あたしはあたしの道をいく

2006.06.28
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カテゴリ:
青春の証明新装版


「証明シリーズ」というからには、棟居刑事の推理小説だろうと思ったら、
最後まで棟居刑事は出てきませんでした(笑
刑事は出てきたけど、棟居刑事じゃなかった。
ざんねーん!



戦後の混乱期。
笹岡道太郎は婚約者と夜のデートを楽しんでいた。
そこへ、暴漢が現れ、婚約者を連れ去ろうとする。
しかし、笹岡は恐怖に身がすくんで動けない。

婚約者は身動きが出来なかった笹岡を卑怯だとなじり、
彼の元から去っていく。
そこから笹岡の贖罪の人生が始まる。

森村誠一が「証明シリーズ」で描いているのは、戦争の傷だ。
「人間の証明」で占領統治下の酷い有様を。
「新・人間の証明」で関東軍第731部隊の有様を。
この「野生の証明」でも戦争のことが描かれている。

野生の証明、でスポットを当てられるのは、
突然学業の世界から兵士に駆り立てられた若者。
兵士たちは青春を謳歌することも許されず、
学生の本分である学業も許されず、

彼らには未来など、無い。

狂気だと思う。
狂ってる、と思う。
それでも、その狂気に向っていかなくはならない、哀しみ。

夫婦の形も、たくさん書かれている。

婚約者に去られた道太郎の家庭。
道太郎の息子の婚約者の家庭。
そして、それぞれの夫婦の過去。
そこに隠された欺瞞。
夫婦関係について、とても考えさせられる。

いや、夫婦関係だけではない。
人間、というものの性についても考えさせられる。
他人を糾弾することは厭わないものの、
自分は欺瞞の中に安穏としている。
それが若者独特の性への傾倒を絡めながら書かれている。

すごい作品でした。
推理小説としてもすごいのかもしれないけど、
も、それ以外の内容が重過ぎて……。






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Last updated  2006.06.28 12:25:22
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