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Sep 15, 2006
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テーマ: お勧めの本(8116)
カテゴリ: カテゴリ未分類
Oct_010 夜のピクニック Oct_010


高校の恒例行事、24時間の歩行祭。
最後の高校3年生の歩行祭で、歩いて歩いて、そして何かが動いていく。
貴子と融、わだかまっている二人の歴史が今動き出し、そして始まる。
あまりにも有名すぎる、第二回本屋大賞受賞作。



読書というのは、歩行祭に似ているような気がします。
楽しみにして準備して、例えば図書館で予約したり文庫を買ったり、
そんなことをして、読む場所を整えて時間を作って読みはじめて、
そして一瞬、現実を忘れてその世界に没頭します。
そして読み終わって顔を上げて、また現実に戻る。
その一瞬、その本を最初に読んだ、そのときの感動は、二度と訪れない。
何度読み返しても、最初の感動を追体験できることはない。
一瞬の出会い、だからこそ貴重で大事な、彼らとすごした時間たち。

おおげさかな。
私はいつもそんな気持ちで、本を読んでいる気がします。



で、この本を読み終わって残念だと思いました。
何が残念って、この本を読み終わってしまったことです。
もうあの、楽しみにしていた昔に戻れない、読んでいる最中の幸福感は、
同じ形では二度と訪れない。それがとても、寂しいのです。
そして、今からこれを読める人が心底羨ましい。
面白い本を読めば読むほど、私はそんなことを思って、
読んでないころの自分に、戻りたくなる。
だからこそ、本に没頭している時間はとても大事だし、
その一瞬を忘れたくないし、大切にしたいと思います。

まあ、もちろん、本だけの話じゃないのだけれど。
高校生活だって、大学だって、楽しかった3年間はあまりにも短かった。
そして、社会に出てからの何年間は、あまりにも早い。
でも、その連続した時間の一瞬一瞬が、今の私を作っていて、
これからもそれは変わりがないのだろう。
たとえばこんな風に、眠いのに無理にパソコン前に座り、
ろくに書きたいことが言葉にならずに、気ばかり焦って感想を書いている、
この時間さえも、多分だけど、大切な時間なのだ。



そんなことを思い出させる小説。
流れていく時間、大切な時間、
二人が歩いている、未来に向けて歩いている、そんな時間。
二人は友達とただ歩いているだけ、それだけの話なのに、
その時間を共有できたことが、私にも何かをもたらしてくれているような。

こんなステキな思い出なんかないのに、無性に懐かしいのはなぜだろう。
高校の頃、大学の頃に確かに得ていた何か、その漠然とした大事なものを、
思い出せたからだろうか。大切だった時間たちを。

高校3年生。つきあってるだの怪しいだの、そんなことが話題の中心で、
そんな軽い話をしながらも、皆が中途半端で、将来の不安を感じて、
そして今の日々がもう二度と戻らないことを知っている、そんな彼ら。

相変わらず、恩田陸が描く高校生達は、とても魅力的でした。
こんないい少年少女達に高校時代に出会った記憶はないけれど、
なんだか昔恋をしていた人に再会できたような、不思議な気分になりました。
誰かと、例えば美和子や杏奈みたいなステキな友達と、
きゃーきゃーいいながら、融派と忍派にわかれて議論したい気持ちにかられました。
ちなみに私は忍派。昔は絶対影のある融が好きだったけど、
今は忍の大きなところに惹かれます。
歳をとった証拠なのかな?



まあそんな話は置いておいて。
複雑な関係の貴子と融が、お互いの友達や周りに後押しされて、
そして自らも一歩踏み出して、新しい関係を築いていく、そんな24時間。
この小説がいいのは、その大事な一瞬一瞬を見事に切り取りつつも、
この先に広がる彼らの将来にまで思いをはせられる、その余韻。
さすが恩田陸、余韻を残すのに長けた作家で、いつも曖昧な終わりを提示して
その世界に奥行きを与えてくれるけれど、ここまでの爽やかな余韻はありませんでした。

彼らの将来は一筋縄ではいかないかもしれない、きっと、恋愛とかするし、
憎悪なんだか愛情なんだかわからない感情に、これからも悩まされたりするだろう。
でも大丈夫、彼らはその24時間を過ごして、ちゃんと始まったのだから。

映画化されるみたいだけど、案外いいんじゃないかな。
1200人が見る夕焼けと朝焼け、そして海。
その映像化だけでも、意味があると思います。
とても、映像的な小説だし。
観るつもりなかったけど、ちょっと気になってきました。

Oct_008





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Last updated  Sep 17, 2006 10:55:34 PM コメント(4) | コメントを書く


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