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2020.12.30
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カテゴリ: ラノベ


田中芳樹の代表作の1つにして,30年もの長きにわたって続けられていた創竜伝がついに完結した。
1巻が刊行されたのは1987年,昭和でいえば62年。作中の設定では「21世紀まであと数年」くらいの設定だったはずである。現在は2020年12月。年号も平成から令和へと,かなりの時間が経っている。そういえば,2巻の巻末対談に「親娘で読んでいます」というファンレターがあったようだけれど,娘の方はともかくお父さんの方は生きていない可能性すらある。それが30年の重みだわな・・・。


創竜伝15 <旅立つ日まで> (講談社ノベルス) [ 田中 芳樹 ]

とりあえず,簡単にあらすじを紹介してから突っ込みどころと感想を書いていきたい。
ざっとしたあらすじだけれど,竜堂兄弟は月で牛種との最終決戦に挑むのだ。
で,月ではいよいよ牛種のボスが神農だったということがあきらかになるのだ。この神農は牛頭人体と超古代,三皇五帝の1人である。神様みたいなものか。
展開としては,どうも唐突である 。まぁ,牛種の目的だとか,ラスボスさえ明らかになっていない状態だったのだからやむを得ないのだけれど。

で,この神農なのだが,創竜伝の世界観では造物主となっている。なんでも,仏教では三千世界というけれど,1000の3乗,つまり10億の異世界があるのだ。神農はさまざまな異世界を異動し,生物がいないところでは生物を作り,未開の世界に文明を教え,はぐくみ,そして滅ぼすということを繰り返していた。

で,もはやこの世界は矯正がきかないようで,神農は別の世界に移動するから,竜堂兄弟はこの世界で好きにしろ,とこう言うのだ。神農の力は竜堂兄弟を圧倒的に超えていることもあり,竜堂兄弟は仙界で数年修行し,神農を倒すため異世界に移動する・・・とここで物語は完結である。

思うところは色々あるが,この「俺たちの戦いはこれからだ!」で物語を締めくくるやり方は,まさしく ジャンプの打ち切り漫画 のそれである。
ジャンプ漫画の場合,人気がなければ物語の途中でも容赦なく打ち切り完結を迎えざるを得ず,一区切りをつけ,主人公たちの戦いはまだまだ続く,とやらざるを得ないのだろう。
一方で,創竜伝の終わり方は,ジャンプの打ち切り漫画とは違う。恐らく,創竜伝には十分な人気はあったと思われる。
はっきり言って,著者の怠惰がこういうどうしようもない完結を招いたとしかいえない。11巻みたいなどうということもない外伝を入れてみたり,小早川奈津子みたいなキャラに紙幅を使いすぎたし,ブランクをあけすぎたことで衰えが出ている。

それより思い至るのが, 藤崎竜の漫画『封神演義』との類似性 である。

封神演義 1【電子書籍】[ 藤崎竜 ]

あの漫画も,終盤になって人類の始祖として,やはり三皇五帝の1人とも称される女媧が登場し,物語は宇宙規模になった。

ところが,『創竜伝』の神農には,伏線もないし,また世界の創造と破壊を繰り返す動機の説明も全くない。
だいたい,神農が異世界に行くというのならば,放置すればいいのではないか,という疑問はのこる。
普通に,四人姉妹を背後から操る牛種の王を倒して終わりでいいではないか。牛種がいなくなっても,それでも政治腐敗は残るので竜堂兄弟が人間界を捨てて仙界に行く,とかそんなエンディングでも良い。

さて,僕は創竜伝が完結すると言うこともあり,ここ最近,創竜伝を読み返していた。
2019年10月9日の日記
ただ,その創竜伝も徐々に惰性で読むようになって来た。
まさしく竜頭蛇尾というにふさわしく,中盤以降の失速は目を覆うばかりだ。田中先生の筆力が衰えているのだろう。

ところで,読んでいてスマホ関係で明らかに表現のおかしなところがある。たとえば,竜を目撃した人たちが驚愕するシーンはこう表現されている。


「竜!? そんなバカな」
いや,おれもスマホで見た」
(15巻45頁)
​いや,「スマホで見た」ってなんやねん。「Youtubeで見た」,とか「インスタで見た」ならともかく,スマホで見たって,表現としておかしかろう。校正の人は何をしているのか。特定の企業のものを書けないとしても,「SNSで見た」とかで良い。
だいたい竜やモンスターをスマホで撮影しようとした人は惨殺されてしまうというのも,どうかなと思う。
田中先生の分身であろう竜堂始が「 スマートフォンが嫌いで,仕事に最小限使う以外は手も触れない 」(15巻14頁)というから田中先生もスマホは嫌いなんだろうな・・・。揚げ足を取るのならば,恋人とスマホで連絡をとったりすらしないのか,という話ではあるのだが。

総評として,創竜伝の最終刊はかなり残念な内容になっていた。
僕としても,10代のころ夢中になって読んだものがこういう結末というのは悲しいところもある。


創竜伝15 <旅立つ日まで> (講談社ノベルス) [ 田中 芳樹 ]





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最終更新日  2023.07.03 11:00:07
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Re:『創竜伝』15巻感想~俺たちの戦いはこれからだ(12/30)  
通りすがり さん
通りすがりです
創竜伝は(というか田中芳樹の作品は)途中で読むのをやめてしまったので、終わったことを知りませんでした

で、田中氏の筆力が衰えたということですが、創竜伝に関してはかなり初期から致命的な欠陥があったと思っています
悪役が絶望的なまでにカッコ悪いんです
実のところ他の作品においても同じですが、創竜伝は特に顕著に思えます

彼はキャラクターに自身の主義を投影しすぎで、主要キャラクターは彼の代弁者であり、反対に悪役は彼の意に沿わないことのみをし、また言います
自身がおかしいと思う言動しかしない者をカッコよくは描けませんよね

彼自身は否定するかも知れませんが、彼は左翼です
左翼の人って異なる意見を認められない人多いでしょ
その点において彼は典型的左翼です

SFやファンタジーなど実社会から逃れられるところを舞台にしたものはまだいいのですが、創竜伝のような現代社会を舞台にしたものではどうにもならないようで
だから彼の主要な作品の中では創竜伝はいちばんの駄作なのではないでしょうか

失礼いたしました (2022.09.16 14:51:24)

Re[1]:『創竜伝』15巻感想~俺たちの戦いはこれからだ(12/30)  
通りすがりさんへ

悪役のカッコ悪さ、魅力のなさはその通りだと思います。創竜伝での唯一の例外は鎌倉の御前くらいでしょうか……。
ところで、もし読んでないなら銀河英雄伝説をおすすめします。これは対立する勢力に属するダブル主人公なので、ヤンとラインハルト、どちらの主人公も強くて魅力的でした。 (2022.09.17 07:10:28)

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