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カテゴリ: Science
「カオスの紡ぐ夢の中で」(金子邦彦、ハヤカワ文庫NF)を読む。

とにかく面白い本だった。どれくらい面白かったかは後で述べるとして、内容的には、まずカオスや複雑系に関する科学エッセイ、その後にそれらを題材にした短篇小説と中篇小説、最後にあとがき代わりのバーチャル・インタビューという構成である。いきなり脱線すると、筆者はいっときの「複雑系ブーム」をあまりよく思ってないらしく、その結末が、映画にもなったマイクル・クライトンの「ジュラシック・パーク」だということだ。嗚呼、ゴメンナサイ、私も高校時代このクチでした。(ちなみに私は小説としての「ジュラシック・パーク」は大変面白いと思う。映画は最悪だったが。)

で、どれくらい面白かったかと言うと…私は本を読むときに、面白いと思った記述、表現、知らなかった知識などに行きあたると、そのページの角をちょっとだけ折って、後で簡単に振り返るのに使ったりする。その一部はこのブログにネタにもなったりする。

で、ふつうの本を読むときは1冊で4~5箇所も折れば多い方なのだが、この本に関して言えば、最初のエッセイ約90ページで9箇所折ってしまった。10ページに1箇所の割合である。これは異常に多い。ちなみにその後の小説では折るところがなかったのだが、これは面白くなかったからではなくて、むしろ面白くて一気に読んでしまったからである。

カオスや複雑系を扱っていながら、科学文化論や科学のあり方を論じている箇所もあれば、SFやスポーツといった卑近な例で科学を判りやすく論じている箇所もあって、オリジナリティに富んでいる。これは筆者の研究分野や研究に対する姿勢・態度・思想を反映したものだと思う。

面白かったところとしては、例えば、若者の理科離れを止めるには「のだめカンタービレ」の科学版を作ればいいとか、夏目漱石と寺田寅彦の師弟関係は「科学としての文学」と「文学としての科学」として表現できるとか、物理学者が量子力学から生物学に転じて分子生物学ができた(ただし量子力学と分子生物学は無関係)とか、がある。あと、SFとの関連でいえば、筆者は小松左京に随分ご執心のようで、「日本沈没」をはじめとしていろいろな作品について、あちこちで言及している。

(ちなみに私は漱石と寅彦が師弟関係だったこと自体初めて知った。私の中では漱石はもちろん小説かだが、寅彦は物理学者のイメージが強かったからだ。むろん、寅彦が文筆家であることは知っていたが。)

最後に面白かった箇所をひとつ引用させて頂こう。

「それでは、内部構造がヒトより単純な(と思われる)アリが集団になると高度な仕事をなしうるのに対して、ヒトの場合は数が多くなると、逆に愚かさを見せてしまうのはなぜだろうか。実際、国会でも大学の会議でも多少なりとも実績がある(かもしれない)のは委員会のレベルまでで、もっと多人数から成る本会議は単なる形式だけになってしまうように思える。」


あっ、いかん。もう1箇所あった。

「複雑系を80年代に我々が始めた時にはまったく反応がなかったのに、ちょっとアメリカが騒ぐと何か言い出すのはいったいなぜなのだろう。日本の文化を担うって気概はどこにあるのだろう。日本では新しい文化が生まれないとあきらめているのではないだろうか。」








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Last updated  2012.02.24 08:33:52


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