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サリィ斉藤

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カテゴリ: 本の話
随筆家として名高い白洲正子の著書は何冊も持っているけれど、その夫君である白洲次郎という人について、私はほとんど知識を持っていませんでした。

白洲次郎占領を背負った男 白洲次郎 占領を背負った男

今月の初め、NHK「その時歴史が動いた」で、この本の著者がゲスト出演して白洲次郎の特集が組まれたのですが、当時鼻炎の薬を服用していたせいか常に眠気に襲われていて、番組が始まってすぐにテレビの前でうたた寝してしまったのでした…
先日、図書館へ行ったときに、その時の反省も込めて(?)借りてきて読んでみたらなかなか面白く、興味深い人物伝でした。

ケンブリッジ大学での留学生活。ビジネスマンとしての筋の通った生き方。日本ではじめてジーンズを履いた男とも言われるダンディぶり…と、死後なお稀代の目利きとして人気のある正子の伴侶にふさわしい、一流の「かっこいい」男性。

しかし、私がもっとも夢中になって読んだ部分は、次郎本人のエピソードではなく、次郎が吉田茂の懐刀として深く関わった「終戦連絡事務局」とGHQとの壮絶な攻防を描いたくだりでした。

以前、憲法改正論議がマスコミで大きく取り上げられていた頃、新聞か何かで
「憲法改正は自民党結党以来の悲願」
というフレーズを目にし、え??そうだったんだっけ??と、とても不思議な思いがしたのですが、この本に紹介されている「新しい憲法を自分たちが作れるか、占領側に作られてしまうか」という駆け引きの壮絶さは、大変不謹慎な言い方ではありますが、とてもスリリングで、ぐいぐいと引き込まれてしまいました。

様々な紆余曲折を経た末、GHQ主導による憲法案を日本政府の案として公表するに至るわけですが、閣議決定を天皇に報告した国務大臣の冒頭の言葉は

というものだった、というのが象徴的です。そして、「今回の憲法は、独立を回復した後にわれわれの手で改正すればいい」という思いが、首相の吉田茂以下関係者の共通の思いになった、と書かれており、先に挙げた「結党以来の悲願」という言葉は、なるほどそういう訳なのですね。

次郎が当時記した手記には
「斯くの如くして、この敗戦最露出の憲法案は生まる。「今に見ていろ」と云ふ気持抑へ切れす。ひそかに涙す」
と記されています。また、戦後20年以上を経て
「この憲法は占領軍によって強制されたものであると明示すべきであった。歴史上の事実を都合よくごまかしたところで何になる」
とも、述べています。

ただ、「終戦後、六、七年間小学校の子供にまで軍備を持つことは罪悪だと教えこんだ今日、無防備でいることは自殺行為だなんていったって誰も納得しない」と書いた彼が、一方では以下のように語っているところに、白洲次郎という人の本当の大きさを感じます。

「新憲法のプリンシプルは立派なものである。(中略)マックアーサーが考えたのか幣原総理が発明したのかは別として、戦争放棄の条項などその圧巻である。押しつけられようが、そうでなかろうが、いいものはいいと率直に受け入れるべきではないだろうか」

5月3日の憲法記念日を前に、あらためて多くを考えさせてくれた一冊でした。
皆様、楽しいゴールデンウィークをお過ごしください。

【読後、こちらを改めて読み返すとまた面白かったです】
白洲正子自伝 白洲正子自伝





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最終更新日  2006.04.27 22:53:04
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