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2020年01月13日
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テーマ: こけし探訪(85)
カテゴリ: 伝統こけし
丑蔵愛の北川太一『こけし惜別』を読む 北川太一『こけし惜別』北斗会出版部1995/10/15

署名落款入りでかつ二重箱入りという豪華なもの。しかも当時でもあり得ない活版印刷。単色本文74ページでは、贅沢の極みであろう。

「惜別」とは多くの工人や西田峯吉、土橋慶三などを失った追悼が多いことによるもの。

印象をひとことで言えば、丑蔵愛に溢れた一冊であるといえよう。丑蔵から文六、文男、文吉への思いは広がる。さらに奥瀬鉄則への叱咤激励である。

「丑蔵恋慕」の冒頭をあげる。

丑蔵がいない、と思うと体のどこかに大きなほら穴があいたような気がする。丑蔵逝去の電話が新地から届いたのは、朝から雨の九月二日火曜日、 夜も八時半を廻っていた。追われている原稿があって、いま東京を離れる わけにはいかない。いくらあがいてももう丑蔵はいない、そんな取返しようもない思いに駆られて、丑蔵にとも英裕にともつかない電文を綴った。


亡き父と同年の丑蔵を悔やむ弔電としては、感傷に過ぎると人は笑おうとも、わが壮年に丑蔵でなくては夜も日も明けぬ丑蔵恋慕の数年があり、そしてそれが還暦をすぎた今もたちどころによみがえることを、溢れる思いのたけをこめて、幽明を異にする丑蔵に語りかけずにはいられなかった。
悲しい時、苦しい時、「丑蔵、丑蔵、丑蔵」ととなえることで、幾たび それを切り抜けたか。滑稽なことだが、抜歯する歯科医の診療台の上でさ え、その呪文は心を静めた。それはまさに、恋慕というほかない時間だっ た。(初出「こけし手帖」309号)


【 北川 太一】(きたがわ たいち)、1925年3月28日 - 2020年1月12日、文芸評論家。東京生まれ。東京工業大学卒。向丘高等学校教諭。高村光太郎記念会事務局長、高村光太郎一筋に研究をつづけ『高村光太郎全集』『選集』の編纂にあたった。吉本隆明の盟友。(ウイキぺディア)
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最終更新日  2020年02月07日 01時16分31秒
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