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2021.11.09
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カテゴリ: 読書
私事だけど,2021年の10月9日,もともと飛蚊症がひどかった左目が見えなくなった。それで手術を受け自宅療養中にふと思い立ったのが20年ほど読もうと思って放置していた積ん読本の解消である。
それが今回読んだ池波正太郎の短編小説集,『賊将』である。


賊将【電子書籍】[ 池波 正太郎 ]

奥付を見ると,初版は1999年12月の発売となっている。もともと,初出は1964年らしいのだが,僕が買ってもらったのは1999年に出た角川判である。
思いおこせばこの本が新刊本として新聞広告に載っていたころ,祖母が中学生の僕にこの文庫本を買ってくれたのである。ただ,この本,なんだかんだで20年も積みっぱなしになっていたわけだ。
約20年というのは積ん読解消としては僕の中で最長記録だし,たぶん,僕の残り人生を考えてこれ以上の記録は出せまい。

では,なぜ読み切るのに20年かかったのかといえば,冒頭に収録されている中編小説『応仁の乱』がつまらなかったから,これに尽きる。
何がどうつまらないか,説明することは困難である。応仁の乱という,あんまり馴染みのない時代が良くなかったのかもしれないし,主人公の足利義政が何を考えているか分らんと言うのもあったのかもしれない。とにもかくにも,つまらなくて読み切れなかったのである。


ところで,海音寺潮五郎はアンチ池波正太郎であり,直木賞の選考をしていたころからボロクソに池波正太郎をけなしていたという。
ネットの海を見ていると,海音寺潮五郎はこの『応仁の乱』に対して「よく調べているが,やるなら長編でやるか,いくつかの短編に分割すべきだ」と評したというが,僕もそう思う。
なんとか読み終えた物の,「つまんなかった」以上の感想はなにもない。

このように『応仁の乱』を読めなかったが,それでも中学生の僕は短編集『賊将』を捨てなかった。
なぜかといえば,収録されているほかの小説は普通に面白いからだ。
その中で2つ,語りたい作品がある。

1つは,表題作の短編小説『賊将』である。
これは,人斬り半次郎こと中村半次郎(維新後は桐野利秋)を主人公に,幕末から西南戦争までを描く短編小説である。
なにがいいといえば,主人公の半次郎のキャラがいい。下級武士という,虐げられた出自から「いまに見ちょれ!」と日々剣術の稽古にいそしみつつ,内職なんかもこなして母や弟たちを養う貧困生活から自慢の剣術で陸軍少将まで登り詰めるのだ。
典型的な薩摩隼人のように血の気が多いものの,どことなく可愛げもある。
僕はすぐにこの中村半次郎が好きになってしまった。



人斬り半次郎 幕末編【電子書籍】[ 池波 正太郎 ]

2つは,『秘図』である。
これは,火付盗賊改・徳山五兵衛秀栄を主役とした短編小説である。
鬼平犯科帳のような,捕物帖というやつで,主人公の役人が盗賊と戦う話である。

たぶん,このは設定は池波正太郎の創作であろうが,先ほどの中村半次郎と同様,愛嬌というものを感じさせる。
五兵衛は最終的に,秘図をどうしても処分することができず,死の間際,手文庫ごと家臣に焼かせてしまう。男の悲哀を感じる。
いまの電子化の時代は知らんが,昭和・平成の男の子なら,エッチな本なんかを家の中に隠し持っていたものだ。外では真面目そうな顔してながら,どうしても秘図を捨てられない。夜にエロ絵を描くのをやめられないという五兵衛に僕は強い共感を覚えた。
ここには池波正太郎の「人間はいいことをしつつ,悪いこともする」みたいな哲学の結晶とも言え,僕は鬼平よりも,剣客商売よりも『秘図』が好きである。
なお,「秘図」もやっぱり『おとこの秘図』として長編小説化されている。こちらも面白いことは面白いのだが,短編の『秘図』の方がテーマ性とかは上かもしれない。


おとこの秘図(上)(新潮文庫)【電子書籍】[ 池波正太郎 ]

最後に総評である。
短編小説集『賊将』については,のち長編小説化されている『賊将』と『おとこの秘図』が収録されている時点で2つも傑作が載っているからお買い得と言えよう。
直木賞を撮る直前の,若々しい池波正太郎の力も感じる。巻頭の中編『応仁の乱』だけ飛ばして読んでも,値段以上のモトは取れると思うよ。


賊将【電子書籍】[ 池波 正太郎 ]





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最終更新日  2021.11.09 14:02:41
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