鴉の巣

鴉の巣

PR

2005.12.04
XML
カテゴリ: 小説・マンガ
私は文庫化になった高村作品は全部、ハードカバーも小説は『晴子情歌』『新リア王』以外は持ってます。
ほとんどの作品は買ってすぐに読んでたんですが、『地を這う虫』だけはなぜか六年ほど放置していました。

何が原因か・・・。

多分何かの紹介で「警察を退職した初老の男たちが主人公の五編」と書いてあったのを読み、
ああ、引退した年寄りの話なんだなぁ、なんか辛気臭いぞ。
とでも思ったんだと思います。
だって、初老ときくと五十代を思い浮かべません?
でも実際読んでみると、全く違うし。

何らかの理由(身内の不祥事等)で警察を辞めた男たちの話、が正解です。

オビには「魂の救済を求めて敗れざる男たちの世界」とあります。
敗れざるってことは負けてないってことですよね。
これを敗れ去るって読んだら全然違う意味になります。
まだ若い私には敗れ去った初老の男の引退後の生活になんか興味はありません。
おそらく、これが六年間も放置した理由です。

内容は面白かった、この一言に尽きます。

お気に入りは「父が来た道」で、オビから抜き出すと、
「代議士のお抱え運転手が覗く闇。青年の抱え持つ恩讐の果て」
とあります。
主人公は父親が選挙違反で逮捕されて警察を退職した三十過ぎの男。
父を刑務所に送った大物政治家の運転手をしています。

主人公の元刑事はその行動メモを元同僚の刑事に渡し、さらにそこから読み取る情報を政治家に渡すという、
いわば二重スパイのようなものです。

短編なんで、ストーリーは政治家がちゃっかりと捜査から逃れ、
主人公はそのまま運転手を続けるというところで終わります。
タイトルに「父」とありますが、まだ刑務所にいるので直接的に父親が出てくる場面はありません。


最初は政治家に罪をかぶせられて服役したかのように見えていた父親が、
実はその政治家となにもかも通じ合った上で服役して、
出所の暁にはそれを踏み台にする、政治や事業への野望を持っていたことを知ります。
さらに、その際には息子を右腕にしよう、そのためには真面目すぎる息子をどうにかしなけでばと、
その政治家に鍛えなおしてもらうように依頼していたわけです。

このような経緯を経て、それでも政治家の運転手を続けることを選びます。
その心のあり方が興味深いと感じました。





お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2005.12.05 03:42:12
コメント(0) | コメントを書く
[小説・マンガ] カテゴリの最新記事


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Keyword Search

▼キーワード検索

Profile

白鴉620

白鴉620

Favorite Blog

銀色猫の部屋 sonnchanさん
いがぐりの読んだ本。 いがぐり602さん
Dounut Dreams ゆんろんさん

Comments

兄貴@ Re:言葉がありません(09/06) まだ若かったのにねぇ・・・。
ゆんろん @ Re:モトGP(06/06) もうバイクに乗ってテストしたみたいです…
兄貴@ Re:唐招提寺(06/06) 奈良も色々見る所があって良さそうですね…
兄貴@ Re:モトGP(06/06) む・・・骨折したんだ・・・。 と言うか…
兄貴@ Re:indy500(06/03) ありゃ・・・。 もてぎではクラッシュせ…

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: