「先輩、何してるんですか?」
新人が後ろを振り返った。
秋雄は後席の足元を見ながら、何かを転がしている。
「掃除」
「今ですか?」
「今」
「でも、さっき洗車したばっかりじゃないですか」
「洗車したから汚れない、ってわけじゃないだろ」
新人が覗き込んだ。
「髪の毛?」
「それと、細かいゴミ」
「気になります?」
「気づいたらな」
秋雄はコロコロを何往復かさせた。
「でも、これくらいなら掃除機出すほどでもないですよね」
「だからこれなんだよ」
「コロコロ?」
「そう」
「車用の特別なやつですか?」
「いや、普通のやつ」
新人が少し笑った。
「普通のでいいんですね」
「十分だよ」
秋雄はカーペットの端をもう一度転がした。
「営業中って、わざわざ洗車場に戻るほどじゃないけど、ちょっと気になる時あるだろ」
「ありますね」
「お客さんを降ろしたあととか」
「はい」
「次の仕事まで少し時間がある時とか」
「はい」
「そういう時に、サッとやる」
新人は頷いた。
「大掃除するんじゃなくて、気づいたところだけ?」
「そういうこと」
「それなら時間もかからないですね」
「掃除って、溜めると面倒なんだよ」
秋雄はコロコロを元に戻した。
「気づいた時に少しやっておけば、それで済むことも多い」
新人は後席を見た。
「確かに、さっきよりきれいですね」
「だろ」
「先輩、そのコロコロどこで買ったんです?」
「どこでも売ってるよ」
「それじゃ記事にならないじゃないですか」
秋雄が新人を見た。
「お前、いつから編集者になったんだよ」
新人はスマホを取り出した。
「あ、ニトムズの公式楽天市場ありますよ」
「あるんだ」
「コロコロ、本家じゃないですか」
「じゃあ、それでいいんじゃない?」
新人が画面を見ながら笑った。
「今回は迷わず楽天ですね」
「別に俺が売ってるわけじゃないぞ」
「分かってますって」
今回、先輩の道具箱から出てきたのはこちら。
ニトムズ公式楽天市場のコロコロ。