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私は昔、学生時代に岡野玲子さんの『Missing Link 失われしもの』という漫画を読んで、その絵柄にいたく感動したことがあった。
この人の絵を見ていると、「力量」「実力派」という言葉が自然に浮かぶ。
漫画を通り越した「劇画」に近く、それでいて漫画の要素もある。だから魅力的に感じ、傾倒してしまった。
その後、しばらくして、彼女の作品からは遠ざかっていたが、ある時、本屋で『コ―リング Calling』 というのを見つけ、早速買った。
英国のファンタジー作家、パトリシア・マキリップ原作。
この岡野玲子氏は、洋風のファンタジーを描くのに長けている、とつくづく思った。
作風、絵柄から、「好き」「嫌い」と別れるタイプの漫画家じゃないかとも思う。
しかし、東京美術学校でしっかり絵画の基礎を学んだだけあって、その実力は生半可な少女漫画家では太刀打ちできない。
そして、21世紀に入ると、ついにかの有名な『陰陽師』の漫画化を成し遂げた。
この作品は、原作の夢枕獏氏が、「漫画化されるのなら、当然岡野玲子氏がいい」と思って執筆したらしい。
そして、岡野玲子さんは、その小説を読んで、「原作物を漫画化するなら、私はこの『陰陽師』をぜひやりたい」
このように、小説家と漫画家が両想いなのは、非常にレアなケースなのだそうだ。
映画『陰陽師』は、確か10月19日に観たが、平安時代のアクション且つホラー映画、という点に魅かれてPART1,2 とも観てしまった。
平安時代初期を映画化するというのは、非常に珍しいことだったからだった。
観ていてハラハラしたし、感動したし、身につまされる(特に怨霊シーンなど)こともあったが、あれはあれで、狂言師野村万斉が陰陽師「安倍清明」にハマり役だったのが良かったし、清明の友人である醍醐天皇の孫である、源博雅役も素敵で、且つ、とぼけたシーンもうまくて笑えた。
それで、『陰陽師』に興味を持ち、岡野玲子氏の本を7冊買ったのだが、ページを開くなり、「映画は、岡野さんの絵を見てキャスティングしたのか」と思うほど、漫画のキャラと映画のキャラがそっくりなのに驚いた。
その岡野さんの本を読み、「西洋風ファンタジー」で堪能した彼女の作風が、平安調の絵柄の中に「ああ、やっぱり岡野玲子だなあ」と見てとれる時が、とても嬉しい。
ここまで平安時代を美しくリアルに再現してみせた漫画家は、この人以外にない、と思えるほどだった。
力強い盗賊などの殺戮のシーンや、菅原道真の怨霊率いる百鬼夜行の場面など、とても女性が描いているとは思えないほどだ。
そして、騒ぎ立てるほどでもないことなのだが、彼女はかの手塚治虫の息子、手塚真氏の奥様でもある。
旦那が手塚プロダクション社長、奥さんは『陰陽師』のプロ(しかもこの作品は、フランス語にまで訳されて読まれている)......
凄い家系だと思う。
そして、岡野玲子氏は、この『陰陽師』で、「手塚治虫漫画文化大賞」なるものを受賞している。
『陰陽師』の後半を「難解でつまらん」と言う人もいるが、13巻まであるこの一大作品を読めば、岡野玲子氏の人生哲学も見えてくる。
そう思って、私は、8巻以降をまた買って読もうと思う。
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