ココロ ニ アカリ ヲ・・

ココロ ニ アカリ ヲ・・

2004.02.28
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クリア(5話)




 翌日、朝から起き上がる元気もなく、大学にも行かず昼過ぎまで部屋でゴロゴロしていた。
 僕は中学時代くらいから1年に2~3日間隔で無気力状態に陥る日というのがあって、そんな日は何をする事もなくひたすら部屋にこもって誰にも会わずのんびり好きな事をして過ごす。今日はバイトもない。ぼんやり、昨日会った藤田の事を思い出していた。

 僕が嫉妬と賞賛をこめて藤田を見つめていた頃、なぜか藤田は僕の事を好いてくれて、呼吸するように自然に僕達は付き合い始めた。
 「数学の女神様」とあだ名される程ものすごく数学が得意な藤田に、美術室で数学を教えてもらいながら、おでこをコツンとぶつけて見つめあったり、帰り道初めて手をつないだり。
 もう過去のことなのに、声を聞いただけであんなに自分の体が反応するとは。

 体の力がガックリ抜けて、疲労が増した。

 昨晩借りてきたビデオをぼんやり見始めて数本目、夜の8時を回った頃、突然部屋をノックする音がした。

「?誰?」

「は?」
「ユカでーす。」
 僕はボサボサの頭をかきあくびをしながらドアを開ける。

 ユカは髪型が変わっていた。髪にストレートパーマをかけ肩より少し短いくらいに切っていてシャギーの入った毛先が顔の周りを縁取り、それなりにユカに似合っていた。タッパーを3箱を両手に抱えて右手の肘にスーパーの袋をかけて立っている。

「今日なんだか料理がしたくて、昼から狂ったように料理してたの。たくさん作りすぎて差し入れでーす。」

「おまえ・・・すごいな」
「美味しそうでしょ?」ユカは口角を右に上げてニッと笑う。
「いや、そういう意味じゃなくて、何で俺んち知ってるの?」
「バイトで聞いて・・・」
「誰に?」
「広瀬くん」いつも物怖じしないユカの声はだんだん小さくなっていく。


「小山くん」ユカはケイと呼ばず久しぶりに僕の苗字を読んだ。ものすごく強い口調で。
「小山くんは優しい。清潔だし、軽くないし、私に酷い事を言った事もない。」ユカは言葉をきって少し寂しそうな顔をした。
「でも考えている事ものすごく顔に出ているって知ってた?私がいつもいつも傷ついていないとでも思っていた?」言った言葉の重みを感じさせないように、ユカはこんな時でも口角を少し右にあげてニッと笑った。しかし、まばたきしたとたん、ユカの瞳からボロボロッと涙がこぼれた。

「ちょっ・・ちょっと」いきなりアパートに来られて玄関で泣かれたらたまらない。
 僕は右左右、誰も見てないか確認してから、ユカをおしこむように部屋に入れた。「はぁ、このアパート女の子入れたことないんだからな。しかもこんな時間に・・・」

「なんでよ。ケイ、ホモなの?」
「俺は自分を安売りしないんだ。」
「何それー。女の子みたいなセリフ」

「ばーか、こんなことに男も女もないのだ。」

「・・・・・・・私ね、そんな風に自分を使い減らさない、興味のない人にはおべっか使わない、笑顔ふりまかない、ケイのそういう所、好きだよ。」

「そりゃ、どーもありがとう。」

「でも・・・・」

「でも、なんだよ?」

「ケイってさ、考えている事まるまる顔にでてるから、一緒にいると結構傷つく。気をつけたほうがいいよ。人間関係、損してると思う。」






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Last updated  2004.02.28 01:18:05
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