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2021.12.24
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カテゴリ: 読書
大デュマの傑作,『モンテクリスト伯』はリライト版がいくつか作られている。SFの『虎よ,虎よ!』なんかもそうだし,黒岩涙香の『巌窟王』なんかは筆頭で,もしかすると日本国内に限定すれば『巌窟王』の方が本家より有名かもしれない。
この江戸川乱歩の『白髪鬼』も『モンテ・クリスト伯』のリライトである。
正確に言えば,『モンテ・クリスト伯』のリライトであるマリー・コレリの『ヴェンデッタ』を翻案した黒岩涙香の『白髪鬼』をさらに改編したのが江戸川乱歩の『白髪鬼』であるから,本作は『モンテクリスト伯』の曾孫くらいの立ち位置になるだろうか・・・。


白髪鬼【電子書籍】[ 江戸川 乱歩 ]

内容なのだけれど,『モンテ・クリスト伯』と同様,復讐をテーマにした作品になっている。
親友に陥れられて生き埋めにされた主人公は恐怖のため白髪になってしまったが,偶然に地下で海賊の財宝を発見し,大金持ちになるのだ。そして莫大な財力で自分を陥れた親友と,その親友と姦通していた妻に対して復讐をするというのだけれど・・・。
僕は,どうしても先に読んだ『モンテ・クリスト伯』と比べてしまうが,大きく以下のような違いがある。

まず,白髪鬼が生き埋めにされたのはせいぜい5日程度である。一方でモンテ・クリスト伯は無実の罪で14年を監獄で過ごしてから脱獄し,さらに9年の準備期間を使ったから,23年もの時間を使ったことになる。この生き埋め期間について,主人公は『ダンテス(モンテクリスト伯)と違って,こっちは飢餓の恐怖があるから,俺の方がツライ』と言っていたが,どんなものだろう。


要するに,どうしても『白髪鬼』は『モンテ・クリスト伯』と比べてかなりスケールが小さい。
23年もかけて復讐を行ったモンテ・クリスト伯を熟成しきったワインとするのならば,白髪鬼はせいぜい1年くらいの物語なので熟成具合が足りないボジョレーヌーボーみたいなものか。
もっとも,復讐をやり遂げる前に良心の呵責から断念したモンテ・クリスト伯に対し,やりきった白髪鬼を比べると,この点に限って言えば白髪鬼が勝っているだろうか。


モンテ・クリスト伯 1【電子書籍】[ アレクサンドル・デュマ ]

ただし,分量が大きく違い,『モンテ・クリスト伯』は岩波文庫で7冊という大長編なのに対して『白髪鬼』は文庫本1冊にも満たない。
気軽に,簡単に読めるだろう。
さらに,江戸川乱歩版の『白髪鬼』の良い点としては,江戸川乱歩の行間からにじみ出る変態性ですかね・・・。
たとえば,主人公がまだ幸せだったころ,新妻といっしょに風呂に入ってイチャイチャするシーンだとか,妻が姦通するシーンはなんとも変態チックだ。
私生活では女遊びの限りを尽くした大デュマも,江戸川乱歩の変態文学には一歩も二歩も譲ることになるだろう。

なお,ついでに言うと,角川文庫版の『白髪鬼』にはさらに『盗難』,『一枚の切符』,『人でなしの恋』,『恐怖王』の4つの短編が収録されている。

いや,ネタ自体はさほどではないかもしれないが,話の運び方,言葉の選び方,描写の仕方など,小説に必要な全ての要素が変態としか言いようがない。
15年くらい前,本田透がラノベでこの『人でなしの恋』を題材にラノベを1本書いており,僕は結構好きだった。暇な人は是非呼んで欲しい。


イマジン秘蹟 2.人でなしの恋【電子書籍】[ 本田 透 ]

本田透はここ10年くらい作品を出さずに沈黙したままだが,いつか復活して欲しいものだ。



白髪鬼【電子書籍】[ 江戸川 乱歩 ]





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最終更新日  2021.12.24 11:34:59
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