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カテゴリ: Book Review
「人間は死ぬと魂の分だけ軽くなる」とか「フランケンシュタインによる死者の復活」が科学的・歴史的事実であり、死者に霊素(魂の物質的本質)を注入することで「屍者」として復活させる屍者技術が普及した世界を舞台にした話。とはいえその世界は私たちの現実世界と並行世界であるらしく、実際の歴史上の人物や出来事の名前も多くそのまま登場している。時代としては、日本では幕末~明治維新のころ。

屍者は死んでいるが故、痛覚などがないので肉体労働者や戦争における兵士として実用化されている。実際、作中では日本の西南戦争が屍者軍対屍者軍の戦争として描かれている。また、筆記や計算などの技術に特化した屍者もいる。疲れ知らずの屍者は生者よりもそれらの仕事に向いているのである。

そんな世界設定を通して、「魂」や「言葉」や「生死」の本質に迫ろうという独特・意欲的かつ挑戦的な作品。史実とオカルトが混淆した世界で展開される物語は、難しいが魅力的である。ストーリーとしては、とあるスパイが世界中を旅しながら、屍者技術の原典的な書籍を入手することや、最初に復活した屍者である「ザ・ワン」への接触を試みること、そして人間の「魂」あるいは「意思」の物質的な本質は何か、を見出していくこと。アプローチは至って科学的、なのに扱っているのはオカルト的、というのがやはり面白い。

正直、読み進めていくほどに難解さが増していき、最後の方は「結末がどうなるのか?」だけを楽しみと頼りに読んだので、どこまで理解できたかは判らないが、面白かったことは間違いない。突拍子もないが堅固な世界観の上に構築された物語なので、話自体が突拍子ないわけではなく、むしろ「むむむ」と考えさせられる。勿論、フィクションなのだが。

世界観・世界設定としてはエヴァンゲリオンにちょっと似ている気がする。「リリス」、出てくるし。

以下、印象的な箇所の引用。

人間の知覚は強度を足し算するのではなく、非線形に混ぜ合わせる。スープにおいて隠し味が有効なのと同じ仕組みだ。

「戦争に麻薬はつきものだからな。通貨としても有用だ。当然、略奪の対象ともなる。薬効があり、持ち運びやすく、交換しやすい。理想的な戦略物資と言える。」

「そもそもが二百年もの間世界から孤立していた島国だ。そんな島が、もう一度世界史から姿を消したとしても誰も気にしたりはせん。」

「そんなものは人間の運命とでも呼ぶしかない。自分たちには扱い切れないものを作り出した報いだ。理解できない現象は確率的なものとして現れる。運だ。」

「過程がわからなければ、結果に頼るしかなくなる。これは理屈の問題じゃない。人間の理解の仕方の問題なんだ。人間は物事を物語として理解する。」

誰かに考えつくことのできた理屈は、他の人間にも思いつくことが出来る。






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Last updated  2019.07.17 08:11:26
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