買書とつんどくの日々

買書とつんどくの日々

2012年08月25日
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白妙の生まれた地は、香島神宮を囲む高台にあった。東は大海、西は香取流海が広がり、水の彼方から陽が昇り、水の彼方に日は沈んでいった。そのあたりの山や谷のあちこちに散らばる郷のひとつが日枝郷(ひえだのさと)だった。谷間に流れる小川や湧き水が草木を潤し、春には野の花、秋には紅葉の錦が郷を包みこんだ。
白妙は、古より日枝郷で太占に携わっていた氏の生まれだった。今でも古老が、鹿や猪の骨、亀の甲羅を焼いて、占で大事を決めていた。白妙の氏には、焼かれた骨に入る罅や黒い焦げ跡から、お告げを読み取る才のある者が多かった。前の祖のさらに前の祖が太占をしていたころにできた香島神宮に、白妙の氏が仕えるようになったのは、そんなわけだったと聞いている。さらに、特にその才の閃きを見せる童は、神事に携わる阿礼乎止売や阿礼乎止古として召されるようになった。
兄の皁妙が八歳のときに香島神宮の阿礼乎止古となったのは、自然の成り行きだった。
阿礼とは、ひらひらと翻るという意味だ。神の宿りたまう阿礼の木と共にひらひらと心を翻し、神のお告げを言葉として紡ぎだす。それが神宮に仕える阿礼乎止古と阿礼乎止売の役目だった。
(坂東真砂子さん「朱鳥の陵」P48)


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Last updated  2012年08月25日 10時10分52秒
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