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それどころか、めっきり耳が遠くなり、私の言葉はほぼ聞き取れなくなった。
ひとつ屋根の下に暮らしていても、
1週間とか、いやそれ以上、顔すら会わせないことなんてザラのザラ。
最近、親との関係に、精神的な限界を感じている。
具合が悪くなり、私は早目にベッドに入った。
夜中、あまりのだるさと熱っぽさに、たまたま布団を直しに来た母に言った。
「ね つ」
具合が悪い時は、とにかく喋れない。
ましてやベッドの上。
それでも「ね つ」をわかってもらおうと必死。
「は?ねる??」
違う、とサインを出しても、延々と「ねる?ねう?」
この2つしか母の口からは出てこない。
構音障害が進むと発音はほぼ「あ行」になってくる。
例えば「痛い」は「いあい」、「暑い」は「あうい」とか。
「つ」は完全に「う」になるので、「ね」はわかっても「ねう」になる。
「ね」は当たってる、でも二文字目は「る」でも「う」でもないところまできたのに、
「ねる?ねう?・・・わからない・・・」
以前も「ごめん、わからない」と、部屋を去られたことがある。
意思受け取り拒否。
置き去り。
「ウの段をゆっくり順番に言って!」
↑これは伝わるのに、「は?うくすつぬ??」とただ早口で言うだけ。
合図を出すスキすらない、とにかく意味がわかってない。
母は文字盤は使えない。
「ね つ」を伝えるのに何十分かかったかな。
私は初めて泣きわめき、「どうしてわかろうと努力しないの!!!」と叫んだ。
それもまた、自己嫌悪なのだ。
母は自分なりに努力している。
読み取れない母への苛立ちなのか、
ALSの自分へのやり場のない悲しみなのか、
ALSそのものに対しての怒りなのか、自分ではもうわからない。
わかってるのは、親は私の見えないところで悲しんでいるということ。