ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2021.09.26
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蜜柑は真佐子を見送った後、蛍雪大学へ電話を入れ、鮫島教授への面会を申し入れた。総務課の職員は、警視庁からの面談と聞いて驚いたが、緊張した声で、
「鮫島先生なら、今日は2限に授業があり、授業終了後昼休みに研究室にいらっしゃいます。ご案内しますから、総務課にお立ち寄りください」
と答えた。構えられると困るので、
「先生の専門的なお知恵を拝借したい」
と、申し入れた。夏からは、
「思い切って核心をつけ」
と指示があった。ただ、総務課を通したのは、神奈川県警から教授に面会申し入れがあったことが大学側に知られるわけで、波紋が広がることを読んだからであった。その波紋の中から思わぬ手掛かりが出てくることがある。
 蜜柑の頭の中には、ドリーム・プロダクションから東京のワールド・エンタテーメントへの3人の移籍者、山城、倉橋、江島の三人の中の、教授をしている山城に注目した。山城は中東の歴史が専門で、イスラム教に関する歴史的考察で、パリの大学から博士号を授与されている。イスラム教と言えば、その極端な思想にイスラム原理主義があり、アメリカニューヨーク貿易センタービルの爆破テロを企てた、オサマ・ビン・ラディンの背景思想だ。
 蜜柑は、まさかとは思うが、山城に関してはその思想的背景も調べる必要があると思った。これは、仲村教授に頼んだほうがよい。いやもう調べているだろう。当面は山城教授と鮫島教授との関係なのだが、ここは鮫島教授を直撃することで、明らかになると読んだ。


 鮫島教授は、銀縁の眼鏡をはずして蜜柑の質問に答えた。平然としている。
「黙示録の企画については、別に私が提案したのではなく、人類学的な観点から感想を申し上げたくらいです。山城教授と大阪第一テレビのスタッフが、よく私の研究室に来て雑談をしたものです。ドリーム・プロダクションでしたか、社長さんが殺害されたことは、私も新聞で読みましたが、何も心当たりがありません。ただ・・・」
と言って、鮫島教授は難しい顔になった。
「社長さんが、一度研究室に来たことがあります。名刺を置いて行かれて、私は受け取った日付を書いておく習慣があるので、これですが、2019年3月となっています」
蜜柑が身を乗り出した。
「山城さんと二人で来たと記憶しています。彼女から紹介があったので、黙示録について私が知っている限りで、詳しく話してあげました。」
 鮫島教授は、窓の外の木の葉を眺めながら言った。
「山城先生が、元のドリーム・プロダクションから、東京のワールド・エンタテーメントへ移籍されましたが、ご存じでしたか?」
と、蜜柑は意表をついて聞いた。鮫島教授の目線が一瞬乱れたが、平静を装って答えた。
「いえ、その点は知りません。大学の教師と芸能プロダクションとの関係は、私にはよくわかりません」
と、先手を打って答えた。

と付け加えた。
「山城先生は中東の大学へは行かれていたでしょうか?」
「はい、名前は忘れましたがイスラエルの大学に遊学されていたと聞いています。直接本人に聞いてください」
「山城先生は赤色の傘をもっていませんでしたか?」
「そこまではちょっと」

 蜜柑は、歌手の光岡瑠偉が、彼をはねた車に赤色のイアリングをしている女性が乗っている夢を見ると言っていたのを、ぶつけてみた。
「いえ、そのようなものは見たことはありません」
と、鮫島は落ち着いて答えた。大学の女性教師が、授業や研究関係で、イアリングを飾ることはまずないだろう。鮫島は、私生活での付き合いを疑われたと思い、早々に否定したのだろう。蜜柑は、仮説ではあるが、鮫島と山城が私生活でつながっているのではないかという想定で聞いた。案の定、鮫島は否定した。それは、山城教授が赤い傘、赤いイアリングやネックレスを身に着けることがあることを警察が知っていると、鮫島に知らしめることになったであろう。だとすれば、警察が赤い傘、イアリングなどの着用に気づいていることを、山城に伝えることになるとの読みであった。警察が疑っていると、山城に必ず連絡がいくだろうと、蜜柑は確信した。それは、山城に会ってからの楽しみだ。

 一方、真佐子は山口県の湯玉に戻り、勤務先の道の駅に顔を出し、秋野菜、果物までの端境期なので、引き続き休暇を取ることにして、仕入れの仕事もかねて、島根県境にある道の駅の友人を訪ねることにした。中年の男女が現れたこの道の駅周辺で、きっと情報が得られると考えた。大学は秋の授業が始まるまで、あと1週間ほどがある。感染が下火になってきたのでで、仲村を呼べばきっと来るだろう。いつか、仲村がこのあたりの海を眺めてみたいと言っていたのを思い出した。
「もしもし仲村さん。蜜柑さんからの連絡で、大阪のドリーム・プロダクションと蛍雪大学の鮫島教授との関係が分かったし、山城教授との接点も見えてきたようなの。私、県境の道の駅に現れた中年男女の女性は山城教授ではないかと…」
 真佐子は、仲村を誘い出そうと言葉を選びながら言った。まだ静岡にいた仲村は、
「真佐子さん、僕も黙示録を読みながらいろいろ考えましたよ。実は、個人的な研究で出雲へ行くので、用事がすんだら、山陰本線で道の駅の最寄りの駅まで行きます。真佐子さんは車ですか?」
「嬉しいわ。もちろん車よ。小さい車ですけど」
「それでは、急な話ですが、明後日、出雲で用事をしますから、その次の日でどうですか?」
「ええ、いいわ」
と答えて、真佐子は胸がどきどきしてきた。

続く





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最終更新日  2021.10.03 20:29:17


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