2004年02月17日
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お察しの通り僕は自他共に認めるラピュタ好き。
そんな僕が去年企画した旅行があります。

題して・・・ ラピュタ・ツアー 。去年の春休み、SCOFFINの連中総勢11人を引き連れ、3泊4日のツアーを企画したましたんです。

場所は、 ウェールズ

今日はその時のお話。少し込み入った話になりますが・・・。

☆★先ずはウェールズのご紹介★☆
英国(UK)はブリテン島にある3地域と北アイルランドからなる国(?)と言うか 地域

ブリテン島はその昔、欧州大陸からローマ人の支配を嫌い渡ってきたケルト人(ケルトとは「石斧」と言う意味で、古代人の名称だそうです)が戦いながら移り住んでいた場所です。しかし結局ローマ人に支配され、その後もローマ人の衰えと共に3世紀頃活発化したゲルマン民族大移動とその一派でもあるアングロ・サクソンによって引き続き侵略を受けます。
その頃、ケルト人たちは侵略者達にブリテン人と呼ばれていてましたが、最終的にアングロ・サクソンに敗れウェールズ地方、コンウォール半島、マン島、アイルランド・・・へと追われて行きました。

今日でも、ケルトの血や文化を受け継ぐウェールズ人、アイルランド人、スコットランド人の多くは、「憎きアングロ・サクソンが自分達の土地を占領した」と、イングランド人に対して敵対感情を持っています。特に北アイルランド紛争では、宗教問題(カソリック対プロテスタント)と平行して、ケルト文化対アングロサクソン文化と言う極めて民族的・政治的問題が絡んでいます。
サッカーやラグビーのW杯においてイギリス国として出場せず、イングランド、スコットランド、ウェールズのようにばらばらに出場するのもその為です。オリンピックは「国」としてしての出場が義務付けられるので、英国として出場しますが、サッカーの様に伝統的かつ国民性を問われる競技には例えオリンピックと言えど、英国としては出場したことがありません。

話が大分それましたが、ウェールズは、例のラピュタのロケ地だったんです。

ほんの、マニア心で企画したラピュタ・ツアーですが、旅するうちに色んな事を考えさせられました。特に炭鉱夫の話が・・・。

ウェールズの首都カーディフに宿を取り南ウェールズ中心に回ったのですが、この辺一体は、かのイギリスの産業革命、さらには世界の工業化の波を支えた「石炭」の生産地。ラピュタの主人公パズーや親方も炭鉱夫でしたよね?

19世紀・・・未だ石炭が世界を支えていた時代。ウェールズのロンダ渓谷にはマールディ炭田があり、56鉱、炭鉱員4
万人、年産9百万トンの世界最大の規模で炭鉱夫は毎日厳しい状況下で炭鉱を掘っていました。それが、石油へとエネルギー転換の訪れと共に、炭鉱は次々と閉鎖され、炭鉱だけで成り立っていた小さな町の財政は崩れ、今ではすっかり「穴だらけ」の荒れ果てた土地にぽつんとあります。ジョン・フォード監督の 「わが谷は緑なりき(How Green Was My Valley)」 と言う映画はここが舞台になっています。

こんな、空虚感が漂う時代背景を宮崎監督はラピュタの前半で描いてみせました。

「BIG PIT(ビッグ・ピット)」 と呼ばれている炭鉱です。

ラピュタにも出て来るエンジンで動く大車輪が目印です。

BIG PIT

少量ですが石炭が今でも取られ世界遺産にも認定されています。ここの目玉は地下90mの炭鉱に実際に潜る体験ツアー。パズーの様に穴の中を散策できます。ラピュタに出てくる親方(ダッフィー)より少し(?)年配の現役や退職した炭鉱夫達が僕らをエレベーターへ連れ込み地下へと誘ってくれます。潜ると分かりますが、地下は想像以上に暗く冷たく過酷な場所でした。迷路のように入り組む地下トンネルで、石炭発掘と同時に出てくる危険なガスによる爆発事故やガス中毒で亡くなった炭鉱夫の話、トロッコ事故や相次ぐ土砂崩れ、衛生の悪条件やパズーの様な小さい子供を使った児童労働、女性労働者の話し・・・。色々な体験談や歴史を聞かされました。

おんぼろエレベーターのガタガタという振動や、ヘルメット、ライト着用の義務など実際に炭鉱夫になった様な臨場感と緊張感が漂うツアーです。

おんぼろ
おんぼろエレベーター



子供は当時では炭鉱では無くてはならない存在だったそうです。「メアリー・ポピンズ」なんかに出てくるロンドンの煙突掃除にしてもそうですが、小さな場所に潜り込む為には子供の体が一番合っていると想像するのは難しくありません。中には4歳児も働いていたそうです。賃金も安い。当然最初からとは行きませんので、入りたての頃は穴と穴を結ぶ空気の気圧を操作する場所で暗闇の中、仕切り戸の開け閉めなんかを任されたそうです。この場所は炭鉱の安全面でもきわめて重要な場所です。安全ランプは高くてとても買えませんので、暗闇の中、一人で時には何時間もの間、戸の開け閉めの合図を待ち続けたそうです。実際ツアー中炭鉱夫の呼びかけで、僕達は全てのライトをほんの数十秒消してみましたが、今まで感じた事が無い完璧な暗闇でした。まさに暗黒・・・。

とんねる
↑このトンネルはニセモノ。

このような子供たちは例外なく労働者階級出身者。親が居なかったり、引き取られたり、売られた子も多かった、とも聞きました。生きていく為には、どんなに小さかろうと、どんなに過酷だろうと、手に職を持って賃金を稼がなければなりません。労働者階級の子供たちの殆どは十分に勉学が出来るわけもなく、家族や自分の為にこうして働きに出たのでしょう。
パズーの様な子供たちが実際に沢山存在していたに違いありません。

なによりも経験が物を言う炭鉱。親の無い子供たちは炭鉱で親方や兄貴分を見つけ、友達を作り、仕事の経験値を蓄えると共に、社会を学んで行きました。言うならば、炭鉱は仕事場であると共に、彼らの学校でもあったのです。

その中で生まれたのが炭鉱夫達の団結力です。長年一緒に苦楽を共にしてきた炭鉱夫達が衛生、労働条件向上や賃金の引き上げを求める為に労働組合を設立し大きな力にもなりました。
しかし少しは改善されはしたものの、エネルギー転換と同時に押し寄せた相次ぐ炭鉱閉鎖、失業、不景気の波・・・。サッチャー政権になってからは、炭鉱夫達はいともあっさりと切られお払い箱になってしまいます。

このような波乱万丈な人生を急激な時代変化の中で生きてきた炭鉱夫の話は辛くとも、自分の仕事に誇りを持ち、ある意味楽観的な人生論でもありました。 世界経済を支えていたのは俺達だっ! と言わんばかりの堂々とした男達の、さながらプロジェクトXのような話は説得力もあり共感がもてました。


さて、話はウェールズに戻りますが、「ウェールズ」とは、アングロ・サクソン時代から使われ始めた地名で「敵地」と言う意味だそうです。侵略者アングロ・サクソンが野蛮なケルト人を指して言ったのでしょう。

産業革命のおかげで大英帝国は栄光の時代を迎え、植民地を広げ、巨大な富を生み、さらには世界的な産業化の波を作り出しました。現在世界各地にある紛争の多くはこの植民地と産業化の歴史にも深く根ざしています。そんな時代の心臓部になったのが、他でもない、侵略者達から「敵国」と名づけられた地に住み、危険な状況下にさらされながらも黒い石を求めて掘り続けた名も無い炭鉱夫たちだった事は皮肉だけども、カッコイイ話だとは思いませんか?

教訓:世の中は、名も無い人たちの力で動き繋がってる。

☆おまけ画像☆

パズー、シータが囚われたティディスの要塞を彷彿させるカーフェリー城。
カーフェリー城2
カーフェリー城

高山鉄道だって、ちゃんと通っています!
SL

パスーの物まねを、パンプキン小僧にやってもらいました・・
パンプキン小僧

パズーが住んでた様な町並み
スラッグ谷

炭鉱に興味をもたれたら ココ に行って見て下さい。





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最終更新日  2004年02月19日 02時45分56秒
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Re:ラピュタに出てきた炭鉱夫達の歴史(2/17)  
ARAMI  さん
ランダムできました。すっかりラピュタの旅に参加した気分になってしまいました。が、本当にここがあのラピュタのモデルになったところ?それとも、「こういうところ」が、参考にされた・・・っていうことなのかな?<br><br>写真入りで楽しませてもらいました! (2004年02月19日 03時05分45秒)

Re:ラピュタに出てきた炭鉱夫達の歴史(2/17)  
 ウエールズはとても気になる土地なんです。ロケちだとは知らなかった。ケルト音楽も好きだし、二コルさんも大好き、誇り高い民族なんでしょうね!<br><br> 私が生まれた所は大牟田というところで、炭鉱の町。何か血が騒ぐというところがあります。<br><br> 誇り高く生きたい!<br><br> 貴重な情報ありがとう! (2004年02月19日 07時12分34秒)

感動!  
雅無乱 さん
ラピュタぼくも好きです。
そんな歴史があったとわ…
写真もきれいですね。 (2004年09月14日 22時23分05秒)

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