エデンの南

エデンの南

December 18, 2004
XML
カテゴリ: 読書
●プルースト●

前半は『ジャン・サントゥイユ』について語られるのだが、これは私は読んでいないし、苦手な政治的な話ばかりで退屈極まりなかったです。

『失われた時を求めて』は、去年から今年にかけて読んでいたので、この小説に出てくる、奇妙で不幸なすごい嫉妬の感情や、全体的なテーマとしてある<<同性愛>>の事など思い出して、後半は楽しく読めました。
ヴァントゥイユ嬢の話などは、誰しもが持っている、人間の中に巣くっている<悪>そのものではないでしょうか。
『失われた…』には、親に対する子の残酷さが随所に出てくるのだけど、私はあの 『北の国から』 を思い出したのでありました。(笑)

そして、お互いを必要とする相反する関係というコントラストがテーマとなってきます。以下引用。

<<悪は把握可能なものであるようにも思える。しかしそのためには、あくまでも善がその鍵となるのでなければならない。それというのも、善の強烈な光のおかげで、悪の暗闇がますます濃いものとなるのでなければ、悪はもうその魅力をもたないことになるからである。>>

<<黒があるからこそ、ばら色は感受性に強い印象をあたえるだけの価値をもつことになるのではなかろうか。影が光に添うように、不幸が幸福に添うのでなければ、幸福はたちまち無関心の対象とされるだろう。>>



<<写真はいいよね、光と影だから、太陽とは切っても切れない関係がある。>>

そして <<真理--と正義と--は、冷静な心を必要とするものだけれども、しかしそれらは、ただ荒々しい人間たちにしか属さないものなのである。>> には、ああ、そうかもしれない、と思いました。

●カフカ●

<<彼は、自分の作品を焚刑に処したいという欲望にかられながら生きつづけた、というよりはむしろ、すくなくともその欲望にかられながら死んだのである。>>(本文より)

「自分ののこしたものは是非とも火にくべてもらいたい」と言っていたというカフカ。 サド との共通点に驚きますよね。
また、バタイユは、カフカ作品について、<<まさに燃やされることだけが欠けている諸客体>><<消滅するためにそこにあるのだ。>> と書いています。

カノンの地にはいることができなかったモーゼを例に出し、<<目的という目的は、すべて一様に意味のないものである>> <<モーゼがカナンの地にはいることができなかったのも、彼の生があまりにも短かったからではなく、それこそ人間の生だからである>>と言うのは、なる程カフカ作品の不条理をよく表わしていると思います。

そして、カフカがこんな一文を残しているのは、おもしろいです。

「夜、ひどくおもしろい物語に熱中している少年にむかって、彼だけ読むのをやめて寝に行かなければならないということを、論理的に証明して理解させようとすることは、とてもできないことだろう」。

まさにカフカ文学そのものではないですか!

<<自分がいまそれであるところの無責任な子供のままでいつづけること>>を望んだカフカ。


また、カフカは、『日記』にこんなおもしろい事を書いています。

<<わたしが満足を味わっていた時分には、わたしは、不満を味わいたいと思っていた。そして、自分の自由になる同時代の、また昔からのあらゆる手段を用いて、がむしゃらに不満のなかに突き入ろうとした。ところが、いまでは、はじめの頃の状態に復帰することができたらと思うのだ。--中略-- わたしの精神的な失権は、実は意識的にそうしたのだが、子供らしいひとつのたわむれからはじまったのである。たとえば、顔の筋の痙攣をよそおってみるとか、両手を頭のうしろに組んだままあるいてみるとか、まったく唾棄すべき子供らしさだが、それはそれなりに成功したのだ。--後略-->>

そして、カフカの短編『死刑宣告』の青年の自殺の場面の描写は、くらくらする程美しい。




そしてカフカ自身、敬虔なマックス・ブロートにむかって、こう言ってるのです。

「きみは、この最後の文章がなにを意味するか、知っているかい。ぼくはこれを書きながら、猛烈な射精のことを考えたんだよ」

変身改版 ( 著者: フランツ・カフカ / 高橋義孝 | 出版社: 新潮社 ) 審判 審判 ◆20%OFF!<DVD> [IVCF-2119]

沖縄旅行していた妹が送ってくれたとゆーくるま海老が、さっき届きました。んで、下の母親の叫び声に慌てて降りてった所なんですが・・・生きてるって! ひゃ~。

Diamond Club

人気blogランキングへ





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  December 18, 2004 12:54:33 PM
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

PR

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

SEAL OF CAIN

SEAL OF CAIN

Calendar

Freepage List

読書のページ


小栗虫太郎


夢野久作


江戸川乱歩


ジョイス


ダンテ


バルザック


ルイ=フェルディナン・セリーヌ


ギリシャ神話


養老孟司、竹内久美子


夏目漱石


ジュネ


中井英夫 (塔晶夫)


バタイユ


☆小・中・高校生へのお薦め本☆


ポー


今年読んだ本


ブロンテ姉妹


ミシュレ


澁澤龍彦


ウィリアム・ブレイク


ブコウスキー


ミルトン


ヘルマン・ヘッセ


コリン・ウィルソン


ドストエフスキー 関連本も


ヘンリー・ミラー


トーマス・マン


川端康成


ミラン・クンデラ


その他


フランツ・カフカ


オスカー・ワイルド


寺山修司


プーシキン


スティーヴン・キング


ロジェ・マルタン・デュ・ガール


三島由紀夫


加賀乙彦


田中一村伝


美輪明宏


モーパッサン


マルキ・ド・サド


生田耕作


マンディアルグ


阿川佐和子


アポリネール


ヘミングウェイ


ルイ・アラゴン


ラシーヌ


佐賀のがばいばあちゃん


カポーティ


藤田嗣治関連


阿部定事件


マーガレット・ミッチェル


コンスタン


トルストイ


吸血鬼関連


三国志


きもの


梁石日


井原西鶴


東電OL殺人事件関連


安倍公房


アンドレ・ブルトン


淀川長治


<映画の見方> がわかる本


グリンプス


フリッカー、あるいは映画の魔


河合隼雄


野球関係


立花隆


ポール・ギャリコ


中島義道


坂口安吾


業田良家


源氏物語


今日も映画日和、本と映画と70年を語ろう


トーキングヘッズ叢書


マルセル・プルースト


清水正


ガストン・ルルー


バルベー・ドールヴィイ


谷崎潤一郎


アルベール・カミュ


四王天延孝


泉鏡花


写本・グノーシス神話・ゾロアスター教


ジョージ・オーウェル


アイン・ランド


映画のページ


タランティーノ/キル・ビル関連


江戸川乱歩映画祭


恐怖・ホラー・サイコ系


吉本直聞


ベルトルッチ「ドリーマーズ」と1968年考


パゾリーニ


カール・ドライヤー


カサヴェテス


ウィリアム・ワイラー


ジャン=ピエール・ジュネ


ロジャー・コーマン


塚本晋也


ジャン・コクトー


ジャン・ルノワール


その他


キューブリック


ゴダール


クローネンバーグ


ケン・ラッセル


黒澤明


ヒッチコック


ロジェ・ヴァディム


エリア・カザン


フェリーニ


溝口健二


ヴィットリオ・デ・シーカ


ヴィスコンティ


男はつらいよ


ウディ・アレン


ヤン・シュヴァンクマイエル


ATG


大島渚


特別企画★日本映画監督協会70年の70本+1


トリュフォー


黒木和雄


吉田喜重


佐々木昭一郎


タルコフスキー


北野武


ジム・ジャームッシュ


勅使河原宏


悪名シリーズ


ベルイマン


市川崑


エド・ウッド関連


ロッセリーニ


マーティン・スコセッシ


フランク・キャプラ


ジャック・タチ


リドリー・スコット


特撮


アンリ=ジョルジュ・クルーゾー


新藤兼人


フリッツ・ラング


ロメール


ドラゴンボール


エヴァンゲリオン


ブルース・リー


Rozen Maiden ローゼンメイデン


マクロス


1997年スペイン旅行記


日本に対する嫌悪とスペインへの思い


マラガ到着


退屈な寮生活


セビリヤの旅


快適だったホームステイ


モロッコの旅


初めての一人旅 ~コルドバへ~


忘れられないグラナダ


忘れられないグラナダ (つづき)


グラナダに別れを告げ、バルセロナへ。


プラハ→ウィーン→ブダペスト旅行日記


旅前


旅中


旅後/関連話


棒いろいろ



映画


グルメ


ラーメン日記


ベルギー・オランダ旅行日記


Archives

November , 2025
October , 2025
September , 2025
August , 2025
July , 2025
June , 2025
May , 2025
April , 2025
March , 2025
February , 2025

Favorite Blog

ウと英の情報機関は… New! Condor3333さん

京都二日目 アラネアさん

【重要なお知らせ】… 楽天ブログスタッフさん

ユダヤが解ると真実… ごろにゃん2706さん
真秀 まほろばへ サム1648さん

Comments

SEAL OF CAIN @ Re[1]:破壊と再生の2024(01/01) アラネアさんへ いつもコメントありがとう…
アラネア@ Re:破壊と再生の2024(01/01) コメントが超遅くなってしまい、すみませ…
SEAL OF CAIN @ Re[1]:破壊と再生の2024(01/01) まろ0301さんへ お久しぶりです! コメン…
まろ0301 @ Re:破壊と再生の2024(01/01)  大変な年でしたね。ワタクシも交通事故…
SEAL OF CAIN @ Re[1]:あけましておめでとうございます。(02/04) アラネアさんへ あけましておめでとうござ…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: