ふたり暮らしの手帖

ふたり暮らしの手帖

PR

プロフィール

サリィ斉藤

サリィ斉藤

バックナンバー

2025.11
2025.10
2025.09
2025.08
2025.07
2025.06
2025.05
2025.04
2005.06.14
XML
テーマ: お勧めの本(7892)
カテゴリ: 本の話
2005年の「本屋大賞」(文字通り、本屋さんが選ぶ「いちばん売りたい本」)第一位になった話題の小説です。

大賞に選ばれる前から、恩田陸のファンである友人に、それこそ「熱烈に」という形容がぴったりの勢いで薦められていて、久しぶりに新刊本を購入して読みました。
夜のピクニック 【送料無料商品】夜のピクニック

恩田陸さんのブレイクのきっかけになったのは、ドラマ化された「六番目の小夜子」という本なのでは…?と思います。
私は、話題になったミステリ「三月は深き紅の淵を」や、絵画と小説と歴史の不思議なコラボレーション「ライオンハート」、映画を先に見た「木曜組曲」…など、数冊彼女の本を読んできましたが、正直なところ、あまり「肌にあう」作家だとは思えないままでした。

しかしこの小説は違った!

舞台となるのは、とある高校の伝統的な全校行事「歩行祭」。
朝学校を出て、夜通し、次の日まで決められたコースをひたすら歩く…という、過酷な催し。
朝、昼、夜、そしてまた朝。増していく足の痛みと疲労。距離とともに移り変わる風景。
そんな時間の中で、高校三年生の主人公がひそかに胸に秘めた決意と、それが成就するか、どうか?…それだけを書いた話なのに、全然それだけではないのです。


子どもといえばまだまだ子どもだけれど、実は、自分の行く手にはもう「自分で選び取っていく人生の時間」が広々と続いていることもわかっていて、「今しか出来ないこと」をしなきゃ、という焦りも感じていて、でも現実はそんなにドラマティックでもなくて。

そんな「18歳の気分」が、自分自身の思い出とも重なりつつ、痛いほどに伝わってくる。なぜか、それがすごく心地よかった。

ファンタジーの要素をたっぷりとはらんで、縦横無尽に発想の翼を広げ、しかもその繊細な物語の輪郭を、言葉でしっかりと刻みつけていく…
それが、恩田陸さんという作家の力量だと思うのですが、私が「ピンと来ないなぁ」と感じたのも、おそらく、リアルから透けて見えるファンタジーについて行けなかったからなのでは、と思うのです(こう書くと、私って寂しい人みたいですが)。

でも、この「夜のピクニック」で描かれる幾人もの高校生たちの姿は、しっかりと地に足のついたキャラクターで、「こういう子、いたいた」あるいは「私もこんな子だった」という思いを抱きながら読む人も多いのではないでしょうか。

「本を読む」、中でも特に「小説を読む」ということは、1ページ目から最後まで、本の世界を旅することだと思います。
まさに至福のピクニックを味わうことができた、幸せな読書体験でした。
最新作の 「ユージニア」 も、読んでみようかなぁ…と検討中。

しばらくの間、インターネットから遠ざかり、読んだ本は2冊、見た映画は3本。
おいおい、感想を書いていけたらと思っています。


木曜組曲

++人気blogランキングへ++





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

最終更新日  2005.06.14 12:22:45
コメント(15) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: