January 3, 2004
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カテゴリ: そのほか
 クリスマスはキャロル、そして合唱。先の年末の12月23日。下町風情の商店街を通り抜けたとき、どこもかしこもキャロルの洪水。純和風のお寿司屋さんも、、。「今日は天皇誕生日だよね?」そういう私もキャロルの仕事を終えて次の仕事に向かう途中でした、、。

 そして、お正月。今度は邦楽の洪水。でも、深く考えないところで、このコントラストを素直に楽しんでいる私自身がいました。

で、今年最初の日記は、邦楽について少しだけ、書きます。


【メリハリ】

「単調で何だかメリハリが無いね。」

「もっとメリハリを利かせたデザインでお願いしますよ。」

などなど、、「メリハリ」という言葉、誰でも普段、良く使う言葉だと思います。この「メリハリ」という言葉、元々音楽用語だった、という事は一般的にはご存じない方の方が多いと思います。「音楽用語」といっても西洋音楽の用語ではありません。ですから学校の音楽の試験や、音大のソルフェージュとは現在の段階では無縁なのですが、実はこの「メリハリ」、尺八の奏法の用語なのです。「なのです。」と偉そうに言ってみても、とあるお師匠さんからの受け売りなのですが、、。

【「メリ」と「カリ」】
尺八には同じ笛の仲間ではありますが、現代のモダンフルートの様なキー、というメカニズムがありません。ルネサンスやバロックのフルートの多くに見られる様に胴体に指穴がぽっこりいくつか空いているだけです。吹き方や楽器の構造でいえば南米のケーナと仲間の笛、ともいえると思います。その尺八の奏法に「メリ」と「カリ」があります。西洋音楽のスケールにはない単位の音が邦楽にはあります。半音よりも更に細かい微分音と音色を産み出すための奏法が「メリ」と「カリ」です。


さて、邦楽の場合、半音よりも更に細かい微分音が存在します。その細かい音程を作り出すために首を下に傾けあごを引く、これが「メリ」です。漢字では「滅」、または「乙」と書きます。「メリ」は名詞形、「める」が動詞で、漢字では「滅る」と書きます。尺八を吹くときの顎の形を見ても、正に「滅り込む」の「メリ」です。滅入る、下がる、落ちる、などなど、連想は尽きません。

【カリ】
逆に今度は、あごを上げます。すると音程の高い方へ音が動きます。これが「カリ」です。「カリ」は漢字では「上り」、または「甲」と書きます。「上る(かる)」が動詞です。

この二つの言葉「メリ」と「カリ」、が「メリハリ」の語源、ということです。「メリ」と「カリ」、が上手く出来ない尺八の演奏。これこそ、音が単調で「減り張り」(現代はこういう漢字で書くようです。)が無い演奏、という事です。尺八の奏法の「メリカリ」は漢字では「乙甲」だそうです。

是非、お手元の国語辞典を引いてみて下さい。面白いです。

 こういった言葉を見ても、やはり、本来音楽の言葉というのは生活とその実感から生まれて、そこに根ざしたものでは無いか、と思うのです。これまで書いてきた西洋音楽での西洋語もそうです。英語の"Scale"も、ラテン語の"Dominant"も同じです。そして、邦楽と日本語の関係も同じようにとても豊かです。今日書いた「滅」と「上」も、そこから「乙」と「甲」、「下」と「上」、更に「陰」と「陽」、果ては「褻(け)」と「晴(はれ)」などなど、どんどんと発想も広がって行きます。

 まだまだ日本語の中にわたしが知らずにいる音楽の言葉がある筈です。古来からの日本文化である日本語を母語として暮らしていること、喜ばしい事として受け止め、一つ一つ事実を見出し、その上で西洋音楽と向かい合って行く。身の回りのちょっとした事から少しでも変革していくことが出来れば、、、それは、とても大事で本当に楽しい事だと思っています。

 日本と西洋、それぞれ何千年という歴史の流れを汲む文化を持っています。その西洋の産物を何千年という時間と比べれば「一瞬」ともいえる時間で急激に日本に導入せねばならない。明治時代の大先輩方の仕事はそのような現実の大きな狭間で成されました。それはどれだけ偉大な先達の仕事だとしても、洋の東西、何千年という文化を完全に消化しきったものではなくて当然だと思います。音楽の専門家と呼ばれる私たちが、日常を通じて出来る仕事、やらなければならない仕事は、まだまだ沢山あります。

と、年頭に改めて思うに至りました。

今年もよろしくお願いいたします。





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Last updated  March 14, 2006 01:58:06 AM
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