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Ryu-chan6708

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2006.05.07
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カテゴリ: 読書感想
 この本のインターネットの読者レビューを見ると、入門者向けで分かりやすいと好評である。図も豊富で、比喩などを用い、初心者にもわかりやすく、楽しく読み進められるようになっていて、意識の起源を最新の脳科学でわかりやすく解説、是非一読したい好書、などとある。しかし、 私の感想は逆である。 複雑な問題を簡単に説明することはきわめて困難な問題であると感じた。
 7日で脳科学の全貌が分かるように工夫してあるということで、章ではなく、第0日から第7日まで分けているが、数学なら、足し算が1日目で、掛け算が2日目というなら分かるが、 段階としては、全然、無関係である。 掛け算の後に足し算が出たりする。だから、意味がないように思う。

 例えば、「第0日」の章の15頁に「脳は『ニューロン』(神経細胞)の集まりで、その数は一千数百億個もあり、相互に結びついて複雑な網目状である」と説明があるが、第4日の最初で「脳の細胞は『神経細胞』という名がついており、今後この本ではニューロンという」とある。堂々めぐりである。なんで、第1日目にゲーム脳と脳波が出てくるの?これは応用編の7日目の問題ではないのか。

 第0日目には、「脳は 神経板 が丸く落ち込んで 神経管 となり、 終脳 が図の神経管の頭側にある。この 終脳 脳室 で、 脳脊髄液 で満たされている」とあるが、脳室、脳脊髄液の単語はここでおわり。索引にも登場しない。

 多くのたとえ話があるが、たとえ話を使うのは、分かりやすいこともあるし、適切でないとかえってもっと分かりにくくなることも多い。この本は後者の例が多い。

 脳の最高権威が書いたという「バカはなおせる」(5月4日の日記参照)では 、「大脳皮質の神経細胞の三分の一はGAB細胞」 とある。ところが、この「脳のからくり」の第4日では、 神経伝達物質 とある。神経細胞と違うの?どこかで 抑制ニューロン という言葉が唐突に出たような気がする。読むほうが混乱してきた。

 第4日では、ようやく、脳の中の信号伝達の基本の説明になる。本来、これが第1日であろう。伝達経路はニューロン、神経突起(樹状突起・軸索)、シナプスとなるが、肝心のシナプスの説明がないから、伝達の基礎のしくみがピンとこない。
 そのため、第5日のネットワークの説明にシナプスが重要になるが 、「ニューロンどうしの間はシナプスという小さな隙間になっていて、化学物質のやりとりにつながっているのでした。」 とある。ここは何故、過去形?第4日には、「つなぎ目の部分をシナプス」だと言うだけで「小さな隙間になっていて、化学物質のやりとりにつながっている」という説明がないのに。

 第6日にアルツハイマー病の薬で 「タクリン」 「奇跡の新薬アリセプト」 とある。もっとも、両方の薬は一定期間改善されるだけであるが。
この本の半分を占める第6日と第7日は、脳のしくみよりも、意識の問題を扱っている。 しかし、コンピュータやロボットのような人工物のしくみや活動の説明と異なり 、「神の創造物」である人の頭脳のしくみや活動の説明は「仮説」の世界である (この日記の4月25日の「『99.9%は仮説』光文社新書・を読んで」参照)。「工学」と「自然科学」の違いの基礎的な問題にすぎないようだ。





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Last updated  2006.05.07 10:56:12コメント(0) | コメントを書く


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