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2016年05月05日
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 はいつくばっていた。

 わたしのほかにふたりいた。ひとりはわたし(キリオ)とおなじ三十前後の男性(ミズル)、もうひとりは六十過ぎの初老の男性(サイゾウ)だった。
 なぜか三人ともぼろぼろの青いツナギを着ていた。
 とにかく状況を把握すべくはいつくばった。
 十字の方向にそれぞれ非常灯のような小さい赤ランプがあり、かろうじて自分のいる場所の様子がみてとれた。
 ここは、約五メートル四方、高さ三十センチほどのコンクリートの部屋(と呼べればだが)だった。寝返りはうてない。{傷}(いた)んだりんごやバナナなどのくだもの、腐った魚、カビの生えたご飯など、ありとあらゆる残飯、そして液状およびゲル状の汚物が散乱し、悪臭を放っていた。
 対面する壁(といっても高さ三十センチほどだが)の中央、赤ランプの近くに、床と天井をむすぶ小さな滑り台のようなものがあり、天井には扉らしき切れ目があった。その扉らしきものには取っ手は無く、どんなに押しても動かなかった。また、滑り台のようなものがある壁の直角方向の二枚の壁の中央(赤ランプの近く)の手前の床にも、それぞれ扉らしき切れ目があったが、こちらもどんなことをしても動かなかった。そしてそれぞれの扉らしき箇所には、以下のようなことが、黒い極太文字で書かれてあった。
 滑り台の上の天井の扉らしき箇所の、いっぽうには『ここから上へ』と対面するもういっぽうには『上からここへ』、直角方向の床のそこには『ここから下へ』と『下からここへ』。



「一度シカ言ワナイ。良ク聴ケ。
 上ヘ行クモノ、下ヘ行クモノ、ココニ残ルモノ、ソレゾレヲ決メロ。
 上ハココヨリ高イ。三十五センチアル。下ハココヨリ低イ。二十五センチダ」

 そして天井と床の扉がそれぞれ静かにくちをひらいた。
 三人はあたまを寄せて話し合った。そして三人とも上へ行くことにした。
 そうと決まれば急げや急げ。ミズル、わたし、サイゾウの順に一列になり、『ここから上へ』の扉にむかった。
 その扉は、ミズルが通過した時点で無情にも閉じた。わたしは扉に押されるかっこうになり、ひじで滑り台を滑って、両足でサイゾウの頭頂部を軽く蹴った。
 迷うことなく、すぐにわたしはサイゾウのあたまを、手探りならぬ足探りでねらいを定め、七、八発蹴飛ばし、反転してジャブぎみパンチを二、三十発おみまいして気絶させた。そしてサイゾウの両足の裏に手をかけ、直角方向の壁の手前の『ここから下へ』の床扉までどうにか押していき、そこから下の部屋に落とした。直後、扉は閉まった。
 わたしは精魂使い果たし、しばらくその場で休んだ。

 しばらくすると、むこうの壁前の『下からここへ』の床扉と、直角方向のいっぽうの壁前の『上からここへ』の天井扉が開き、それぞれから勝者と敗者が姿をあらわした。
 三人ははいつくばって、自然に中央に集まった。おどろくことに、上からやってきたのは、ついさっきまでここにいたミズルだった。彼の顔は金魚のランチュウのようにはれ上がっていた。わたしはちょっとおかしくなってプッと吹いた。


 こうしていろいろなバトル、駆け引き、騙し合いを経て、下へ行ったり上へ行ったりを繰り返し、わたしはいま、高さ三.五メートルの部屋にいる。 
 ジャンプしたって天井に手が届かない。広々としていて気持ちいい。この部屋にいるのはわたしひとり。ふしぎなことに上からはだれもやってこない。扉や滑り台はちゃんとある。
 下から来るやつは、床扉が開いて顔がでた時点で、おもいっきり蹴り飛ばして落とす。先手必勝だ。

 だいぶながいことここにいるような気がする。このままずっとここにいてもいいとおもっている。上に行ってもたいして変わらないだろう。しかし気になる。上のやつはどうしているのだろう。
 滑り台をのぼり、天井の『ここから上へ』の扉を押してみる。それは意外なことに、軽い力で、まるで自分から開くように開いた。


 そこは──
 な、なんてことだ!
 気を静め、上に行く。わたしは最上階にたどりついたのだ。
 そこには天井は無かった。屋上だった。
 空はどす黒く、ところどころ赤い雲がとぐろを巻いていた。
 端に歩み寄り、下をみた。
 とたんにおかしさがこみあげてきた。
 そして両手をひろげ、笑いながらダイブした。






<ほっと一句>

雨どいの水を飲んでる雀かな







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最終更新日  2016年05月05日 13時32分13秒
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