灯台

灯台

2025年11月30日
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陽だまりの窓辺。
角度を変えるたび、埃の粒が金色の航路を描く、
午後二時過ぎ。
光の粒子は、
ブラウン運動のように不規則にきらめく一瞬の星座。

わたしが座る丸テーブルの天板は、
マホガニーの木目の中に、
幾層ものリングマークが重なっている。

ミルクティーの香り。
蒸気の層に、乳脂の丸み、茶葉の力強い渋み、
そしてごく微かなキャラメルの焦げ付きが溶け合っている。
銀のティースプーンがカップの縁に触れると、
高い音が短く跳ね、
シュガーキューブはゆっくり角を失い、琥珀色が柔らかく濃くなる。
表面張力の膜に、窓の空と街路樹の先端が反転して映る。

誰かがドアを開けた際の小さな風の息で、
その水面の輪郭が一瞬だけ歪み、
すべてが溶け合う——幸福。

レコードの針——黒い円盤に降ろす角度が慎重に決められ、
最初の一瞬だけ、紙の袋の静電気が頬を撫でる。
スピーカーの布地をくぐった音は、午後の空気に薄く散り、
トラックのはじまりのわずかな揺れが、窓辺の影を撫でる。
急がないリズム——店内の時計は秒針の音を隠し、
代わりにドアベルの微かな揺れが、分の区切りを担当し、
肩の力が、ゆっくりと抜けていくのを感じる。

砂糖壺の蓋の欠け、ミルクピッチャーの注ぎ口の白い乾き、
紙ナプキンの角度、箸箱の上の古いポラロイド、
レジ横の募金箱に入った硬貨の冷たい重み。
窓際の観葉植物。
この穏やかな進行表の上で、
わたしの物語はゆっくり、確実に、
静かな呼吸を続けている。







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最終更新日  2025年11月30日 13時08分10秒


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