戦国ジジイ・りりのブログ

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2016年03月06日
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カテゴリ: 城(東北・関東)
さて、御台ちゃまのお食事は10人前用意される。


御広敷の御膳所で食事の用意が整うと、まず広敷向の役人である
「御広敷番頭」と「御用達添番」の男性役人が一箸ずつ味わう。
広敷役人によるお毒見です。

御台ちゃまのために丹精込めて作られた豪華な、
しかもできたての温かいものをまず賞味できるので
のんきな見方をすればこれも「役得」ですが、命をかけたお役目だし、
もしこの後・・・特に御台ちゃまに何かあれば責任は重大なので、


しばらく2人はそのまま様子を見て、お互いに何事もないようであれば
第1ダンジョンクリア。
残り9人分を、今度は御殿向の御膳所へ運び、
そこでも当番の中年寄が1人前消化して無事であれば、第2ダンジョンクリア。

それが済んでから御台ちゃま用の華麗な食器に盛られ、控えの部屋まで運ばれる。
そこから御台ちゃま付きの高級女中である御中臈(おちゅうろう)に渡され、
ようやくお腹をすかせた御台ちゃまに供される。

毒見にはそれなりの時間がかかるものだし、
貴人のお部屋から遠い所で作られたお食事はこうした様々な前段階を経るうちに
すっかり冷めてしまい、熱いものを食べたことがない諸大名などは
みな猫舌だったともいわれるが、御台ちゃまのお食事の場合は


ま、こういう色々な手順があるから好きな時間に勝手に起きることは許されないんだろうな。
みんなの手順が狂うからね。


それで、御台ちゃまのスケジュールの方に戻りますが、
2回のお毒見を経て持ちこまれるのはつごう8人前。
いくら御台ちゃまとはいえ、さすがに食事まで「あ~ん」して食べさせてもらう訳ではなく、


お膳には魚が付いていたと前回紹介しましたが、
何でも旬のものが出たという訳でもなく、脂の多いイワシやサンマなどは除外されたといい、
また「コノシロ」は「この城」に通じ、「この城を食べる」ということになるので
これも縁起が悪いとされて出されなかったそうな。
天ぷらがイエアスの死因だったため江戸城では食されなかったというのは
有名な話ですね。

で、箸でつかんでそのまま食べられるような料理は御自分でそのまま食べたけど、
焼き魚や煮魚などのちょっと手を加える必要がある料理については、
介添えの高級お女中が骨を外して身をほぐしてやる。
それを御台ちゃまが一箸か二箸食べると、お付きが

「おかわり!」

と言って新しいものに替えさせる。
次のお魚が出されるとまた同じようにして、全部食べないうちにおかわりになる。

んじゃ~、そうやって「わんこそば」ばりに8人分おかわりをし続けるのかといえば
そうでもなく、おかわりは3回までと決まっており、しかも3度めのおかわりには
手を付けないならわしだったそうな。

なら、食べ途中でおかわりされた料理や、おかわり対象にならなかった料理は
どこへ行くのか?
これは女中たちの胃袋に収まったんだと

10人分調理された食事のうち、御台ちゃまは満足に1人前のお食事をされたのか・・・
そもそも、合格食材として調理に回された食材は
買い付けた食材や献上された食材のうちのごくわずかなものだったから、
いかに安く、あるいはタダで手に入れたものとはいえ
相当ムダなことをしていたのがわかる。
ま、ムダと言っても別に捨てた訳じゃなく、
収まる胃袋が男女の役人にスライドしたというだけだけどね。

大奥で夜を過ごさなかった日の将軍様は、御台ちゃまより少し早い時間に
中奥でお1人で朝食を召し上がる。
が、小姓に髪を結ってもらいながらのお食事なので、
あんまり消化によろしくなかっただろう。
ものの本によると、御台ちゃまもお食事をしながら髪を結ってもらったともいうけど、
ここではその説は採用しないでおきます。


お食事が済むと、御台ちゃまはお化粧をする。
これには洗面と歯磨きも含まれ、歯はご自分で磨くが顔は女中に洗ってもらう。
お化粧自体は御台ちゃまがご自分でされ、白粉をつけてお歯黒をし、紅を引いて眉を描く。

お化粧の後で、髪を結ってもらう。
髪型は身分と立場に応じて結えるものが決まっており、
御台ちゃまの髪型のうちで最も格式が高いのが儀式の時に結う「おすべらかし」。

それからお風呂に入る。
御台ちゃまのご入浴は基本的に朝風呂の1回で、
将軍様が奥泊まりをされて御台ちゃまがお添い寝をされる日は夕方にも入ったそうな。

お風呂はサウナではなくお湯を使うタイプのお風呂で、
御目見得以下の下女がお湯を担いで運び、水とお湯をちょうど良い温度にブレンドした。
お風呂場でも、御台ちゃまはほとんどご自分では何もしない。
お着物を脱がせる役、お身体を洗う役などがそれぞれいて
み~んな女中がやってくれる。
お風呂から上がるとバスタオルでぱたぱた拭くのではなく、
浴衣を何度か着替えて汗を吸わせた。

身を清めた後で、正装にお召し替えになる。
正装といっても儀式用のではなく、日常的な正装ということだけどね。
朝からぱりっとして何をするのかといえば、将軍様の奥入りを待つのだ。

将軍様は、大奥と中奥にそれぞれご寝所を持っている。
人によっては奥泊まりの頻度が高かった将軍様もおられるようだけど、
中奥で眠る日もあった。
奥泊まりをした場合でも、将軍様は一旦中奥で身じまいを整えてから再び大奥へ入る。
戻ってきた将軍様は、裃(かみしも)に二本差しという正装をしているので、
御台ちゃまもそれに応じた正装で将軍様を待つというわけ。

将軍様の奥入りというとたぶん一般的には子作りのためという印象が強く、

「オイオイ、朝から子作りかよ~!?」

なんて早合点をする人もいるかもしれませんが、
将軍様の朝の奥入りは毎日のことで、正装の必要があるおつとめのためだった。

前々回、大奥がハーレムであるという見方はあまり正しくないという
山本博文氏の文章を紹介してますが、それは大奥がこういう日常行事を
担っているからだという点も含まれているからじゃないかと思う。

将軍様が朝の奥入りをするのが、午前9時頃。
お互いに正装をした将軍様と御台ちゃまは、朝の挨拶をしてから一緒に御仏間へ向かう。
御仏間はその名の通りのお部屋で、部屋の四面には金砂子に金泥で蓮が描かれており、
奥の二尺ほど高い場所に黒塗りの仏壇が置いてあって、
中には歴代将軍の位牌が安置されていた。
ここでお2人は毎朝そろって拝礼をする。
代々の先祖供養のために、お2人はきちんと正装する必要があったのだ。
もし将軍生母が大奥にいる場合は、その後で挨拶に行った。

それが済むと、御小座敷へ移動して御目見得以上の女中たちの挨拶を受ける。
御小座敷ではなく、将軍様が大奥へ入るルートの御鈴廊下だったともいうけど、
ともかく挨拶を受けた。
これを朝の惣触(そうぶれ)といい、御台ちゃまがこの時着ている衣裳を「惣触召し」という。

惣触が済むと、将軍様は中奥へお戻りになる。
御台ちゃまはぱりっとした惣触召しからゆったりとした「お昼召し」に着替えて
お昼食をとる。
食後にはお菓子も出たそうな。

同じ頃、将軍様は中奥で普段着に着替えて武芸の鍛錬やお勉強、
老中との面談や大名を謁見したりとその日ごとに色々された後で
中奥でお昼食をとる。
お昼食の後は政務を執ったり読書をしたり、能を楽しむこともあった。

それぞれの時間を過ごして午後2時頃になると、また将軍様が大奥へやってくる。
朝と違って将軍様はリラックスした着流し姿で来られるものの、
御台ちゃまは将軍様をお迎えするためにまたお召し替えになる。
そしてお2人でおしゃべりしたりお菓子を食べたりしてくつろいでお過ごしになる。

しばらくすると、将軍様は中奥へお戻りになる。
その後、夕方までの御台ちゃまは娯楽をしたり散歩をしたりと自由に過ごされる。


んで、午後6時頃お夕食。
将軍様が大奥に入っている時には、お2人でお召し上がりになる。
お食事は魚料理が中心で、将軍様は御酒を召しあがることもあったそうな。

夕食のあと、御台ちゃまは「お夕召し」にお召し替えになる。
前回は書きませんでしたが、お朝食の前か後に1度「朝お召し」に
お召し替えをしているようで、ここまでに何度もお召し替えをして、
その都度お化粧直しもしている。


将軍様が御台ちゃまと夜を共にする日は、事前に連絡があるので、
御台ちゃまは2度目のお風呂に入っておく。
将軍様が奥泊まりをする日は必ずしもお夕食を一緒にしたという訳でもないようで、
お夕食を別々にとった場合には将軍様は午後8時頃大奥へおなりになる。
その場合は、しばし御台ちゃまがお茶や御酒でおもてなしをしたようだけど、
実際にこまごまと動いてくれるのは介添えのお女中たち。

就寝前には「お寝召し」に着替えて、午後10時頃ご就寝。
将軍様と一緒の時は、大奥にある将軍様のお部屋で夜を過ごすが、
お1人の時は御殿向にある御自分のお部屋で寝についた。


おおむね、これが御台ちゃまの平時のスケジュール。
惣触召しとお昼召しは毎日違うものをお召しになったようだから、
なんともぜいたくなことでございます。


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最終更新日  2016年03月06日 23時35分21秒


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