カイバーマンのお仕事2

カイバーマンのお仕事2

2007年03月17日
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カテゴリ: BLEACH SS
(「続くか未定。」の続き)

「先輩、オレ女性死神協会に用なんすけど、一緒に行きません?」
「行く」
即答。

「って仕事だなんて聞いてないぞ恋次!」
「仕事じゃなくて無料奉仕です」
男子禁制が表向きの女性死神の会合に、何の裏もなく混じれると考えるほうが悪い。
「心配しなくても、分量量るのも材料混ぜるのもオレが全部やりますから。先輩は、生地の搾り出しとかやってくれるだけでいいです」
それくらいできるだろうといわんばかりの後輩に、がっくりと肩を落とす修兵。逃げようにも、女性人が次々厨房を覗き込むので出来ない状態である。


石田作なのは口にしてすぐわかったが、この際良しとする。
しかし彼女は、この礼として3月の女性死神協会の茶菓子製作を依頼……もとい命じてきたのである。
てめえは人の作ったので済ませたくせに……その礼を兄貴にさせたくせに……。
ルキアの理不尽さに慣れきった恋次も、その晩はちょっとだけ泣いた。

でも次の日、石田にどんなお菓子がいいか相談した。

「丁度ホワイトデーだから、クッキーとかマシュマロとか、チョコレートかな。朽木さんだけなら白玉あんみつだろうけど、大勢が相手なら洋菓子のほうが珍しくて受けがいいと思うよ。オーブンがあるならクッキーがいいかな、一度に沢山焼けるし、持ち帰れるし」
無論そんなものに心当たりはない。
オーブンがあれば、ケーキもパイもタルトも焼けるが、ないものはしようがない。鍋で作れるものしか作れない。
いいよな、オーブン。
と職場で部下相手に愚痴った翌日、朽木邸の厨房にどうみても現世の(そして業務用の)オーブンが設置された。
一体どういう仕組みなのかわからないが、とりあえず目出度い。


フルーツコンポート製作済み。
しかしオーブンを使わなければ後が怖いので、(簡単に釣れる)修兵をアシスタントに、クッキー作りに乗り出したというわけである。
「やっほー、焼き菓子出来た?」
素晴らしい勘のよさ。誰かさんとは大違い。
乱菊が厨房に現れたのは、オーブンが完成を告げる約2分前だった。

「全部食べちゃった。すっごくおいしかったわよ。あたしも恋次にチョコあげとけばよかった!」
「はは……どーも」
何となく視線が痛い。
「あれ、修兵もいたの?」
……これで先輩も料理を習い始めたら、何となく寒い。

バニラ、チョコ、チーズ、シナモンの四タイプ!
見た目はそこそこだが味は上々。
これならルキアの顔を潰すこともないだろう。
後ろでぶつぶつ言っている先輩が不気味だが、乱菊さんと楽しくお喋りすれば機嫌も直るだろう、と恋次はクッキーを運びながら考えた。
ルキアと二人で食べるのが無論ベストだが、周囲に賞賛を得るというのも嬉しいものだ。
「お待ちどうさん、焼き菓子持って来たぜ!」
「わーい!」
「お疲れ様」
「待ってました!」
「待ちかねたぞ。恋次」
一瞬視界から色彩が消えた。
「たたた隊長?何でいるんすか?」
「此処は私の屋敷だが」
いやまあそうなのだが。
「会合場所を提供したのもオーブンを手配したのも兄の残業を免除したのも私だ。その私が茶会に参加して何がおかしい」
絵面が変です。とはとても言えない。
修兵は恋次の肩をぽん、と叩くとしっかり乱菊の隣に座った。
恋次は、……多分これまでの人生で一番もてもてだったが、結局ルキアとは一言も話せずに終わった。





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最終更新日  2007年03月17日 21時04分08秒
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