ひーちゃんのゼミナール 名古屋産業大学(現代ビジネス学科)・大学院環境マネジメント研究科)現代の社会・経済・環境・芸能・スポーツ・宇宙

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2021.10.03
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カテゴリ: 推理小説
仲村もまた真佐子に会いたい気持ちになっていた。でもそれは、愛とか恋とかいう青いものではなかった。枯れたものでもなかった。むしろ色で例えるなら赤ーしかし恋の炎の赤ではなく、青春時代の燃える赤だった。誰にも青春はある。青春の血潮は青春時代に燃えて炎となり、完全燃焼をすれば、やがて加齢とともに沈下し、降り注ぐ加齢と年輪の雨によって鎮火し、炎は消えるか燃えてはいても、かつてのような輝きを失う。
 燃え盛る炎の中で研究という仕事を見つけたのは、当時の社会状況もあったが、真佐子と付き合ったほんの2年間の出来事がそうさせたのだったが、いったん燃え始めた炎は、消えることはなかった。当時の社会状況を背景に、真佐子との出会いが上塗りをされて、その中で芽生えたものだった。
 しかし運命のなせるいたずらとはだれが言ったか、言い得て妙なる表現だ。数年前、島根県馬路の海岸で偶然真佐子を見つけ、仲村が真佐子だと、また真佐子が大学生のころの仲村だと分からないまま、次の日に鳥取砂丘で会う約束をして、再開したその時、馬路の海岸で会った女性から渡されたハンカチに真佐子という刺繡が縫ってあったことから、仲村は真佐子であると確信した。そして、真佐子も姉から聞かされていた仲村であると確信した。私が馬路の砂浜で鳴き砂の場所を探していると、背後から「あっちこっち」と声をかけ、砂を踏んで鳴き砂の音を聞かせてくれた。仲村は、親切な人だなという以上のことを感じ、真佐子は何か懐かしいものを感じたと言った。仲村は、車のナンバーを頼りに山口県を必死になって探し、ようやく真佐子を見つけた。
 その日からかれこれ3年が経過した。真佐子と仲村は鳥取、そして真佐子の生まれ故郷の島根の海岸で何度か会っていた。真佐子が中学3年、仲村が大学3年の頃であった。

 島根と山口の県境にある海岸や道の駅は、仲村の記憶にない土地ではあったが、この見知らぬ土地で、もう一度過去を眺めてみることが、青春の灯を絶やさないように燃やし続け、真佐子の記憶を取り戻す機会になるのではないかと考えた。
 真佐子は、二十歳までの記憶を失ったまま、早くに結婚し亭主と死別し、亭主の母親と子供、孫とともに暮らしているのだ。真佐子と別れなければならなくなった真の原因は何だったのか、真佐子にとってもそのことが命の炎を燃やしつづける証になるのだった。二人は別べつの理由から、秘密の解明に心血を注いでいるのだった。それが二人の絆だった。
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最終更新日  2021.10.06 20:59:13


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