システムエンジニアの晴耕雨読

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2009.01.12
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ニーチェ入門

竹田青嗣「ニーチェ入門」


 わかりやすいと定評のある竹田青嗣さんのニーチェ入門書。



 ニーチェ復権・・

「ニーチェの思想が20世紀の後半になって再び蘇ったのは、なにより彼のキリスト教批判が、

 ある特定の「信念」、「主義」、「イデオロギー」などに対する普遍的な批判思想として

 読み直されたからにほかならない。」 


 ドゥルーズがニーチェから受けついたもの。

 1つは、「系譜学」の概念に由来し、「近代哲学をその問題の内容を問わないで、

 その「起源」、つまり「なぜそのような問題が設定されたか」という天を問題にする、



 もう1つは、「伝統的に近代哲学が問題にしてきた「認識」や「真理」については

 問わないで、つねに事象の「意味」や「価値」を問題にする、という考え方である。」



 ニーチェの思想の柱は3つ。

 1.ルサンチマン批判

 2.これまでの一切の価値の顛倒

 3.ニヒリズムの克服、価値の創造

 ・・ポストモダニズムの思想家に復権されたニーチェですが、前2つについては復権に

 成功したようですが、3つ目はいまだ成立せず。



 ショーペンハウアー「意志と表象としての世界」によると、

 「個々の人間存在の意志(意欲、欲望)は、あおの「根源的なもの」としての「意志」

 の個別的な現われである。つまり「意志」とは人間の「意識」、「悟性」、「理性」と



 それは、「生きんとする意志」「生へのあくなき意欲(欲望)」であり、

 「人間は理性によってこの世界の矛盾(生の苦悩)を解決することはできない」という

 厭世哲学だった。



 「悲劇の誕生」・・

 「ギリシャ悲劇における「悲劇」という概念のエッセンスは、人間のさまざまな努力にも



 むしろ、人間はその欲望する本性によってさまざまな矛盾を生み出してしまう存在だが、

 それにもかかわらずこの矛盾を引き受けつつなお生きようと欲する。

 まさしくここに人間の本質がある。」



 「より高い人間」の創出・・

 これがニーチェが設定した人間の文化の目標であった。

 1つは、ルサンチマン思想によって人間を平均化、凡庸化することへの対抗。

  当時の文化の主流をなしていた、キリスト教・ナショナリズム・民主主義・近代哲学・・

  これらはすべて人間の精神を「高く」するのではなく、「低く」(凡庸化する)もの。

 2つは、「歴史」の目標を「人間」以外のものに設定することへの対抗。



 「これまでヨーロッパにおいて考えられてきた人間的な価値」とは何か?

 それは、「キリスト教」、「道徳」、「真理という観念=真理への意志」である。

 これらへの徹底した批判。


  キリスト教の人間観の本質は「ニヒリズム」にほかならない。


 「・・新しい無神論者たち(哲学者、科学者、合理主義者、懐疑論者等々)は

 キリスト教とその神の国に反対した。しかしじつは彼らもまた「新しい信仰」を

 もっている。」・・近代哲学や近代科学は、「真理への意志」=正しい認識への

 あくなき追求、である。


「伝統的な考え方では、「真理」とは、プラトンやキリスト教に示されるように

 世界における「究極のもの」を指す。また近代ではそれは、世界の「真理」、「客観性」、

 そして、認識における「厳密性」と「正確性」を意味する。」


「近代哲学の「道徳」観念は、キリスト教における「禁欲主義的理想」の変奏形態

 にすぎない。」



 「真理への意志」は、どこに行きつくか?

 「・・ついに世界それ自体には何の意味もないということを証明するところまで

 ゆきつくのである。そして、この土台の上に、現代の無神論、懐疑論、デカダン、

 ニヒリズムが咲き狂うことになる。」



 ニーチェ曰く、「事実なるものはない、ただ解釈だけがある」

「「客観」とか「物自体」とか「世界そのもの」とかいったものはまったく存在しない、

 ということである。」

「「徹底的ニヒリズム」とは、この世を超えたところに何か「神秘なもの」あるいは

 「神聖なもの」などはいっさい存在しない、という確信である。」



 「苦悩」→「ルサンチマン」→「3つの推論(目的・統一・真理)」→「ニヒリズム」

 という道筋・・、この次は、ニヒリズムの克服、「超人」「永遠回帰」へつながる。



「わたしの考えでは、「永遠回帰」のイデーがまず押し出すのは、

 「人間が何のために苦しんで生きるのか」

 について、何者も答えを与えられずにどこにもその超越的な答えがないということに耐えよ、

 ということである。」

 その結果として、キリスト教や真理が作り出されたが、これらは人間の生を否定する「虚言」

 だった・・・これに対して、生を肯定する「虚言」が必要とされる。

「「永遠回帰」のイデーは、生の一回性を利用して世界と生そのものへ復讐しようとする

 ルサンチマンの欲望を“無効”にするのである。


 ニーチェが「力」という概念によってなしとげた視線変更の核心は、

 「知覚」「認知」「認識」「客観」「真理」といった認識論的・機械論的概念の序列を、

 「肉体」「欲望」「快苦」「力の感情」「自我感情」といった欲望論的、エロス的概念へと

 “還元”することであった。



 生の「価値」の根拠はどこにあるか?

「それは彼岸にも、絶対者にも、世界や歴史の全体にもない。

 ただ個々の身体(=肉体)の「性欲」「陶酔」「生命感情」「支配欲」「恍惚」

 といったもののうちにある。したがって人間の世界は矛盾に満ち、苦悩に覆われ、

 危険きわまりないものである。・・

 それにもかかわらず、この世界の「あるがまま」を否認し打ち消そうとし反動へと

 向かうより、それを是認しそのようなものとして世界に立ち向かうことの方が

 いつでも必ず「生」にとってよい結果を生むのだ、と」





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最終更新日  2009.01.12 20:46:36
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