ココロ ニ アカリ ヲ・・

ココロ ニ アカリ ヲ・・

2004.02.27
XML
カテゴリ: カテゴリ未分類

クリア(4話)



 やはりその日もそんな風に当たり前のようにユカが僕の横に並び、街中を歩いていた。
「小山クン」
 女の子らしい柔らかな声がした。
 その瞬間、ゾクゾクと鳥肌がたち、懐かしくてめまいがした。
 腰まであるサラサラの長い髪、色白の細面に切れ長の瞳の・・・・
「藤田」
 振り返ると、肩にかかるくらい長さに切られた細くて黒くてサラサラの髪、マシュマロみたいな白い肌、優しい面差しをした女の子が、涼しげな笑顔で笑いかけた。
「ひさしぶり」

 藤田 小雪。
 高校時代あんなに長かった髪は、すっかり短くなり、少しぽっちゃりして印象が柔らかくなっていた。
 何かを思い出すように立ち止まった僕の顔を、ユカは見つめた。
 この時、ユカはどんな表情をしていたのだろう。僕はユカの言葉を聞くだけが精一杯だった。

「知っている人?」
「ああ、地元の高校の同級生。」
「仲良かった人なの?」
「ん?」
 固まった状態の頭と体でユカを見つめ返す。
 ユカは困ったように苦笑いをし、「それでね・・・」とさっきの話の続きをはじめた。
 僕はユカの話に相槌を打つ。



 高校時代陸上部に所属していた僕は、隠れ美術部員でもあった。他にもかけもちでこっそり絵を描きにくる人は男女問わず数人いたと思う。
 そんな出入りが気楽な美術室に、僕も時々絵を描きに行くのをやめられなかった。

 今思えば、走るだけではスッキリしない何かを吐き出したかったのかもしれない。

 藤田小雪も、かけもちこそしていないけれど時々思い出したようにぶらっとくる部類の美術部員の一人だった。

 僕が、下手くそながらも中世ヨーロッパの宮廷画ような境界線のぼんやりした風景画を好んで描いたのに対して、


 しかし、藤田の描く絵を見てイナズマが落ちたような衝撃を受けて以来、僕はあまり絵を描けなくなった。

 そして、藤田から目が離せなくなった。 
 僕は藤田に、恋していたのだと思う。憧れていたのだとも思う。藤田の個性に嫉妬もしていたと思う。
 けれどなにより、自分と異質なものの正体を確かめたかった。正しいのか、間違っているのか、美しい者なのか、嫌悪する者なのか。
 まぁ、どんな屁理屈を百並べた所で、あの頃の僕がやっていた事は一つ。
 藤田の声、話す内容、風に揺れるサラサラの髪等をただひたすら見つめていた。


「ねぇ、ねぇ」
ユカにゆさぶられてハッとする。
「ああ、ごめん。何の話だっけ?」答える声はかすれていた。






お気に入りの記事を「いいね!」で応援しよう

Last updated  2004.02.27 00:36:15
コメント(2) | コメントを書く


【毎日開催】
15記事にいいね!で1ポイント
10秒滞在
いいね! -- / --
おめでとうございます!
ミッションを達成しました。
※「ポイントを獲得する」ボタンを押すと広告が表示されます。
x
X

Calendar

Archives

・2026.08
・2026.07
・2026.06
・2026.05
・2026.04
・2026.03
・2026.02
・2026.01
・2025.12

© Rakuten Group, Inc.
X

Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: