思っていたものが、いつの間にかどの国でも作れるものになっていた」という厳しい現実から、目を背けてきたことだ。

 まったく同じ失敗をいち早く経験したのが、家電メーカーである。

 「技術っちゅうのは、ウナギ屋の秘伝のタレみたいなもの」

 こう豪語したのは、'98年から'07年までシャープの社長を務めた町田勝彦氏だ。町田氏は「液晶一本足打法」で全経営資源を液晶の生産に投入した。

 「我が社の高品質な液晶は誰にもマネできない」という自信に裏付けられた決断だった。そしてそれは、しばらくの間は正しかったのだ。

 だが、あっという間に韓国や中国のメーカーは「秘伝のタレ」を完璧に模倣した。大画面液晶はありふれたものとなり、同社は破綻の瀬戸際に追い込まれて、'16年には台湾メーカーの鴻海(フォックスコン)傘下となった。液晶の製造にも携わった経験のある、同社のベテラン社員が言う。

 「結局『秘伝のタレ』だというのは町田さんの思い込みに過ぎなかった。『亀山モデル』で一世を風靡したシャープも、今ではアップルに液晶を安く卸す下請け同然です。'90年代から'00年代にはあれだけ下に見ていた中国のメーカーと比べても、同列どころか下の立場になってしまった」

 シャープだけではない。今まさに、同じ道を辿りつつあるのがパナソニックだ。パナソニックはテスラと'11年にEV用電池の生産で協業に入ったが、テスラはいつしか韓国のLG化学、中国の寧徳時代新能源科技などとも取引を始め、「出入り業者のひとつ」になってしまった。



 「テスラは各国のメーカーを天秤にかけ競争させて、安く電池を作らせようと考えているだけです。このままでは美味しいところを全部持って行かれて、あのパナソニックですら『ただの下請け』になりかねません。

 しかしこれが、リスクを取って新しいビジネスや付加価値を生み出そうとしなかった企業の末路なのです。

 家電や電機に限らず、この30年というもの、日本のメーカーの経営者は赤字を防ぐことばかり考えてきた。勝負を避けて後手後手の思考を続けている限り、日本の産業が復活する日は来ないでしょう」(前出・大西氏)

 21世紀に入って20年が過ぎ、いよいよかつての成功体験は意味を失いつつある。鉄と自動車、そして電機という屋台骨を失ったとき、果たしてこの国はまだ、自分の足で立っていられるのか。

 10年後に待ち受けるのは、戦後の日本人が経験したことのない荒涼とした時代かもしれない。

 『週刊現代』2021年3月13日号より

週刊現代(講談社)





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最終更新日  2021.07.08 08:08:19
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