ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2021.08.25
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カテゴリ: 推理小説
ドリーム・プロダクションは、大阪府警から車で15分くらいのところにあった。近くにはテレビ局があり、ほかでもない大阪第一テレビだった。情報を固めてからテレビ局を攻める作戦だ。蜜柑は胸が高鳴るのを覚えた。黙示録のことを知っている仲村教授がいればいいのにと思ったが、いざとなったら真佐子に連絡を取らせればよい。
「鳥取県警と同じことを聞くかもしれませんが、お父様が殺害されるに至った理由に、本当にお心当たりはありませんか。どんな些細なことでもいいのです。この間、新型コロナの感染拡大で、エンタテ―メント業界が苦境に立たされている中で、東京のドリームプロダクションは、社名をアジア・エンタテーメントに変更し、御社から3人のスタッフを受け入れて再出発しました」
ここで、新社長の君川翔の表情がやや変わった。
「3人の移籍に関しては、かねてより移籍の希望があり、話し合いにより円満に移籍手続きか終わりました」
と、社長は平静を装って言った。
「理由はどういうことでしたか」
と聞くと、
「前々から東京で活躍したいと思っていた、ということだったので、こちらも引き留めもせず退職になったと、先代の社長から聞いています」
と、やや動揺した感じで答えた。蜜柑は何かあると思った。

と、蜜柑が詰め寄った。
「ヨハネの黙示録に関して、何かご存じではないですか」
 社長は明らかに動揺しているが、
「ええ、テレビの企画で、確かコロナ感染の前の年に、地元のテレビ局から、当時のワールド・プロダクションへ持ち込まれた企画と承知しています」
と、平静を装った。
「2019年ですね。どうしてご存じなんですか?」
と、蜜柑が聞くと、
「先代の社長から聞いたのですが、何かわけのわからない企画らしい、終末の世の中でもないだろうにと、こんなに景気がいいのにと笑っていました」
 移籍した山城さん、倉橋さん、それと江島さんはどんな方でしたか?」
「どんなと言いますと?」
 新社長は、わざとらしく聞き返した。

「山城さんは大学教授なので、政治・社会時評を主に担当していただきましたが、大阪にいるとやはり生の情報が入手しずらいので、本業の研究もそうで、霞が関の生の情報を取材したいのだと、つねづね言っていました。倉橋さんは月並みなのですが、モデル出身なので、役柄が自分の体に集中して、もっと幅広い演技力を身に着けるためには、仕事の幅を広げなければいけないということでした。江島さんは、雰囲気が昭和を連想させるものを持っており、所属する事務所に心当たりがあるというようなことを言っていました。移籍先のアジア・エアンタメのホームページに紹介がありますが、だいたい同じようなことです」
 と淡々として、意外に丁寧な説明をした。引き抜きに関しては、あまりわだかまりはないのだろう。落ち着きのなさは、ほかに原因があるのだろう。
「先代社長さんの殺害は、ご存じだと思いますが、横浜港での澤田研一さんの殺害と関係はないでしょうか?」
と、ズバリ核心を突いた。案の定、新社長の目線が左右に揺れた。刑事はそのような瞬間的な心の動きを見逃さない。しかし、相手の脳裏を走る実像までは覗けない。横浜港殺人事件について何か知っている、と蜜柑は思った。鳥取県警の聞き取りに対しては「何も思い当たるところはない」と答えている。先代社長の妻も同じように答えている。しかし、鳥取の白兎海岸で犯人と車で一緒にいたことが、横浜港殺人事件と何らかの関係があることは、妻にこの事件の新聞の切り抜きを作らせているところから明らかだ。
「お父様は、横浜港の事件の関係者をご存じだったのではないでしょうか。あるいは何か重要な事実をご存じだった。」

「私もその点はずいぶん考えて、社内のスタッフや母親に聞いてみたり、遺品の整理で何かないか注意したのですが、何もないのです」
と答えるが、視線が微妙に乱れている。蜜柑は、鳥取県警の瀧川刑事と同様、何か隠していると確信した。
「先代の社長さんは、横浜港の犯人に心当たりがあって、・・・それでその犯人はお父さまを呼び出した。そしてお父さまは何かを要求した。犯人は困りますよね」
と、真佐子が思いつきを言った。若社長の表情が変わった。
「いったい何を根拠に。わが社は、ドリームプロダクションとは何の関係もありませんよ」
新社長は怒った。蜜柑は、真佐子が言い返そうとするのを制した。
「いえ、警察はあらゆる可能性を考え、その背景を探るのが仕事なんです。これまで、御社とドリームは一緒に仕事をしたりということはありませんでしたか?」
と質問を変えた。
「ええ、その点はご指摘の通りで、このパンフレットに共同作品が載っていますからご覧ください」
と言って、蜜柑に分厚いカラーのパンフレットを差し出した。
(続く)
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最終更新日  2021.08.27 20:34:04


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