2013/12/01
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『CRONOUS』 ~黙示録~




「ただいま!」

「あ、トワさんお帰り」

「おかえりなさーい」

「お帰りなさい」

リビングに帰ってきたトゥイージーにカラー、八咫、アデレードが声をかける
そして彼女たちはまた今までやっていた行動に戻る
カラーは爪の手入れアデレードは読書…

トゥイージーは相変わらずのメンバーの行動に苦笑いを浮かべた

「で…どうだったの?」

カラーは手入中の爪から視線を外す事なくトゥイージーにそう聞いた

「うん…まぁ初日にしてはまずまず…と言ったところかな」

「何回死んだの?」

「そうだな…20回までは数えていたが…どうだろう、おおよそ50回…かな」

「それはそれはご愁傷様…で、そのゾンビさんは?」

「現在搬送中…もうじき着くだろ」

「平原ってあそこでしょ?」

「そうそう」

「ほぼ1日…か、そりゃ歩けなくもなるわね…」



そんな会話をしつつもカラーは終始「爪」から視線を外さなかった
トゥイージーも同じく…どうにも八咫のやっている解体作業が気になるらしく
その光景を見ながら受け答えをしていた

「で…見込みは?」

カラーはそう聞くと手入れをしていた爪にフッと息を吹きかけた



「でしょ?」

その時…カラーとトゥイージーの会話に

「目?」

と言ってアデレードが割り込んできた

「動体視力…とでも言ったらいいのかな…とにかく『見切る』ことに関しては恐ろしいほど優れてる」

「良い事じゃないの?」

「普通ならね…ソロで行動するならばあの能力は確実に彼女を助けるだろうね…」

「???」

アデレードはトゥイージーの回答に首をかしげる

「彼女の場合は…その後が問題なんだわ」

「反撃態勢に体が反応するんでしょ?」

「さすが…よく見てるね」

「それも良い事なのでは?」

「意識的な場合…ならね」

「????」

アデレードはまたしても首をかしげる

「彼女の場合…見切り、判断、反応、動作…おそらくこれがセットなんだわ」

「つまり…攻撃に転じようとする癖がある…と、そういう事?」

「そういう事…それも無意識、突発的な状況下でそれが出る癖があるんだわ…格下や同等クラスならそれは良い事なんだがね…格上相手にそれをやるから回避が遅れる…それもイレギュラーな事態が起こった時ほど咄嗟にそう動く」

「いい位置に反応するんだよね…誰が教え込んだのか…あの動きをするバルキリーに心当たりがないんだよねぇ」

カラーはそう言いながら手入れをしていた爪にコート剤を塗り始めた

「一瞬考えたんだ…彼女をトップに据えたとするならどうだろう…とね」

「フォーメーション?」

「YES!もしもそういう体制下の元で戦っていたのならね…あの癖も合点がいく…彼女と彼女にその動き方を教えた者、そしてそれを補佐する者、援護する者…そういったフォーメーションを組んだ組織…」

「心当たりは?」

爪に息を吹きかけながらカラーがそう聞いてくる

「戦術的に全く無いとは言えない…が」

「が?」

トゥイージーはそう言ったところで何か思案し始める
アデレードとカラーは顔を見合わせながら首をかしげる

「いや…忘れてくれ」

「は?」

「えええ!」

「あはははは…疲れてるのかもな」

トゥイージーはそう言いながらキッチンへと消えた

「できた!…解体完了♪」

「ちょ…」

「無残…」

八咫は目の前の複数の帯と化したバームクーヘンを満足げに見つめた
カラーと八咫はそれに苦笑いで答えるしかなかった

「つまり…アレですね…思い浮かんじゃったんですよ」

「へ?」

「今のお話です…」

「き、聞いてたの?」

綺麗に解体されたバームクーヘンを見つめながらアデレードがそう聞くと

「ええ♪」

と、八咫は微笑んだ

「で、何が思い浮かんだの?」

「ですから戦術です…今私たちがあまり必要としていない、近接バルキリーをトップに据えた形…」

「まさか八咫さんに戦術士の才があるとはね…」

そこにキッチンからトゥイージーが出てきて口を挟んだ

「才というか…なんとなく思い浮かんだだけです」

「それを才っていううんだよ…普通は思い浮かばない物さ…」

トゥイージーはそう言って定位置のソファーに腰を下ろす

「で?…どんな形を思いついたわけ?」

「え?…それはですね…」

そう言うと八咫は近くにあった紙に図を描きながら説明し始めた

「何これ…役に立たないじゃん…っていうかこれじゃ一点集中の攻城強襲か相当タフな単体への戦術でしょ?」

「でもね…全く同じ戦術を俺も思い描いたんだ…」

「え?」

「この戦術が可能ならば…あるいはあの時も…ってね」

「あの時って…まさか…」

「そのまさかだよ…そしてもしももう一度そういう場面が訪れたら絶対に必要になる」

「で、でもさ…それを見据えて行動してるギルドなんて…」

「まず今は存在しないだろうし…心当たりがない…だから彼女の場合は天然であんな突飛な行動に出る…そんな癖がある…そういう事じゃないかな?」

「なるほど…まぁ、居ても不思議じゃないよね…持って生まれた本能的な才能…」

「そそ」

「持って生まれた本能的な才能…かぁ」

八咫はカラーとトゥイージーの会話を聞いてそうつぶやいた

「おお?自覚ですか?」

考え込んでいる八咫をからかう様にアデレードがそういう
しかし八咫は何やら思案を続けていて反応が無い
そしてしばらくの沈黙が続いたと思ったらポンっと手を叩き

「白さんの『変態』もそれですかね?」

と聞き返してきた

「・・・・・」

「・・・・・」

「・・・・・」

3人はそれを聞いて顔を見合わせる

「あれは…まぁ、それに該当するかもな…っていうか今それを考えてたの?」

「はい♪」

トゥイージーの言葉に八咫は満面の笑みで答えた
そんな八咫を見つめた3人はほぼ同時に八咫の解体したバームクーヘンに目を落し
そして再び八咫を見る

「???」

そんな3人を八咫は不思議そうな表情で見返しながら首をかしげる

「まぁ…これも才ってやつか…」

「きっとそうね…」

「うん」

3人はそう言うとまた各々の行動にまた戻った
八咫は眉間にシワを寄せて首を傾げ思案するも数秒後には解体したバームクーヘンを元の形に戻すという作業に取り掛かり始めた
そして数10分後…見事なまでに元の形に戻すとそれを満面な笑みで見つめながらキッチンへと持って行った
そこへザンジオとアイナを担いだ孫が戻ってくる

「ふぅ…さすがにこの距離は堪えますねぇ…」

孫はそう言いながらアイナをソファーに下ろすと
いつもの姿に戻り腰を叩いた

「孫さんお帰りなさい」

キッチンから出てきた八咫はそう言いながら孫の腰辺りをさする

「いやぁ…今日は長時間申し訳なかったね」

「ほほほほほ…この様子じゃ明日は休みでしょうし…しばらくサボっていたトレーニングだと思えば」

孫がアイナを見ながらそう言うと

「も、もう…歩けません……」

アイナは意識のない状態でそんな事をつぶやく
それを聞いた一同は吹き出して笑う
そんなところに妙な笑みを浮かべた白魔童が帰ってくる

「ほほう…何やら楽しそうで…」

「白さん…その笑み…気色悪いぞ」

「うん?そう?…だってさ…………」

白魔童はそう言うとさらに奇怪な笑みを浮かべる

「なんかいい事でもあった?」

トゥイージーは棒読みでそう質問する

「教えてほしい?」

「いや…別に興味はないが…その笑みをやめて欲しいから聞いた」

「実は………」

白魔童は焦らす様にそこで言葉を止めたのち

「教えないw」

そう答えると口元に手を当ててまた笑みを浮かべる

「チッ…聞くんじゃなかった」

トゥイージーは舌打ちをしてつぶやく
白魔童はそんなトゥイージーに見向きもせず鼻歌を歌いながらキッチンへと入って行った

「なんなんだよ…まったく」

トゥイージーがそう吐き捨てるように言うと

「こないだの毒…まだ抜けてないんじゃないの?」

と、カラーは爪にコート剤を塗りながら答えた
そして白魔童は皿を手にキッチンから出てくる
トゥイージーとカラーがそれを見て硬直する
その2人の様子を見てアデレードが振り向き…やはり硬直する
白魔童が手にしている皿に見覚えがあったからだ
そう…それはさっきまで八咫が楽しそうに解体作業をしていたあのバームクーヘンが乗った皿

「お?もしかして…君達、今これを見て…食べたいとか思ってる?…だが断る!私、白魔童が最も好きな事は…欲しがってる奴の前であげずにゆっくり食べる事なのだから!」

白魔童はそう言いながら硬直してる3人にバームクーヘンを見せつける
今まで以上の奇怪な笑顔で…
そして今まさに白魔童がバームクーヘンを食べようとつまんで持ち上げたその時…

「な!な!な~~~~~~!なんじゃこりゃあぁぁぁぁ!」

白魔導の叫び声をあげた

「お、俺の…朝から楽しみにしてた…ば、バームクーヘンがぁぁぁぁ!…見せびらかせながら1枚1枚剥がしながら食べようと…その時のみんなの顔を思い浮かべて…その瞬間のためだけに今日1日を頑張ってきたのに………」

トゥイージーとアデレード…そしてカラーは孫とザンジオが白魔童を見る中、八咫の方を見た
すると八咫は顔の前で親指を立ててニヤッと笑った
3人は吹き出すとその場に崩れて笑い転げる

「お、お前らか!お前らだな!」

「い、いや…知らないw……マヂで俺たちじゃない………ただ…なんか笑えてさ…」

「く、くるしぃぃぃぃ…死ぐ…死んじゃうよぉ……」

「お、お腹が…も、もう……だ、ダメ……」

「ちくしょぉぉぉぉ!誰だぁぁぁぁぁあ!」

呼吸困難になりそうな…もはや笑いというよりも泣き声に近い3人の笑い声と
悲鳴にも近い白魔導の叫びがアジトに響き渡った…



…『To Be Continued♪』





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Last updated  2013/12/02 02:47:13 AM
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