タコ社長,オーストラリア・メルボルンのスローライフな日々

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タコ社長1952

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カテゴリ: タコ生徒・学生期
「先日の手紙を読んですぐ返事書いたのよ。でもねポストに入れないでハンドバックに入れてある。」予備校時代の英作文に使った大学ノートの裏を使って私と早苗との筆談が始まった。

「宣教師になるつもり? 本当は今ここで話せるといいんだけど、今日に限って客の入りがいいんだからね。」働いている喫茶店のカウンターで早苗は、牧師と書こうとして宣教師と書いたみたいだった。私は、やや離れたテーブルで彼女を見つめていた。

「書いた手紙が欲しい。俺は信仰に就いては不安定で宣教師になるなんて考えていない。」
19歳でキリスト教会に通っていた私は、やや気負ってそう書いた。

「活字にすると、自分のありのままの気持ちなど伝えることができないから嫌いです。」
結局、彼女からその手紙をもらうことは最後までなかった。

喫茶店内は混んでいて、ウエートレスの早苗と話ができない。バイトの彼女とは一ヶ月前にこの店で知り合った。そのときは空いていて話し込んでしまった。大学の入学式の前日だった。一ヶ月の交際の間、言わないでいた自分の信仰のことを書いて三日前に手紙を出していたのだ。自分の信じているものを分かって欲しかった。

早苗は、婚約者との仲がこじれ、隠れるようにしてその喫茶店でバイトをしていた。高田馬場にあるW大学の教育学部に前の年に入学していたが、いろいろあって留年したという。そして、学生結婚をしようとしていたようだ。でも、本当のところは何も分からなかった。
どこまでが本当で、どこからがウソなのか冷静になれば分かったのだろうが、恋は盲目を地でいっていた。



「事情があって、家を出ることになったの。ごめんね。もう会えないわ。」
「あなたは、本当の私を知らないのよ。」
電話での会話だった。本当の私ってどんな私なんだ!

昭和47年6月の8日、来るなといわれていた店に無理に行って話そうとした。彼女は、私を完全に無視した。生まれて初めて結婚と言う言葉を頭に過ぎらせた彼女は、本当に家出をしてしまって二度と会うことはなかった。

予備校で使っていた大学ノートの裏表紙に書かれた早苗の整って読みやすい文字と、自分で書いたのに自分で読めないほどの殴り書きの私の文字だけが残った。彼女は、いったい私の書いた文字が読めたのだろうか。

タコ社長、いまだに悪筆だけは自慢のタネだ。

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Last updated  2009年04月21日 10時03分38秒
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