読んだり飲んだり走ったり

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2017年12月23日
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テーマ: 闘病日記(4015)
昨日記した内容に関して、思い出したことがありますので、記しますね。

病気が初めて見つかったのは2011年の秋。そう、3.11のあった年です。化学療法が順調に効果を上げていたこともあり、年内には職場に復帰。そして翌年四月、ちょっとしたスピーチの機会がありました。

そこで話したのは「昨日と同じように今日があり、今日と同じように明日が来ると信じられることのありがたさ」でした。「日常」のかけがえのなさと言っても同じです。四月を迎え、新たな年度が始まるわけだけれど、それぞれの「道」を模索しながら、さまざまな出会いを通じて、自分なりの「日常」を構築してほしい、云々。

そこに、3.11の報道を通じて得た思いと自分の病の経験を込めたことは言うまでもありません。実感にも裏打ちされていたと思っていましたが、今振り返るに、やはり考えが足らなかったと言わざるを得ません。

そもそも、3.11で被害に遭われた方達と、病に襲われたもののさしたる後遺症もなく過ごしている自分とを重ね合わせること自体、傲慢以外の何者でもありませんでした。

3.11で被害に遭われた方々の「かけがえのない日常」はさまざまな形で破壊され尽くされていました。一方私は、病を得たにせよ、ちゃっかりかつての日常に戻っていました。偶々運良くそうなっただけであるるのに、その点は全く自覚せず、自分で自分を祝福していたようなものです。
その、日常が破壊されたことと、一見日常に復帰できたこと、このとてつもないギャップに目を凝らすことなく、単純に重ね合わせるなど、思慮の浅さ極まれりと言ったところです。そしてその浅慮は、そのとき、何があっても乗り越えられる、元に戻れるという思い込みに囚われていたことを端的に物語っています。

もちろん、「元の生活を取り戻す」ことは、一つの希望たり得ます。破壊を被った人たちにとって、やはり理想は、元に戻ることでしょう。また、大きな天災の後に目にする「がんばろう、◯◯!」という掛け声には、また元の生活を取り戻そうという響きが含まれているように思います。そもそも「復旧」という言い方自体がそうです。

でも、「元に戻れる」ということは、起きてしまったことを「なかったことにできる」ということですよね。

だって、起きてしまったのですから。
やはり、そのことはしっかり認識しておくべきだと思うのです。

もちろん、こうした割り切りがすっきりできるものではないだろうとも思います。とりわけ、かつての日常が深い歴史を背負ったものであればあるほど、「復旧」への思いは捨てがたくなるでしょう。それから先は、たぶんそれぞれの価値観や人生観の問題になりそうなので、これ以上は踏み込みません。

結局、最初の病の後、私は二つの失敗をしていたことになります。

一度失われたものは「元に戻れない」、そのことに思い至らず、「なかったことにできる」と思い込んだまま考えの足りないスピーチをしてしまったこと。
そして、程度という点では比較になりませんが、私の身体の中にも「なかったことにできない」変化が生じていたことを自覚しようとしなかったこと。

後者の勘違いが、巡り巡って私の現在を招来することになったのではということは、昨日述べたとおりです。

覆水は 盆に返らず 返るのは 覆水に似た新たな水のみ

喪われたものは ついには戻らない 新たな日常を 模索してみる

「復旧」の幻想による今の病 不運にあらず 自業自得なり





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最終更新日  2017年12月23日 20時59分31秒
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