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カテゴリ: 本の話
サブタイトルは「日本の近代文学再読」。

著者の関川夏央氏の、硬質で隙がなく、それでいてどこか、読んでいて「グッとくる」情感がこめられた文章。昔から好きです。

これはずっと読みそびれていて、先日図書館で見つけた一冊。
「本の虫干し」ではなくて「本よみの虫干し」というタイトルが印象的です。

「根が文学嫌い」という著者が、

『文学は鑑賞するものではない。文学は歴史である』

つまり、文学は作家の個人的表現でありながら、同時に時代を映す鏡であって、史料なのだ…という観点に立って、樋口一葉から岡崎京子のマンガに至るまで、さまざまな作品を、時代に即して読み直していく。



収められた60近い作品群には、未読の作品もたくさんありました。が、目次に並ぶ

「早熟とは不運に他ならない」■『肉体の悪魔』 ラディゲ

「屋根一枚めくればどの家も問題だらけ」■『岸辺のアルバム』 山田太一
「ただ家にいたくなかった作家」■『輝ける闇』 開高健

…といった章題からして、知っている本もそうでないものも、同じように興味をかきたてられ、一気に読んでしまいました。

例えば、夏目漱石の「三四郎」を取り上げた章。
明治四十年に職業作家となり、第一次大戦がもたらす好景気が始まる前に亡くなった夏目漱石の小説には、たびたびお金を軸に展開する心理と人間関係が描かれる。
つまり漱石を 「不況作家と呼ぶことができる」

…など、新鮮な視点の数々に、ページをめくる手が止まらなくなりました。

すぐれた文学作品は、時代を超える力を持つ。
その一方で、なるほど、一つの作品が「書かれた」時代背景や、「読まれた」(あるいは「読まれなくなった」)社会を覆っていた空気の色を照らし合わせて読むと、そういうことだったのか…と腑に落ちることも数々。

ホコリのつもった頭に刺激を与えられたというか、知的好奇心をかきたてられた楽しい一冊でした。

【紀行文学から漫画の原作まで、幅広く面白い関川作品です】
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最終更新日  2007.09.13 19:50:16
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