エデンの南

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March 5, 2021
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テーマ: 読書(9597)
カテゴリ: 読書
エホバによる十戒



党員に必要とされたのは、自国の民以外の民は「邪神」を崇拝しているということ以外、他のことをほとんど知らなかった古代のヘブライ人と同じようなものの見方をすることだった。党員は、そうした邪神がバール、オシリス、モレク、アシュトレトなどと呼ばれていることを知る必要はなかった。おそらく他の神について知らなければ知らないほど、党員の正統的な信仰が強まったのであろう。党員はエホバとエホバによる十戒を知っており、それ故、他の名前や他の属性を持った神は邪神であることを知っていたのである。


これは、オーウェルが諸悪の根源はYHWHだという事がわかっていた証拠ではないでしょうか。
人々を支配するのは聖書の神です。
そして、古代にはエホバ(ヤハウェ)以外の神を「悪魔」と呼んでいた事が エレ-ヌ・ペイゲルス『悪魔の起源』 に書かれていました。


資本家・支配者

本文の中から、資本家について書かれていたセリフを引用します。

「問題は、その資本家たちが──かれらとかれらに寄生していた法律家や聖職者といった連中が──世の支配者だったということなんです。ありとあらゆるものがかれらのために存在していたということ。あなた方──庶民、労働者たち──がかれらの奴隷だった。かれらはあなたたちを自由にできたということなんです。虫けらみたいにカナダに追い払うこともできたし、その気になれば、あなたたちの娘さんと寝ることもできた。九尾の猫鞭などと呼ばれた道具を使って痛めつけるよう命ずることもできた。かれらとすれ違うとき、あなた方は帽子を取らなくてはならなかった。資本家は誰も彼もが、従僕の一団を引き連れて出歩き──」


資本家たちが支配者である事が書かれています。


トマス・ピンチョンの解説

上に書いた資本家の事とも関連する解説から引用しようと思います。
どこで切って良いんだかで😅長くなりますが…
※一部太字にしました。

 オーウェルは自分が “反体制的左派” とは一線を画す立場である。彼は第二次世界大戦の始まるずっと以前から、労働党員の大部分が、すでにとは言わぬまでも潜在的には、ファシストであると看做すようになったいた。労働党とスターリン政権下の共産党との間に類似性が見出せることを多少とも意識していたのである。彼にとっては、どちらも労働者階級のために資本主義と闘う運動を装いながら、現実には、自己の権力の確率と永続化に腐心しているに過ぎなかった。 大衆は、その理想主義、階級格差に対する怒り、そして低賃金をも厭わない労働意欲につけこまれ、ただ利用されるためだけに存在し、繰り返し何度も裏切られるのだ。
 ファシズムへの傾斜を抱える人々───政府のやることなら、正邪に関係なく、すぐにも正当であると頭から決めて恥じないわれらが隣人と言ってもいいが───はそんなことは所詮戦争を知らない者の考え方だ、と即座に反論するだろう。敵の爆弾が自国に投下されるようになり、国土の風景が一変し、友人や隣人が犠牲になったとたんに、その種の主張はすべて、政府を転覆しようとするものではないにしても、まったくの的外れである、と。自国が危険に晒されている時には、強力なリーダーシップと実効性のある対策こそが肝要なのであって、それをファシズムと呼びたいのならそれで結構、何と呼んでもらってもいいが、空襲の終焉と警報の解除を導く議論でなければ、誰ひとり耳を傾ける者はいないだろう、と。


この解説も非常に価値があるものなので、絶対に読んでいただきたいと思います。
以下、ここに書かれている「オセアニア」とは小説の舞台となった超大国の名前です。
※一部太字にしました。

〈二重思考〉はオセアニアを統治する各省の名称の背後でも作用している。平和省は戦争を遂行し、真理省は嘘を吐き、愛情省は党の脅威になりそうな人物を片っ端から拷問し殺していく。 もしこれが馬鹿馬鹿しいほど異常に思われるなら、現在のアメリカ合衆国に目を向けて欲しい。戦争を造りだす装置が、”国防省” と呼ばれていることを疑問に思っている人はほとんどいない。 同様に、司法省がその恐るべき直轄部門であるFBIを用いて、基本的人権を含む憲法の保障する権利を踏みにじっていることは、十分な証拠が書類として提出されているにもかかわらず、我々はその省を真顔で “正義(ジャスティス) の省” と呼んで平気でいる。表向きは自由とされている報道機関も、常に “バランスの取れた” 報道をすることが求められ、あらゆる “真実” は、同等の価値を持つ正反対の情報によって即座に去勢される。世論は日々、修正された歴史、公式的な記憶喪失、明白な嘘を与えられているのだが、そうした情報操作はすべて好意的に、 “ひねった解釈” などと呼ばれ、楽しげにスピンするメリーゴーラウンドと同様、何の危険もないと考えられている。我々は伝えられることが真実でないと知りながら、それが真実であって欲しいとも思っている。信じると同時に疑っているのだ。


この小説が予言的である事が、今のアメリカの状況に目を向けてみるとわかるんです。
闇の勢力って架空の存在ではないですよ。「陰謀論」ではないですよ。

ちょっと面白い事が書かれていましたよ。

〈ビッグ・ブラザー〉の政治体制はファシズムのすべての要素を示している───カリスマ的な一人の独裁者、行動の完全統制、集団に対する個人の絶対的従属。だが、そこにはオーウェルが知らないはずのないファシズムの顕著な特徴である人種差別、特に反ユダヤ主義の要素が欠けている。これは現代の読者を困惑されるに違いない。


いや、反ユダヤ主義=人種差別とされているけど違いますよね。
差別だーってユダヤが言っていますけど、今まで散々書いてきましたが、大昔から世界には深刻な「ユダヤ問題」があり、小説に書かれている資本家の問題、ビッグブラザーの監視社会も全て「ユダヤ問題」です。
これが起こらないようにしなければならないのです。
今改めて解説を読んでみると、ピンチョンは見えてなかったという気がします。
さらに…

 オーウェルのユダヤ人に対する態度について昨今多くの研究がなされており、なかには彼が反ユダヤ的であるとさえする論評もあるにはある。だが、この時期の彼の著作の中にどれほど明示的なユダヤ人問題への言及があるか探してみても、その数はあまり多くない。オーウェルはユダヤ人問題についてさほど興味を持たなかったように思われる。


完全にピンチョンは勘違いしていると思います。

この小説は、ホロコーストが起こらなかった世界の彼なりの再定義だったとさえ言えるかもしれない。


ですって。まさか。


訳者あとがき

あとがきにちょっと面白い事が書かれていました。

 読んでいないのに、見栄によるのか礼儀によるのか、読んだふりをしてしまうという経験は万国共通らしく、英国でもかなりの人が身に覚えがある、と拷問にかけられなくとも告白しているらしい。しかも英国での「読んだふり本」第一位がオーウェルの『一九八四年』だというのである。


そうなんですか!
Twitterのリプでも「ニュースピーク」とか見かけますね(^Д^)


吉乃黄櫻Twitterスレッド

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Last updated  March 5, 2021 09:00:06 PM
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SEAL OF CAIN @ Re[1]:破壊と再生の2024(01/01) アラネアさんへ いつもコメントありがとう…
アラネア@ Re:破壊と再生の2024(01/01) コメントが超遅くなってしまい、すみませ…
SEAL OF CAIN @ Re[1]:破壊と再生の2024(01/01) まろ0301さんへ お久しぶりです! コメン…
まろ0301 @ Re:破壊と再生の2024(01/01)  大変な年でしたね。ワタクシも交通事故…
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