税務調査があるといつも感じることです。
私達は職業柄、お客様のところに税務調査が入るとお客様の希望に応じて立会いを行います。そこでは調査官とお客様、我々会計事務所が揃った場であれこれ質問や指摘、そしてその回答が行われる訳ですが、お客様はお忙しいようであれば始めのときだけ同席して頂いてあとは仕事に戻って頂き、必要に応じて不明点を確認させて頂くというスタンスをとっています。
税務調査の一番初めは会社や事業の概要をお客様にお聞きすることです。創業から事業の流れや請求書は誰が切っているかに至るまで事細かに聞きます。
そして実地調査となるのですが、大体売上関係の調査から入るようです。これは入金実績、発行請求書、発行領収書、税務署が持っているデータなどから確認します。私がいつも思うのは発行請求書の取り扱いが税務署側にとって一方的ということです。
税務の世界では形式的要素と実質的要素があります。形式というのはほぼ書類上のことで実質的というのは実際の有様をいいます。我が国では実質課税をタテマエとしていますが、実質が書類で確認することができるよう、形式も兼ね備えていなければならないとするものもありますし、じゃ、書類だけ備えておけばそれで判断かというと書類だけで実体が伴わない場合(例えば、実際に支払っていないけど不正な領収書だけがある場合)には否認の対象となります。
では、お客様が発行した請求書で実際に領収していないものについてはどのように取り扱うのかという疑問が出てきます。例えば、お客様が下請けとなっている仕事について途中でキャンセルとなったため違約金の請求を行ったが商売の力関係からその請求は認められず入金しなかったといったものです。
これは中小零細企業にはまことによくあることですが、税務署がその請求書を見て申告に売上が上がっていないと100%、売上の計上漏れを指摘すると思います。入金のあるなしは二の次で、請求書を発行している以上、その時点で権利が発生していると見るのです。しかし、実際にはその後入金をお客様はあきらめておられ、再請求も行っていないのですが、「請求をあきらめた」という書類は残らないため形式的な要素だけで課税をおこなってくる訳です。ここが一般常識と税務の認識のズレなのかもしれません。
私たちはこのような指摘については取引先とお客様の力関係を説明し、「権利が確定しているかどうかは取引先がイニシアチブを持っている」とか「この請求に担税力(税を負担する能力)はない」などと主張してここに課税されないようにするのですが、どうやら税務署には「請求したら入金するのが当たり前」という頭があるようです。
確かに税務署は国家権力ですから請求(=課税の決定)をすればいつから必ず入金します。税務署に限らず役所というのはそんなもんだと思いますが、どうやらそのような世界に長くいると民間の世界で起こっているイレギュラーな取引が理解できなくなってしまうようです。
国家の財布を預かる税務署ですから不正をみすみす見逃してしまうような体制では困るのですが、善良な納税者については面倒に感じるかもしれませんが、もう少し民間のイレギュラーな取引も理解してもらえると有難いと思います。
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