エタ-ナル・アイズ

エタ-ナル・アイズ

2026.10.03
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「ん…」

 伊吹が甘く鼻を鳴らして、毛布の中へ潜り込む。

 京介はパソコンを閉じた。

 それぞれにメールを返信し、特に元子には感謝と月曜日まで休む旨を伝える。

 思い立って、明にもメールを入れた。

『夜分にごめん。今日から月曜日まで伊吹さんは僕のマンションに泊まると思う。ご両親が心配されているだろうから、伝えてあげてくれる?』

 返信はすぐにあった。

『有沢さん、亡くなったって? 美並、大丈夫?』

『今のところ崩れてないけれど、逆に心配している。休ませてあげたい』

『助かる。ありがとう』

 起きているのだから、普通なら電話に切り替えそうなものだが、メールで送ったことに察したのだろう、明はメールで応じ続ける。

『京介も大変だよね。いろいろひどいこと言われてる』

『あれだけのことがあったから仕方がない。月曜日には桜木通販の社長に就任する。そこからが修羅場かも。伊吹さんに実家に帰るように勧めようか?』

 そうだ、明日にでも実家に帰った方が休めるかも知れない。

 ちょっと寂しい気持ちになりながら、また眠る息吹を見つめていると、携帯が震えた。

『いや、京介の側で休ませてやって』

 明からの返信に目を見開く。

『美並が一番安心するだろうから』

「…明くん…」

 思わず唇が綻んだ。

『京介は唯一美並の願いを叶えた男だから』

「……」

 返信を忘れて文面に見入る。

『事件のこと、いつか話してくれると嬉しいけど、美並が今そこに居るってことは、ちゃんと解決したってことだろ?』

『美並が自分の力を使うって決めてやり切ったってことだろう?』

『それで京介も美並も無事だったってことだろう?』

『美並はきっと喜んでるよ、京介を守れて』

『ほっとしてる、京介が無事で』

『京介は今、幸せなんだろう?』

 一瞬、押し寄せた感情で胸が詰まった。

『幸せだよ』

 文字を押す。

『伊吹さんは今眠ってる。有沢さんの通夜に出てシャワー浴びて着替えたら、そのまま寝落ちゃって起きない』

『僕が髪を拭いても起きない』

『鍋焼きうどん買ってきたのに今夜は食べられそうにない』

『けれど幸せだ』

『幸せ過ぎて胸が痛い』

『君のお姉さんは最高だ』

 しばらく返信は戻らなかった。

 眠ったのか、そろそろこちらも伊吹を運んで眠ろうかと思ったあたりで、返信が届く。

『当たり前だ、美並だぞ』

 ふいに視界に胸を張る小さな男の子の姿が見えた。

 笑い出す、視界が滲む。

 よく頑張ってくれたよ、明。

 よく頑張って、この人を守り抜いて来てくれた。

 君のおかげで僕は今、伊吹さんをこの手に抱ける。

「…ん…? …京介?」

 もそもそと伊吹が体を起こす。

「私…眠ってました…?」

「うん、眠ってた」

『お休み。そのうちにまた出向く』

 明に最後のメールを送って京介は伊吹を抱き寄せる。

「月曜日に社長就任だって」

「…早くなったんですね」

「それまで休んでいいってさ。伊吹さんも」

「私も?」

「社長がお疲れ様って送って来た」

 首を傾げる伊吹を膝の上に抱き上げた。

「そう…」

 まだ寝ぼけているのか、ふんわりと肩に頭を乗せてくる伊吹の柔らかさに目を閉じる。

「美並?」

「はい」

「結婚式、いつにしよう」

「…そうですねえ…」

 今からだと1年後? 『ニット・キャンパス』の準備もあるし、同時並行で進めても夏以降でしょうか。

 淡い囁きが首筋に触れる。いつもなら際どいところが疼くのに、今夜は京介もぼんやりしてくる。

「また明日考えようか」

 美並を抱えたまま立ち上がった。寝室へ向かいながら囁く。

「今夜はもう一緒に寝よう?」

「はい…」

 頷きながらすぐにうとうとし始める伊吹に、小さく笑う。

「おやすみ、美並」

「おや…す……み……なさ……」

 い、の声は京介の唇の中で甘く溶けた。

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Last updated  2026.10.03 00:00:08
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