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前回までのあらすじ
中華系ファミリーに愚弄されるインド娘。
その現場を目撃したゆえじがとった行動とは???
感動と涙の最終章。
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中指を突き立てる中華系父。
何のことか分からず、楽しそうに遊ぶインド娘。
凍りつく私。
私の視線と、中華系父の視線が絡み合う。
私は、凍りついたまま。
そして、彼もまた
凍りつく。
そして
私は、ゆっくりと
視線を、
外す。
中華系父もまた
ゆっくりと視線を
落とす。
機内のシートベルトサインが点灯する。
まもなく、香港に到着する。
はす向かいに、真っ赤な口紅を塗った
客室乗務員が座る。
彼女は笑顔でインド人ファミリーと私に話しかける。
「あなた、よかったわね。こんなに親切な人が隣に座ってくれて。
この便は忙しいから、私たち客室乗務員もなかなかお手伝いできなくて
心苦しいわ。でも、このレディのような人がいてくれると、本当に
私たちもうれしい。べいびぃ。素敵なジャパニーズレディに
ありがといいなさいね」
それを聞いて、インド母は
「まあ。日本の方でしたか。てっきりシンガポールの方かと。本当に
ありがとうございました」
客室乗務員はこう続ける。
「お客様の中には、色々抱えて空を飛んでる人がいる。
仕事がうまくいかなかったり。不幸があって、絶望している人もいる。
子どもがうるさいって思う人もたくさんいるし、その理由も分かるの。
でもね。そこで、人の価値って分かるのよ。
私たちには、分かるの。」
そういって、その中華系の客室乗務員は、私に微笑む。
私は、照れるやらばつが悪いやら。
ふと視線に気づく。
中華系父からの。
彼が、
私を見ていた。
まっすぐな瞳で見ていた。
私は、その視線からまた
目をそらす。
「それにしても、あなたもよくやったわね。シンガポールから香港まで、たった一人で
子どもを2人つれてフライトするなんて。」と私はインド母に言う。
すると客室乗務員は
「なにいってるのよ!彼女は、インドからシンガポールに飛んで、シンガポールから
香港に飛んで、そこから、シドニーに飛ぶのよ!」
「ぱ、ぱーどぅん????」
母は飛ぶ。インドからシンガポール。シンガポールから香港。香港からシドニーへ。
ベビーはついていく。限りない数のミールを食べ、ダディ、ダディと何回も叫びながら。
限られた旅費を節約するために、経由便に経由便を重ねて。
タッチダウン。
私はカーディガンを羽織って、ベイビーを今一度抱き上げる。
「ダディという言葉が、何を意味するのか、分かるといいね。バイバイ」
私は心の中でつぶやく。
インドファミリーと別れを告げ、私は一人
機内を後にした。
英語と、普通語と、広東語のアナウンスを全身にいっぱい浴びながら。
完
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