イタリアに来た日
イタリアについた最初の１日って事にします。
１９９７年初夏。ローマ、フィウミチーノ空港から、
テルミニ駅に到着した頃には、日はかけり、
駅周辺の独特な、つまり物騒な雰囲気が見え始める、
そんな時間帯でした。ミレニアムで今でこそきれいになったと
言われるテルミニ駅ですが、当時はまだ、やっぱり何かまずそう｡｡｡
最初の夜だからとしっかり予約していた宿も、
駅から１０分くらい歩いた所でしたが、
多少裏道にあるので、ちょっと地図を見たくらいでは
なかなか分かりづらい。こうなれば初めてイタリアでの
実践イタリア語（一応日本で習っていたのでほんのちょっと分かった）。
ムチャムチャな会話でもまあ、とりあえず話し掛け道を聞く。
おかしな事に、こういう時は意地でも英語で聞いたりするのが
嫌なもので、多分気合が入っていたからだとは思うのですが、
でも、案外通じちゃったりして、宿の受付へ。
受付では、日本人の人がなんかもめていたのです。
しかも、完全日本語で文句を言っているから、
当たり前だけど私にも分かる。
彼女は一人旅で色々心配していて、それで、
ベッドの足にチェーンキーでバックパックをとめていたらしく、
それを清掃婦（多分）に切られたと激怒。
激怒されたって、日本語だから相手も分からず、
イタリア語で、彼女いつ旅立つの？え？明日？なんだ、
じゃあほおって置けばいいわね、と言っているのが、
私には何となくだけど分かった。
日本人旅行者は後ろに私が居る事に気付くと、
やっぱり怒っている事は表しておいた方がいいから、、
って言うんだけど、私も疲れているから
早く部屋に入りたいし、事は早く済まして欲しい。
仕方ないから、あの、良かったら私、何か言いましょうか？
多少だけど、イタリア語と英語分かるから。
そうしたら彼女、ここぞとばかりに私に文句をぶちまけてきた。
仕方なく、かなりアヤシイ、イタリア語で、
事情を先方に話し出すと、向こう（宿側）はそんなの知ったこっちゃないって
堂々とした態度で、私に、で、あなたは？予約したの？
はい、じゃあ、これが鍵ね。ってな具合で、
つまり、私の相手をしてくれちゃった。
私も彼女になんて言っていいのかも分からなくなっちゃったけど、
でも、本当に疲れていたから、なんか、
掃除の人がやった事は分からないらしいですよ、とかいって
お部屋に引っ込んじゃった。もし、なんかもめて
私が必要だったら、部屋の番号はこれですから｡｡｡って。
で、夕飯仕入れに街に出ちゃったわけだけど、
もちろんその後、どうなったのかも知らないし、
彼女も何も言ってこなかったけど、フロントを立ち去る時も
彼女の日本語での叫び声は響き渡っていた。
翌日早朝、ローマからシエナに旅立つ。
私はシエナの外国人大学に通うことになっていたから。
電車の乗換えとか切符を買うとか、そういう事も初めてだったから、
色々と混乱はあったけれど、それでも、やっぱり何とか
たどり着く。確かお昼過ぎ。
お馬鹿な私は、駅から乗るバスの方角を間違えて、
とんでもない所についてしまった。
反対向きのバスがいつ来るのか、
よく分からないままに呆然と待ち、
鞄と体の間には汗だらけになっていました。
おかげでパスポートも体の近くにあったから、
今でもしなっているし、
中心地に向かうバスが着いた頃には、すっかりうんざりしていたし。
中心のバス停に着く。
英語圏の学生に話し掛けられ、
一緒に宿を探さないかって言われたけれど、
でも、ちょっと、すぐに受けられなくて、
お断りして、中央広場の方角へ向かう。
実は、シエナでのコースは日本で二期分予約していたものの、
後半は学生寮が取れたものの、
前半は夏の特別コースで、って、つまり、
宿がないままの到着だったのです。
とは言え、出発前に大学から取り寄せた学生アパートの情報の
表を見て、いくつか電話したんだけど、
ああ、あなた日本に居るのね。シエナに着いたら
また連絡してみてね、って言われてたのです。
（うう、けちして国立の語学学校に行ったから、
高い語学学校みたいに宿の仲介ちゃんとしてくれなかったんだ）
重い荷物を持って、あの、坂だらけの中世の街で
まずする事、公衆電話捜し。一番最初に目に入ったのは
暗いゲームセンターの入口にあるもの。
そこで、あらかじめメモに書いた（今でも残っている）イタリア語で、
お部屋を探しているんです。何日から何日まで｡｡｡って。
でも、昼休みの真っ只中の時刻。なかなかうまくは行きません。
初めにじゃあいらっしゃいって言われたアパートは
シエナの聖人の名前がつく、かなり立地条件のいい所。
到着して、上にあがって、で、他の住人に言われたけれど、
大家さんは夕方にならないとここに来れないから、
とりあえず休んで待っていたら？
そして、そこいらの部屋に通されて、
私、ただひたすらに、、、、寝ちゃいました。
３時間くらい。
夕刻、大家さんがやってきて、今空いているのは、
ダブルルームだけなんだって言われても、
この時間にどうするのよ、、って事になって、
決めちゃいました。あの、サンタカテリーナのお部屋。
その後、家賃を降ろしに行ったり、
はたまた、大学で手続きしたり、保険に入ったり、
銀行口座を作ったり、滞在許可証をとったり、
（ってそれは数日後だけど）あと、同室の
まあまあ親切だったあの子が、彼氏を毎日のように部屋に泊めたり
しまいにゃあ、なんかはじめちゃったりする、
そんな生活が待っているとは夢にも思わず、
それから数ヵ月後に控えたアカデミアの
入学試験への不安も抱えたまま、
再びさっき眠ったあの布団に戻って、
慌しい２４時間を閉じたのであります。
あの日のシエナの坂道を往復した事は今でも忘れません。
夏の日、重い荷物を、体にべっとりくっつけて、
先も見えないままに、知らない人に電話したり、
知らない道に迷い込んだり、落ち着かない気持ちのまま、
眠りこけてしまったり｡｡｡
今思えば、あの時の冒険ぷりって、
その後私に降りかかる色んな事と比べたら、
ほほえましい記憶として浮かび上がってくるから。
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